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Attention!!
この話には、残酷描写(殺人描写)があります。
ご注意ください。
また、1ドル100円換算として考えてくだされば幸いです。
最初に彼と出会ったのは、……たぶん、仕事場だった。
『君も……なの?』
『そうなるかな』
血まみれの彼は、自社製品の試し撃ちに来たと言っていた。
つくづく不気味だと思った。
『この会社、うざったいんだよねぇ』
『そう』
気まぐれで殺したのか。
私は足早にそこから立ち去ろうとした。
『ねえ。君の用事は?』
『……私の標的はあなたが殺してくれた。だからもう用はない』
『ちょっと待ってよ』
彼は私の背後に立って言った。
殺気。
『あなたの方こそ、私に用でも?』
『ううん。でも遊びたいなあと思って』
こんな気狂いと遊ぶなんて命がいくつあっても無理だ。
死ぬ。
『ごめん。今からもう一件仕事があるんだ』
適当な理由を述べて、仕事場から立ち去った。
一週間後。
『………………』
『やあ。また会ったね』
彼はまた、血まみれで私の前に現れた。
ビルの裏で。
『また仕事?』
『そうなるかな』
彼はにやりと笑った。
『君の標的はこの人かな』
『そうだけど』
彼の足元の人間を一瞥した。
後頭部に大穴が開いている。
彼が試作品で殺したに違いない。
『じゃあ、君はもう帰るんだね』
『そうだね』
また一週間後。
今度は私が止まっているホテルのドアマンを殺したらしい彼は、血糊がついたままの姿で私の前に現れた。
『ねえ、僕から君にお願いがあるんだけど』
『何かな。とりあえず綺麗にしてから来てよ』
インターホン越しに言うと、彼は三十分後にまた現れた。
『これでいい? 中に入れてよ』
『いいよ』
ホテルに招き入れると、彼は何時も通りのスーツを着ていた。
薄い茶髪をオールバックにして。
『君にお願いがあるんだ』
『何かな。簡潔に言って』
彼はアタッシュケースを机の上に置いた。
『五十万ドル。僕の会社でインサイダーをやっている幹部を十人、殺してきてよ』
『あなたがすればいい』
できないわけじゃないだろうと訊くと、彼は不気味に笑って答えた。
『やだなあ、それじゃあ僕が怪しまれる。部外者が殺したってことにしたほうが都合がいいんだ』
『ひとつだけ聞くね。それは前金だよね』
彼は笑った。
『当たり前じゃないか、人を殺すリスクは大きいからねぇ』
『いいよ。前金五十万ドル、受け取った。いつ殺せばいい?』
『時間はいつでも。ただし、三日後までに殺してね』
そう言って、彼はホテルから出て行った。
私は言われたとおり十人を殺した。
できるだけ血が飛び散らない方法で。
彼はその夜、二百万ドルを持って現れた。
満面の笑みで。
『君は手際がいいね』
『そうかな』
そうして彼は、次の殺しの依頼者となった。
私は彼に頼まれて、彼の政敵とも言うべき人物を殺した。
何十人も。
彼はたまに私と一緒に仕事場へ出向いて、私が暗殺をするところを笑いながら見ていた。
ある日。
彼から珍しくメールが届いた。