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第15話 毒の計画

また翌朝。


離宮の一室に、俺とエレイン、そして王子が集まっていた。


机の上には、問題の滋養薬の瓶。


静かな空気の中で、エレインが言った。


「そろそろ戻ります」


王子が眉を上げる。


「早いな」


「彼は仕事が速い」


その時だった。


窓が、わずかに軋んだ。


次の瞬間。


影が、音もなく部屋の中に降り立つ。


ルカだった。


服の乱れはない。


呼吸も整っている。


まるで散歩から戻ったようだった。


「おはようございます」


王子が言う。


「成功か」


「ええ」


ルカは肩をすくめた。


「思ったより簡単でした」


エレインが短く言う。


「報告」


ルカは机の瓶を指した。


「まず、灰紋草。神殿の薬室にありました」


王子の目が細くなる。


「量は」


「かなり多い」


ルカは少し考える。


「王女の滋養薬に入っていた量の……数十倍はあります」


部屋が静まり返った。


王子が低く言う。


「薬草として保管している可能性は」


「あります」


ルカは頷いた。


「ですが、気になることがありました」


エレインが聞く。


「何」


「神官の会話です」


ルカは続けた。


「薬室に来た神官がこう言いました」


少し声色を変える。


神官の真似だった。


「王女の件は順調らしい」


沈黙。


王子の表情が変わる。


ルカは続ける。


「もう少し時間がかかるが問題ない。毒は誰も気づかない。最後に祈祷で治せば我々の地位も今以上のものとなる。」


王子の拳がゆっくり握られる。


「神殿の神官がそう言ったのか」


「ええ」


ルカは頷いた。


「はっきり聞きました」


俺は瓶を見る。


そして静かに言った。


「あくまで推測ですが、説明がつきます」


二人の視線がこちらに向く。


「灰紋草は少量なら、すぐには死にません。ですが毎日摂取すれば、毒が蓄積する」


瓶を指す。


「王女は少しずつ毒を飲まされていた」


王子が低く言う。


「神殿の滋養薬として」


「ええ」


俺は頷いた。


「誰も疑わない」


エレインが言う。


「体が衰弱する。神殿でも治せない」


俺が続ける。


「そこで“呪い”と宣言する」


王子が低く呟いた。


「……そして」


「最後に神殿が治す」


「そうです」


俺は言う。


「神殿の奇跡として」


部屋の空気が重くなる。


王子がゆっくり立ち上がる。


「王族を神殿の力に従わせるためか」


エレインが静かに言う。


王子はしばらく黙っていた。


そして言った。


「神殿の中でこれを考える者がいる」


「誰だ」


ルカが肩をすくめる。


「神官は何人もいます。でも、王族の治療を仕切っている人物は神官長ただ一人です」


沈黙。


だが。


俺の脳裏には、すぐに浮かんでいた。


神殿の広間。


冷たい石の床。


そして――


「神の奇跡を否定する者は、この神殿には不要です」


あの声。


あの視線。


俺を神殿から追い出した男。


神殿の頂点。


神官長。


王子が低く言う。


「……あの男か」


エレインが答える。


「可能性は高い」


ルカが笑う。


「どうします」


王子の目は冷たかった。


「証拠を取る。もう一度潜れるか」


ルカは頷く。


「了解」


そして言う。


「今度は神官長の部屋ですね」


事件は、次の段階へ進もうとしていた。


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