プロローグ
八年前に正式サービスが開始されたVRMMORPG【Only Skill Online】略称OSO。
今日、OSOが正式サービス終了となり、過去最大といっていいほどの賑わいを見せていた。
最初の街『プロイセン』。中世ヨーロッパ風の世界観にふさわしく、周りは洋風な家ばかりだ。その広場では少し耳を立てると、そこらじゅうからこのゲームはよかったと、声が聞こえてくる。
このゲームの人気の要因はスキル作成システムだった。月に一回のアップデートによる、ユーザーから応募されたスキルが四つ追加されるのだ。
大体がネタスキルだが、時たま派手なスキルがでたりする。そのときは掲示板各所ではお祭り騒ぎだ。
しかし大概が無茶苦茶な前提スキルを獲得をしないといけなかったりと、派手なら派手なりに、専用のキャラクターを作らなければならなかった。
VRMMORPG――多人数同時参加型体感ロールプレイングゲーム。
その名前の通り、一つのゲームを同時にたくさんの人と一緒にプレイできる。まったく見知らぬ他人から、友人同士と、現実世界の繋がりはあまり関係がない。
しかし従来のゲームは画面を通してだったため、どうしても似通っていってしまった。
革新的なシステムはとっくに出尽くし、ルーチンワークのように作業を繰り返す日々。
そんなところに、【Only Skill Online】が世に放たれた。
今の世の中珍しくもないが、出た当初はVR機器が出回った直後と、斬新なスキル作成ということで圧倒的な人気を誇った。
店頭販売と月額課金三千円ということにしても、だ。当初ゲームメーカーはそれほど売れると思っていなかったのか、少なめに生産すると在庫が足らないということが起こるほどだった。
その今作が正式サービス終了となった。
正式サービス終了と聞いて、引退したものや、最後だからと作ったものも居るだろう。
入った時間も正式サービス終了間近ということもあり、広場にはプレイヤーがそこかしこにおり、過去最高といってもいい人数が集まっていた。
シズがザッと見渡すだけでも広場には百人以上が目に入ってくる。
見知った顔も多く、引退したはずの者も多かった。
各々「久しぶりだな」「お前まだやっとったんか」など会話に興じている。シズもその中の一人だが、ロールプレイをしていたシズ自身は余り友達と言うものが少なく、こここの時になっても、ロールプレイを貫いていた。あいさつ回りを済ませると、ゲーム内であったことを思い返していた。
とうとう正式サービス終了が目前に迫ると、広場はしんみりとした雰囲気につつまれ、
「このゲームはよかったよな」
「ああ」
などとそこかしろから聞こえる。
実際に楽しかった。
シズ自身も素直にそう思うし、このままずっと続けていたい。しかしそう思っても、現実は非常で終了は目前に迫っている。
三十秒をきったころ、誰かがカウントダウンしようといい、広場にいた全員が乗った。
カウントダウンも、残すところ数秒。
『五!』
見渡す限りいろんな人種がいる。
獣人、魔人、エルフに果てはリザードマンまで。
『四!』
全てプレイヤーで、その表情はいろいろだ。
『三!』
泣きそうだったり、笑顔だったり、無表情だったり。
『二!』
苦笑して、シズは最後は笑顔でいようと笑みを作る。
『一!』
別に作らなくても、自然と笑みは出来てあろうけど。
そして視界は暗くなり、プレイヤー達は強制ログアウトされ、世界は消え去った。
――――はずだった。