表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっちの俺、パーティを組めないのでモンスターと組みました  作者: 妙原奇天


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/15

第5話 王城への召喚、封蔵課の「聴聞」

 王都の中心、白い石で組まれた城壁の内側は、朝からざわついていた。

 通用門を抜けると、衛兵たちの視線が一斉に俺たちを射抜く。

 胸に刺繍された紋章――王城魔術院・封蔵課。

 彼らの背後にそびえる塔は、魔力の流れを可視化する装置で満ちており、空気そのものがきらめいていた。


 「……場違いだな」

 小声でつぶやくと、足元のシルがぴょこりと跳ねた。

 「キュル」

 導糸が“平気だよ”と震える。

 俺の肩の力が、少しだけ抜けた。


 案内役の文官に導かれ、磨き上げられた廊下を進む。

 やがて辿り着いたのは、天井まで届く扉の前だった。

 扉の上には王家の紋章、そして魔術院の印章。

 ――“聴聞室”。


 文官が告げる。

 「入室を許可します。返答は簡潔に、礼を忘れず」

 扉が重く開いた。


 部屋の中央、長机の向こうに三人。

 中央の壮年の男は、銀糸の法衣をまとい、冷たい目をしていた。

 両脇の二人は、記録官と補佐官。

 机の端には見慣れた顔――ミーナ。

 彼女が、短く目で挨拶をした。


 「リオ=クラフト、Eランク冒険者。封蔵課の召喚に応じました」

 膝を折り、規定の礼を取る。

 中央の男――封蔵課長アルディスが、軽く頷いた。

 「よろしい。――では始めよう」


 彼の声は、驚くほど静かだった。

 「まず確認する。貴殿は、先の〈封蔵庫第七室〉調査において、竜核ドラグ・コアに接触し、

  そのエネルギーを自身の支援魔法系統に結合させた。相違ないか」

 「はい。意図的ではなく、封印が崩壊した際、緊急の鎮静を試みた結果――」

 「結果、誓結を行った」

 「……はい」


 部屋の温度が一段、下がったように感じた。

 記録官の羽根ペンが音を立てる。

 アルディスは続ける。

 「貴殿の報告書と、ギルド側の証言は一致している。

  しかし問題は“結果”だ。

  竜核は国宝級禁制品であり、王家以外の者が保持することは許されぬ」

 机の上に、封蝋された金色の文書が置かれた。

 「ゆえに本来であれば、貴殿は拘束、コアは没収。

  だが――」


 アルディスの視線が、机の下のシルへ向かう。

 「……封蔵庫の霊気漏れを完全に鎮めたのは、貴殿とその“竜核体”だ。

  封印術の安定率、百二十七年ぶりの完全値。

  我らの術師でも、なし得なかった数字だ」

 沈黙。

 ミーナが小さく息を呑んだ。


 「従って、魔術院としては“暫定許可”を与える。

  ただし条件がある」

 「条件、ですか」

 アルディスは指を一本立てた。

 「ひとつ。竜核体“シル”の状態を、定期的に魔術院で検査すること。

  ふたつ。王都外への遠征・討伐は、事前申請を要すること。

  みっつ。――“王家の要請があれば、協力を拒めぬ”こと」

 最後の一文に、重い意味が乗った。


 「それは……“従属”という意味ですか」

 「違う。“信頼”の契約だ。だが、拒否権はない」

 アルディスの口元がわずかに緩む。

 「貴殿の力は、今や国家の資産だ。

  扱い方を誤らねば、王都は貴殿を守る。

  誤れば、封ずる」


 机上の封書が滑らせるように俺の前へ差し出された。

 「これが“暫定許可証”。

  署名し、血印を押せば、貴殿は正式に“封蔵監視下冒険者”となる」


 指が震える。

 シルが小さく鳴いた。「キュル」

 導糸が、微かな“迷い”と“信頼”を交錯させる。

 ――この道を進めば、自由は減る。

 けれど、守れる範囲は広がる。


 俺は深く息を吸い、ペンを取った。

 紙の上に、名前を書いた。

 リオ=クラフト。

 続けて、小指を針で裂き、血を一滴落とす。

 魔法陣が淡く光り、封書が俺の手の中で温かく脈動した。


 アルディスが静かに頷く。

 「ようこそ、〈封蔵監視課〉の協力者へ」


 扉の外に出た瞬間、足が止まった。

 胸の中に、重さと高鳴りが同時にあった。

 シルが俺の足をつん、とつつく。

 「キュ」

 導糸が震える。“後悔?”――“いいえ”。

 俺は微笑んだ。

 「これが、“前に進む”ってことだろ」


 だがその帰路、ギルドに戻る途中――

 背後から、聞き覚えのある声がした。

 「リオ=クラフト、だな」

 振り返ると、黒い外套をまとった青年が立っていた。

 腰には王城の印章付き短剣。

 目は、冷たい炎のように揺らめいている。


 「封蔵課直属、“査察官”カイル=ロウ。

  ――君の力、少しばかり調べさせてもらう」


 空気が、凍る。

 導糸が、反射的に緊張を伝える。

 シルの中心が、青白く光る。


 次の瞬間、足元の石畳が裂けた。


 「試験だ、リオ。

  本当に、その竜と“心を結べている”のか――見せてみろ」


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ