課外授業のお知らせ
ノクス先輩が自分のベッドへと行き、寮内に静けさが戻った頃、4人のマナフォンから「ピロリン」と言う、メールの着信音が鳴った。
マナフォン、通称「MP」と呼ばれるこの携帯端末は魔力を動力として動いている携帯型電話だ。
「ルーンコム」と言う大手の通信会社が魔法ルーンを基盤とし、一般利用者から冒険者など幅広くサービスを展開しているものである。
電話は勿論、カメラ機能を利用することで写真の撮影、メールや「ルーンチャット」というコミュニケーションアプリによるメッセージの送受信、さらにインターネットを利用することで「ルーンマップ」と言う地図アプリも利用できる。
ちなみに、魔力の補充は専用の魔力補充スタンドに置くだけで魔力が補充される。
また、屋外など魔力補充スタンドが使えない場合は自身の魔力を用いて補充することも出来るなど今や生活の必需品となっている優れものなのだ!
まあ、それはいいとしてメールを確認してみるか……。
私はMPでメールを確認すると、それは学園からのメールで明日の課外授業のお知らせだった。
そうか、もうそんな時期なのか……。
「あの……先輩方、この課外授業ってなんなんですか……?」
私達が内容を確認していく中、シェイラが自身のMPの画面を私達へと向ける。
「それはワシが説明しよう。確か1年であるシェイラは初めての課外授業だったか」
「はい……ですから勝手が分からなくて……」
先程までへそを曲げていたノクス先輩が自分のMPを取り出すとシェイラへと課外授業に関する説明を始めた。
「課外授業とは学園に出資している冒険者ギルドが学園に対して出している依頼の事だ。勿論学生相手なので高難易度のクエストは回っては来ない。精々薬草採取とか、難易度が高いと言っても後は低級の魔物の討伐くらいだな。そして、メンバーとワシらに与えられるクエストはバラバラでそれらは学園側が決めているらしい。誰と何をするのかは内容を見てみないと分からないという訳だ。もちろんこれらの成果が成績に反映し、今後の課外授業にも影響する」
「なるほど……。あ、ボクのは薬草採取と書いています。あれ……?よく見るとノクス先輩と同じメンバーなんですね」
「薬草採取とは言え、予期せぬ事は起こり得るからな。そのためどのクエストにも三年が最低一人同行をする」
「なるほどです。ではノクス先輩、明日はよろしくお願いします」
「任せろ。大船に乗った気でいてくれて構わない」
シェイラは深々と頭を下げるとノクス先輩は笑みを浮かべて見せた。
なるほど、シェイラはノクス先輩と同じ薬草採取なのか。
(さて、私は何かな……)
私は自分のMPへと目を落とすと、ゴブリンの討伐と書かれており、メンバーは私の他にハルトとルミナ、それにロガンの名前が入っていた。
ロガン・ロックハート……。
エリサやハルトと同じく幼馴染の一人で、私より一つ年上のハーフドワーフ。
優しい上に力持ちで、幼い頃の私やハルト、エリサが困っていた時には誰よりも早く駆けつけ、必ず助けてくれていた。
私にとってはハルトとはまた別の意味で憧れを抱いていた兄のような存在。
最近同じメンバーになって無かったけど、久しぶりにロガンと同じメンバーになれる……そう思うと思わず顔がほころんでくる。
「レオナはニヤニヤしてなんかええ事でもあったんか?ん……?なんや、明日の課外授業ロガン兄と一緒やないか。そう言えばウチはロガン兄と同じメンバーになったことあらへんなぁ~……」
いつの間にやってきたのか、エリサが私のMPを覗き込む。
猫の半獣人だけあっていつの間にかいたりするんだよね……。
しかし、この時の私はルミナがメンバーの中に入っていることにそこまで気にも留めなかったが、まさかあんな事になるとは思っても見なかったのだった……。