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第3話 神は、失敗を望んでいる
神殿の中庭は、人で埋まっていた。
神官。
兵士。
見物人。
担架の横には、帳簿係。
それだけで、この場の本質が分かる。
運び込まれたのは、地方の下級貴族だった。
爵位はあるが、金はない。
「《聖癒祈礼》三度分、寄進は受け取っている」
三度。
それでも治っていない。
「見習い」
神官長が言う。
「証明せよ。
それが奇跡か、冒涜かを」
俺は分かっていた。
完全に治せば、消される。
だから、最低限だけ行った。
命を繋ぐだけの処置。
男の呼吸が、わずかに楽になる。
「……生きている」
だが、即座に否定が飛ぶ。
「祈祷の効果だ」
「神の慈悲が遅れて現れただけ」
帳簿係が淡々と記す。
「《聖癒祈礼》完遂」
治っていないのに。
俺は確信した。
ここでは、
命が助かるかどうかは関係ない。
金を払ったか。
帳簿が埋まったか。
それだけだ。
「見習い。もう下がれ」
神官長の声は冷たい。
俺は静かに答えた。
「……夜に、もう一度来ます」
その意味を、
神殿はまだ理解していなかった。
かなり溜めの回です。
次話で一気に流れが変わります。




