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出会い

いろいろなことが始まる話。


「コラッ!りな、起きろ!!」

廊下側の一番後ろの席で、ボーっとしていた

私におどけた口調で隣の席の奈子なこが言った。

「寝てねぇよ」

私は笑いながらツッコむと、なこは廊下側を見つめた。

私も「え?なに?」と廊下の方を見たが何もない。

もう一度、なこを見ると「また、騙された」と笑っていた。

今は6時間目の学活。素晴らしく、ヒマで眠い。

その気持ちはなこも同じらしく私にちょっかいをかけることにしたらしい。

しばらく、会話が途切れるとなこは寝てしまった。

私は不意に廊下側を見つめて、入学から今まで思い出した。


「ヤァー、メーン!!」

もともと美術部に入ろうと思っていたが、たまたま見た剣道部にあの頃の私は強い憧れを抱いた。

小学5年の冬まで実戦空手を習っていたこともあって久しぶりの武道にテンションがあがった。

竹刀の音と部員の声が武道場に響く。カッコよくて、私の中で剣道部に入ることは決定した。

「あゆ!カッコよかった!!」

休憩中、小学校から剣道をやっている友達の亜優に声かけた。

「剣道、エラいけどめっちゃ楽しいで!」

あゆは嬉しそうに笑いながら私に言った。私も笑顔でうなずいて武道場を後にした。

「あ、みか!!」

校門に親友の美夏がいた。私はみかのもとへ走って、暗黙の了解で一緒に変えることになった。

しゃべっているうちに、一瞬会話が途切れた。それを狙ったかのように、みかが「部活何にするの?」

と聞いた。「剣道部・・・かな?」と私はあいまいに答えた。

「りなに、剣道とかムリじゃね?」

みかが意地悪く言って、私は少しだけカチンと来たのをおさえ、笑った。

「大丈夫だよ~」

よくあることだから、あまり気にしずにそのまま会話を続けた。

「ただいま」

家についてから、また剣道部のこと思い出した。

(カッコよかったなぁ、入りたいなぁ」)

「ねぇお母さん、りな剣道部入りたい!!」

素の私はブリッコっぽい性格、甘えん坊で口調も子供っぽいから、

この頃はみかともう一人の親友しぃちゃんにしか見せていなかった。

「ムリやて、続かんやろ!?高いんやて、剣道は」

お母さんに言ったのに、なんかお兄ちゃんが会話に入って来た。

ムカついたけど、とりあえず何も言わなかった。お兄ちゃんは大好きだけど、

当然ムカつく時もある。この頃は、怖くて言い返すことの出来なかった。

「でも、りなは根性あるでな」

お母さんがフォローしてくれた。ムッとしたのが顔に出てたかな?と思ったが

それよりも「根性ある」と言われたのが嬉しかった。

それから、しばらく雑誌を読んでいたが宿題を思い出してノートを開いた。

中学って、テストもあるし、宿題も多いから嫌だ。とまじめな私は思った。


「おはよっ」

朝、教室に入ると那美が一番に声をかけてきた。今日も、めっちゃ可愛くて小さい那美を

「おはよ、那美」と言いながら撫でた。

それから、那美としゃべった。どーでもいいことをしゃべって笑っている時がひたすら楽しいと思う。

それと同じくらいに恋をしている女の子を見るのも楽しい。

「ってか、好きな人!!だれになったの?」

「蒼井先輩・・・秘密だよ?」

少し赤くなりながら笑う那美は本当に「女の子」って感じがして可愛かった。

私には、大切な人ならいるけど恋をしている相手はいなかったから少し羨ましい気持ちもあった。

そうやってしゃべっていながらも気になることがあった。その頃、柚乃にシカトされていた。

ずっと、何かしたかな?と思っていたが、違うクラスの子が教室に来て私を呼んだ。その時に自分が

なにをしたか知った。

「ちょっと行って来るね」

那美に言って、ろうかに出た。「どうしたの?」私が聞くと、その子は真剣な表情で口を開いた。

「りな、ゆずのと何かあった?」

え、何で知ってんの?聞かれた瞬間、私は怖くなった。

「・・・分からない。ウチ、なんかしたっけ?って感じで」

そうポツリと言った。

「あのね、ゆずのがりなにムリヤリ×××されたって・・・」

それを聴いた瞬間、ぞっとした。「ごめん」って言ったら、「大丈夫」と言ってたから・・・と

自分の中で言い訳をした。

「・・・っだから謝った方がいいと思うよ?」

「うん、分かった!ありがとね」

「いいよー、んぢゃ、またね」

「うん」

笑顔を作り、手をふる。教室へもどり席へ着いた。

「ね、ゆずの。この前は・・・本当にごめん」

これで何回目だろうか?メールで謝っても返信はなくて、やっと聞いてくれた。

「メールで見た」返事はそれだけ。仕方ないって分かってても頭の中はそのことでいっぱいだった。


「よろしくお願いします」

この頃、部活が始まった。何度か親と話し合った結果、私は剣道部に入ることにが出来た。

その時は希望と少しの不安だけだった。夢見がちな私は、あの日、憧れた姿に私もなれると

本気で信じていた。


これが、この2年間と数ヶ月の物語のプロローグにあたると今になって思う。

自分自身が選んだ物語の始まり。

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