魔術師科のハルト・アーヴェル
夕日の差すグレイス学園の屋上……。
そこに半袖の服に薄手のマントと言った魔術科の制服を着ている人間の男子生徒こと僕、「ハルト・アーヴェル」はテイマー科に所属する一人のエルフの女生徒の前に立っていた。
僕と言う人間の特徴をかいつまんて述べるなら、自分で言うのも何だけど茶髪のボサボサの髪に黒縁の眼鏡をかけた地味で冴えない男で、平たく言えば陰キャなタイプだ。
そして、その僕の前に立っているエルフの女生徒の名前は「ルミナ・ヴェイル」。
彼女は金髪のゆるふわなロングヘアにメイクだろうか、明るめな表情は陰キャな僕とは対象的に陽キャな印象を与えている。
そんな真逆とも言える僕達二人がここにいるのかと言うと、僕はルミナに告白をすべく彼女にこの場所まで来てもらっている。
とは言っても、別に僕がルミナの事が好きだと言うわけではなく、罰ゲームとして彼女に告白するよう友達から言われているのだ。
そもそものことの発端は、今日の魔術の授業であった攻撃魔法による的当ての練習で一番的から遠い奴が罰ゲームとしてルミナに告白をすると言うルールのもと、友達とその授業に望んだ。
しかしながら、結果として僕が一番中心から遠く、僕がルミナに告白をする事になり今に至る。
彼女の事は人伝には聞いている。
彼女は遊び人のギャルで、様々な男と遊んだりしているとか、日替わりで彼氏が違うとかそういう噂は耳にする。
だからだと思うのだけど、そんなルミナに告白をすると言った罰ゲームが設けられたのだと思う。
尤も、当のルミナにしてみればいい迷惑だろうけど……。
まあ、それはいいとして僕は気が進まない中、これからルミナに告白をしなければならない。
ふと、搭屋の隅へと目をやると罰ゲームをいい出した友達数人が物陰からこちらを見ながら口パクで「早く告白しろ！」といっているのが分かる。
（はぁ……気が進まないな……）
「陰キャくん、あたしに話あるから呼んだんでしょ？マジ待たされすぎてダルいんだけど！」
そう言うルミナの方へと目をやると、明らかに退屈……というか、待ちくたびれて少しイラッとしているルミナがそこにいた。
ちなみにルミナの言う陰キャくんとはもちろん僕の事。
冴えない陰キャな男、それが僕ハルト・アーヴェルなのだ。
それはいいとして、確かにルミナがここに来てからもう10分くらい経つだろうか……その間僕が何も言わないものだから当然と言えば当然のことだ。
しかし、ここに呼ばれた時点で僕が何を言わんとしているのかは大体の見当はついていそうなものだと言うのに、ルミナは自分には関係ないと言った表情をここに来てからずっとしていた。
それでも勝手に帰らない辺り案外律儀な性格なのかもしれない。
「あ……あのさ……、その……僕、君の事が好きなんだ。だからその……」
「悪いけど～、あたしは陰キャくんにマジで興味ナッシングだから。話それだけ？じゃ、バイバイ～」
僕が言い終わる前に僕の告白を断るとルミナは友達達がいる方とは反対側を通って屋上を去ったいった。
次に友人の方へと目を向けると、彼らはグッジョブと言わんばかりににこやかな笑みを浮かべながら親指を立てると屋上から去っていった。
（はあ……やれやれ……）
軽くため息をつくと、僕もまた屋上を後にした。
◆◆◆
校内へと戻った僕は、鞄を取りに教室へと戻るとそこには見知った女の子の顔があった。
彼女の名前はエリサ・ルノワール。
僕の幼馴染の一人で、変わった口調で話す猫の半獣人の女の子だ。
「あ、ハルトやん。ルミナへの告白っちゅーのはどないやったんや？」
僕がルミナに告白をしに行ったと言うことが知れ渡っているのか、エリサは興味津々と言った表情で笑みを浮かべながら聞いてきた。
「断られたよ。尤も罰ゲームでの告白だったんだけどね……」
「なんや、罰ゲームかいな……。ま、何にしろ断られたんならそれはそれでええんちゃうか？あんたの場合変にルミナと付き合うたらええように遊ばれるだけや」
「あは……あははは……」
エリサの言葉に僕は苦笑する。
確かに彼女の言うようにもしルミナと付き合うことになったら四六時中ルミナに振り回されっぱなしかもしれない。
そう思うと罰ゲームとは言え、断られたのが正解だと思う。
「あ、せや……さっきレオナが来とったで」
「レオナが？」
レオナ・ラルクス。
僕の幼馴染の一人で、背が低いのをやたら気にしている昔から仲のいい女友達だ。
幼い頃は僕とレオナとエリサ、そして「ロガン・ロックハート」と言うハーフドワーフの一つ年上の幼馴染と一緒によく遊び回っていた。
「せや。ハルトと一緒に帰りたかったみたいやけど、アンタがルミナに告白しに行っとるって聞いたら、おもろい顔しとったで。レオナのことやからおおかた校門あたりでハルトが来るの待っとるんちゃうか？」
「わかった、行ってみるよ」
「じゃ、ウチは先に帰るで。ほなな」
自分の鞄と杖をを持って教室を出るエリサを見送った後、僕もまた自分の鞄と魔法の杖を手にして校門へと向かうことにした。
