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第18話 神官長の視線

神官長の執務室。


一人の神官が報告していた。


「離宮の警備は強化されています。王女の治療は続いているようです」


神官長は机の書類をめくりながら聞いている。


「神殿の祈祷は」


「最近、呼ばれていません」


神官長の手が止まった。


「祈祷を止めたのか」


「はい」


神官が答える。


「王子殿下の判断だと思われます」


神官長はしばらく黙っていた。


やがて言う。


「理由は」


「不明です」


神官長は椅子に背を預けた。


そして小さく呟く。


「……なるほど」


灰紋草。


薬室の侵入。


王女の祈祷停止。


点が繋がる。


「ブレインがいるな」


神官が顔を上げた。


「医者、ですか」


「ええ」


神官長は言う。


「呪いではなく毒と考える者。祈祷ではなく治療を選ぶ者。」


神官は困惑した顔をした。


神官長は静かに言う。


「一人いる」


神官が首を傾げる。


「誰でしょう」


神官長の脳裏に、ある男の顔が浮かぶ。


あの男。


神殿を追放した医者。


神官長は静かに笑った。


「面白い」


神官は戸惑っている。


神官長は言った。


「調べなさい」


「離宮に出入りしている者」


「医者」


「薬師」


「治療師」


「何でもいい」


一拍。


「そして」


その目が細くなる。


「外科医という言葉を聞いたら」


神官は驚いた顔をした。


「外科医、ですか」


「ええ」


神官長は言う。


「もしその男なら」


少し笑った。


「きっと、そう名乗るでしょう」



その頃。


離宮では。


王女の治療が続いていた。


王女は眠っている。


呼吸は安定していた。


毒の反応も弱まっている。


王子が言う。


「回復しているな」


「ええ」


俺は頷いた。


「灰紋草の毒は、ほぼ止まりました」


エレインが腕を組む。


「神殿は動きます」


「ええ」


俺もそう思っていた。


王族の祈祷が止まった。


灰紋草の証拠。


そして王女の回復。


神殿が黙っているはずがない。


ルカが言う。


「もう調べているでしょうね」


王子が聞く。


「誰を」


ルカは笑う。


「先生ですよ」


その言葉に、部屋が静かになった。


俺は肩をすくめる。


「いずれ分かります」


「隠すつもりもありません」


エレインが言う。


「覚悟は」


「あります」


俺は答えた。


神殿の頂点。


神官長。


あの男と、また会うことになる。


それは、ほぼ確実だった。



その夜。


神殿の一室。


神官が神官長に報告していた。


「離宮に新しい治療者がいます」


神官長は机の上の書類を見ている。


「特徴は」


神官が答えた。


「外科医を名乗っているそうです」


神官長の手が止まった。


静かな沈黙。


やがて男は小さく笑った。


「やはり」


神官は戸惑った顔をする。


神官長は静かに言った。


「久しぶりですね」


その目は冷たかった。


「見習い」


物語は、静かに動き始めていた。


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