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目を開けると、私が立っている空間は、どす黒く濁った赤色の空をしていた。
ああ、私は死んだのか。
もともと棺桶に片足どころか半身は入ってる身だから、あんまりショックじゃない。
じゃあカミサマとやらのお迎えがもうすぐ来るはずだなあ。
でも、どんなに待ってもカミサマとかマオウとかダテンシやらは来ないので。
「あ、姉さん! 目覚ましたよ!」
うっすらと目を開けると、目の前に弟二人と妹がいた。
「もう、シア? 心配したんですよ」
目を真っ赤に腫らした母さんがいる。
「シア、お前は死にかけたんだからね」
兄さんが近寄って言った。
「ここ、…………どこ?」
言うと、母さんが驚いて目を見開いた。
「大丈夫かしら。ここはあなたの部屋よ。モスクワの」
天井を見上げると、ここ数年は見ていないシャンデリア。
それと、落ち着く香り。
自分の部屋だ。
「安静にしておきなさいね、シア。さ、皆さん。騒いだら傷に響くから出ていきますよ」
「はあーい」
兄弟たちと母さんは出て行った。
父さんは――、相変わらずいない。
少しして、兄さんが入ってきた。
「シア、お前は殺されかけたんだよ。覚えてない?」
「…………少しだけ、覚えてる」
彼と別れたあの日、私は溜まった三件の仕事をこなす予定だった。
二件目まではうまくいった。
だが、三件目。
彼から頼まれた最後の仕事。
注意力を欠いて背後を取られ刃物で刺されたような気がする。
「お前の腕につけているそのブレスレットから検知される、脈拍が遅くなって。ツィーがお前に電話をかけたんだけど繋がらないから、急いで迎えに行ったよ」
そしたら半分死んでるシアがいた、と兄さんは言う。
「とりあえずお前を半殺しにした奴は俺が殺したから大丈夫」
「ありがと……」
そして兄さんは真剣な顔になった。
「これは家族で……というか父さんが決めたことだけど」
「なに……?」
「シアは傷が完治するまで、仕事一切禁止。今受けてるものは俺たちでやる」
驚きだった。
父さんが、私の仕事を、禁止するなんて。
「どうして」
「答えを聞いて抗議しても決断は覆らないけど……、それでも聞く?」
頷くと、兄さんは言った。
「今のシアは、使いものにならないって」
「………………そういう、こと……」
「じゃあね」
兄さんは言い残して出て行った。
ぱたん、とドアが閉まる音。
乾いた、笑い声が出た。
どこまでも堕落してる。
使いものにならない、って。
父さんは合理主義だから、私は父さんに殺されるかなあ。
捨てられるかなあ。
.:*゜..:。:.::.*゜そーりーあとがきこーなー.:*゜..:。:.::.*゜
作者:今回は主人公、アナスタシアさんのご家族を紹介します。
兄:ラビ
弟1:(まだ未定)
弟2:(まだ未定)
妹:ツェツィーリア
兄と弟1は軍人(ソ連)、弟2は秘書、妹は情報操作系。
そしてお父さんはソ連の幹部というかスペツナズのトップ。