理解できない幼馴染の気持ち
ーハルトー
レオナと別れた後、僕はなぜレオナが一人で帰ってしまったのかその理由が分からぬまま学園の男子寮にある自分の部屋へと戻ってきた。
「ふう……」
自分の鞄と魔法の杖を机へと置き、頬杖をつきながら先ほどまでのことを思い起こしてみる。
そもそもなぜレオナは帰ってしまったんだろう……?
僕にとってレオナは確かに好きだけど、それは友達としての事。
確かにレオナといると居心地はいいし、気楽で変に気も使わなくていいから僕は今のままでも問題はない。
むしろ、今更レオナと彼氏彼女の関係って言われてもしっくりこないし、第一レオナに対して恋愛感情なんてわかない。
きっと、レオナも僕がルミナに告白して断られたことに気を使って冗談半分で「彼女になってあげようか?」と言ったんだと思う。
じゃあ、なんでレオナは一人で帰るって言ったんだ……?
「……分からないな」
「ハルト、帰ってきてからえらい難しい顔しとるが、何がそない分からんのや?ワイで良かったら聞いたろか?」
腕組みをしながらうんうんと、一人の熊の半獣人の男が不思議そうな顔をしながらやって来た。
彼の名は「リース・グレイウッド」。
テイマー科の二年で、エリサと同じく言葉に変な口調で話してくる。
茶色いショートヘアに熊の耳が付いた気が良くて友達もおおい奴なのだが、お調子者なのが玉に瑕。
顔は悪くはないのだけどなぜかモテないらしい。
悪いやつでは無いんだけどね……。
「うん、実は……」
僕はリースに先ほどまでのレオナとのやり取りを大まかにかいつまんで説明をした。
「……という訳でさ、レオナがなんで一人で帰っちゃったのか分からないんだよ」
「……お前マジで言うとるんか?」
「え……?どういう事?」
リースはこめかみの辺りをヒクヒクさせながら顔を引きつらせているが僕には皆目見当もつかない。
「はぁ……アカン……。ハルト、お前ほんまアカンわ……」
そしてリースは次に額へと手を当てると盛大なため息をついた。
なんで僕はそんな盛大なため息をつかれないといけないんだろう……?
「な……何がだよ……」
「ええか?お前は女の子から彼女になってあげてもええって言われたんやろ?なんでそこで頷かんのやっ!?ワイなら即頷くで!」
「え……でもそれは多分僕がルミナに振られたからそれを気遣ってなんじゃ……」
「アホか!どこの世界に同情で付き合うてくれる女がおるんや!ええかっ!?お前は女の子の幼馴染がおるだけでも恵まれとるんやでっ!?勝ち組言うても過言やない!しかも彼女になってくれるとまで言うてくれとるんやろっ!?何でそこで断るんやっ!」
リースは僕へとまくし立てながら顔を近付けてくる。
近い……!
顔近いから……!
「で……でも……僕とレオナは昔から仲のいい友達だった訳だし……」
「かぁぁーー!これやから変に女の子の幼馴染を持つ奴はあかんのや!ハルトが言うとるのは剣術科のレオナちゃんやろっ!?ちっこい背に強気な態度……。可愛ええやないかっ!その娘が顔赤うしながら上目遣いで告白なんかしようもんならもう一発でノックアウトや!ワイなら秒で頷くでっ!やのになんでお前は頷かへんのや!お前が頷かんのなら代わりにワイが頷きに行ったるわ!」
「いや……リースが行っても殴られるだけだと思うけど……」
レオナは口よりも先に手が出るタイプなのだ。
「わかっとるわい!んな事……っ!」
リースは息を荒げながら、続けて何かを話そうとするがその声を遮るように部屋のドアが開いた。