第22話 神殿の動揺
神殿前広場は、ざわめきに包まれていた。
灰紋草。
調薬記録。
そして、王女の症状。
すべてが一致していた。
群衆の中から声が上がる。
「神殿はおれたちを騙していたのか.......」
「どういうことだ......」
神官たちの間にも動揺が広がっていた。
神官長は黙っている。
その表情は崩れていない。
だが、空気が変わっていた。
俺は言う。
「王女の症状は灰紋草の毒と一致します」
一歩前へ出る。
「神経障害」
「筋力低下」
「呼吸の浅化」
「すべて説明できる」
広場が静まり返る。
その時だった。
「……確かに」
声が上がる。
一人の神官だった。
年配の神官が前へ出る。
「灰紋草は神経毒です」
広場がざわめく。
神官は続ける。
「薬草を扱ったことのある者なら。誰でも知っています」
神官長の目が細くなる。
別の神官も言う。
「王女殿下の症状、確かに似ている」
ざわめきが広場を包む。
神官たちの間にも、不安が広がっていた。
王子が言う。
「神官長」
その声は低かった。
「説明してもらおう」
沈黙。
神官長はゆっくり言う。
「灰紋草は薬草です」
落ち着いた声だった。
「毒にもなる」
「薬にもなる」
神官長は続ける。
「神殿は薬を作る、それが罪だと?」
広場の空気が揺れる。
だが。
その時。
エレインが言った。
「薬室を調べれば分かりますよ」
広場が静まる。
エレインは肩をすくめる。
王子が兵に命じる。
「神殿薬室を調べろ」
兵が動く。
神官たちがざわめく。
神官長は黙っていた。
数刻後。
兵が戻る。
そして言った。
「報告します」
広場が静まり返る。
兵は続ける。
「神殿薬室より、灰紋草を多数押収」
どよめきが広場を揺らした。
神官たちの顔色が変わる。
王子が言う。
「神官長」
その声は冷たかった。
「これは何だ」
沈黙。
神官長はしばらく黙っていた。
そして言う。
「……薬草です」
広場がざわめく。
俺は言う。
「王女の滋養薬にも入っていました」
沈黙。
王子がゆっくり言った。
「王族に毒を盛った」
一拍。
「そういうことだな」
神殿前広場は完全に静まり返った。
神官長は動かない。
だが。
神官たちの間に、はっきりとした動揺が広がっていた。
神殿の権威は、音を立てて崩れ始めていた。




