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第23話 神官長

神殿前広場は、完全に静まり返っていた。


灰紋草。


調薬記録。


薬室から押収された大量の毒草。


すべてが揃っていた。


王子が言う。


「神官長」


その声は冷たかった。


「説明してもらおう」


沈黙。


神官長は動かない。


やがて男は、小さく息を吐いた。


そして言う。


「……なるほど」


その声は落ち着いていた。


神官長はゆっくり広場を見渡す。


神官たち。


市民。


王族。


そして俺。


男は言った。


「神殿の秩序はこの国を支えてきました」


広場が静まる。


神官長は続ける。


「祈り、奇跡、神の加護。それを信じるからこそ人は救われる」


その声は静かだった。


だが強い確信があった。


「王族であっても神の前では平等です」


王子の目が細くなる。


神官長は続けた。


「王族は神殿に従う、それが本来の秩序」


広場の空気が張り詰める。


神官長は言う。


「試練を与え祈りで救う、それが神殿の役目です」


沈黙。


俺は言った。


「それは毒を使い、人を陥れ、人々から金銭を巻き上げてでもすべきことなのか」


神官長は俺を見る。


そして言う。


「医学は危険です」


その目は冷たかった。


「祈りを否定する、神を否定する、秩序を壊す。」


一歩前へ出る。


「あなたのように」


広場が静まり返る。


俺は答える。


「違う」


神官長は黙る。


俺は続けた。


「医学は人を救う」


一歩前へ出る。


「祈りではなく治療で」


沈黙。


王子が前へ出た。


その声は広場に響く。


「神官長」


王子の目は冷たい。


「王族に毒を盛った」


一拍。


「その罪」


兵を見た。


「拘束しろ」


広場がどよめく。


兵が前へ出る。


神官長は動かなかった。


兵が男の腕を取る。


神官長は最後に俺を見る。


その目は静かだった。


「見習い」


低い声だった。


「医学は世界を壊す」


「違う。実際、祈りでは私の弟は助からなかった」


エレインが声を上げた。

透き通った声だった。


おれは言った。


「医学は人の命を救う」


沈黙。


神官長は小さく笑う。


そして兵に連れられていった。


神殿前広場はざわめきに包まれていた。


神殿の権威。


神官長。


その頂点は、


いま、崩れ落ちた。


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