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第13話 毒の経路

王女の容体が安定してから、翌日の朝。


離宮の一室に、三人が集まっていた。


俺。

エレイン。

そして王子。


机の上には、小さな瓶が並んでいる。


「これが、問題の滋養薬です」


王子が言った。


瓶の中には、琥珀色の液体。


「王女は毎日これを飲んでいました」


「神殿が?」


「そうだ」


俺は瓶を手に取った。


匂いを確かめる。


甘い香り。

だが、その奥に――


「……ありますね」


「何がだ」


王子が身を乗り出す。


「灰紋草です」


部屋の空気が、一瞬で変わった。


「間違いないのか」


「ええ」


俺は淡々と答えた。


「乾燥させて粉にしたものが、微量ですが混ざっています」


「量は?」


エレインが聞いた。


「すぐ死ぬ量ではありません、ですが、、」


瓶を軽く振る。


「毎日飲めば、確実に蓄積します」


「つまり」


王子が低く言った。


「毒を、少しずつ入れていた」


「可能性は高いですね」


沈黙が落ちる。


しばらくして、王子が言った。


「だが、神殿がそんなことをする理由はない」


「表向きは、ですが」


エレインが静かに返す。


王子は黙った。


俺は瓶を机に戻す。


「問題は、そこではありません」


「何だ」


「この薬を、誰が管理していたかです」


王子はすぐ答えた。


「神殿の神官だ」


「では、王女が飲む前に誰かが確認することは?」


「侍女が一人、立ち会う」


エレインが腕を組む。


「神殿と侍女、あるいはその両方。侍女は信用できるものですか?」


王子が言った。


「長年仕えているものだ、疑うことはできない」


「なら」


エレインの目が細くなる。


「神殿を調べる必要があります」


王子が言う。


「潜るのか」


「はい」


エレインは頷いた。


「ですが、私ではありません。顔が知られています」


王子が少し笑う。


「軍隊長だからな」


「ええ」


エレインは落ち着いて答えた。


「代わりに一人出します」


「私の部下です」


「信用できるのか」


「できます」


即答だった。


「潜入任務の経験もあります」


王子は少し考えたあと頷く。


「分かった」


「任せる」


俺は瓶を見ながら言った。


「……一つ、確認があります」


二人の視線が向く。


「灰紋草は」


「この国では薬草として扱われていますよね」


「ああ」


王子が頷く。


「毒だと知っている者は少ない」


「つまり」


俺は静かに言った。


「これを毒として使えるのは」


「毒の知識がある者です」


部屋が静まり返る。


エレインが低く言った。


「神官だけとは限らない」


「ええ」


俺は頷いた。


「犯人は、まだ分かりません」


だが一つだけ確かなことがある。


この毒は。


偶然ではない。


誰かが。


意図して。


王女を、殺そうとしている。


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