第1話 ぼっち冒険者、パーティ申請三十連敗。
――今日も、断られた。
冒険者ギルドの受付前で、俺はそっと申請書を握りつぶした。
「支援職」と書かれた欄に、赤い「✕」印がついている。
ギルド嬢が気まずそうに視線を逸らす。
「すみません、他の方々は攻撃職を希望されてまして……」
――知ってる。毎回そうだ。
攻撃魔法も剣も使えない。
支援魔法で仲間を強化するのが俺の全て。
だがこの街では“支援職=寄生”の烙印だ。
「なぁ、あの“バッファー君”また断られたぞ」
「三十連敗だってよ、すげぇ根性だ」
「ソロで薬草採取でもしてりゃいいのに」
背中に笑い声が刺さる。
――慣れてる、けど、慣れたくなんかない。
俺の名はリオ=クラフト。
冒険者ランクF。支援職。仲間ゼロ。
ぼっち歴、二年目。
受付の隅に張り出された“パーティ募集掲示板”には、
〈魔法使い歓迎〉〈剣士急募〉〈回復職求む〉
――どこにも“支援職”の文字はない。
「……はぁ」
ため息ひとつ、冒険者カードをしまってギルドを出た。
街路はもう夕暮れ。
屋台の匂いと、人々の笑い声がやけに遠い。
背に背負った古びた杖が、虚しく重い。
“誰かのために力を使いたい”――それだけなのに。
誰もその“誰か”になってくれなかった。
「……帰るか」
その時だった。
――ピチャ。
靴の先に、透明な小さな塊がぶつかった。
水のようにぷるぷる震えるそれが、俺を見上げて――
「キュル?」と、鳴いた。
スライム。
森の入口にすら出る、最弱のモンスター。
だが、そいつの瞳はなぜか“哀しいほど澄んでいた”。
「……お前も、ひとりか」
手を伸ばすと、スライムは怯えるように身を縮めた。
その身体の奥に、淡い光――まるで心臓の鼓動のような輝きが見えた。
不思議だった。
ただのスライムなのに、俺はその光に“仲間”のようなものを感じた。
「……行こうか。薬草採りのついでにな」
俺が背を向けると、スライムは小さく跳ねて、ついてきた。
その日、俺は知らなかった。
この出会いが、ぼっちの俺の人生を――
いや、この世界そのものを変える始まりになることを。




