第19話 公開尋問
神殿の調査は、すぐに始まった。
神官たちは王都を歩き回り、薬屋や医師に話を聞いていた。
離宮に出入りする医者。
王女の治療。
神殿の祈祷停止。
情報はすぐに集まり、一人の人物に結びついた。
「やはり」
神殿を追放した見習い。
神官長は静かに言った。
「面白い」
⸻
同じ頃。
離宮でも神殿の動きは把握されていた。
ルカが窓の外を見ながら言う。
「神官が王都で聞き込みしてます」
王子が腕を組む。
「早いな」
「神官長は有能ですよ」
ルカは笑う。
沈黙。
王子は机の上を見る。
灰紋草。
調薬記録。
王女の名前。
そして言った。
「隠す必要はない」
エレインが視線を向ける。
王子は続けた。
「神殿が調査しているなら、こちらから出る」
俺は言う。
「公開ですね」
王子は頷く。
「神殿の前で、説明してもらう」
その声は低かった。
「神官長を呼べ」
兵が動く。
王子は言った。
「公開尋問だ」
⸻
その日の午後。
神殿前広場には、多くの人が集まっていた。
神官。
兵士。
貴族。
そして市民。
王子が神殿に説明を求めた。
その噂は、瞬く間に王都へ広がった。
ざわめきが広場を満たす。
やがて。
神殿の大扉が開いた。
白い法衣の男が現れる。
神官長だった。
群衆が静まり返る。
神官長はゆっくり階段を降りる。
そして王子の前で止まった。
王子が言う。
「神官長」
その声は広場に響いた。
「王女の件について説明してもらう」
神官長は静かに答える。
「王女殿下の病は呪いです」
迷いのない声だった。
「神殿は祈りで治療を続けています」
広場の神官たちが頷く。
神官長は続けた。
「神の試練は、王族であっても例外ではありません」
広場の空気が揺れる。
王子は言う。
「それが神殿の説明か」
「ええ」
神官長は答える。
「神は必ず奇跡を与える」
沈黙。
王子が言った。
「では、公開尋問を始める」
その言葉に、広場がざわめいた。
王子は兵に合図する。
人々の間が開く。
そして。
一人の男が前へ歩いてくる。
神官長の目が細くなる。
男は階段の前で止まった。
静かに言う。
「久しぶりですね」
神官長の声は冷たかった。
「見習い」
俺は答えた。
「ええ、久しぶりです」
神殿と王族。
祈りと医学。
公開尋問は、いま始まろうとしていた。




