また、まずそうなハンバーグやってる
肉汁ドバーのハンバーグ、本当にそれが「うまさ」なの?
次回の『カンブリア宮殿』を何となく見ていたら、「肉汁あふれるハンバーグ」という予告が流れてきた。
ステーキのあさくま、という店らしい。
鉄板の上に置かれたハンバーグにナイフを入れる。すると中から肉汁がジュワーッと出てくる。
いや、ジュワーッというより、私には「ドバーッ」に見えた。
テレビだから、たまたま一番肉汁が出た映像を使ったのかと思った。
ところが気になってTikTokまで見てみたら、他の動画でも本当に出ている。
ああ、これがこの店の売りなのね。
でも私は、その映像を見た瞬間、
「うまそう!」
ではなく、
「うわ、油すごい」
と思ってしまった。
これは完全に好みの問題でもある。
私はそもそも牛脂が好きではない。
ステーキを買った時に牛脂が付いてきても使わない。母は「もったいない」と言ってありがたがって使いたがるけれど、私は肉そのものから出る脂だけで十分だと思っている。
だから「肉汁たっぷり」という言葉も、私にとっては必ずしも褒め言葉ではない。
それに、料理として一つ疑問がある。
ハンバーグの中に入っている水分や脂が、噛んだ瞬間に口の中で出てくるなら分かる。
それをジューシーというのだと思う。
ところがナイフで切った瞬間、せっかくの汁が鉄板の上へドバーッと流れてしまったら、その汁は誰が食べるのだろう。
ご飯の上で切るなら分かる。
パンの上で切って、出てきた脂や肉汁をパンに吸わせて食べるのも分かる。
ソースに全部混ぜて最後まで食べるのなら、それも料理として筋が通っている。
でも鉄板の上へ大量に流して、そのまま鉄板に残すのなら、せっかく肉の中にあったものを外へ出しているだけではないのか。
「肉汁がいっぱい出ました!」
という映像は確かにテレビ映えする。
でも私は、
「それ、肉の中に残しておいた方がおいしいんじゃないの?」
と思ってしまう。
調べてみると、あさくま公式通販の「あさくまハンバーグ」は、牛肉、玉ねぎ、パン粉などに加え、国産牛脂も原材料として使われている。牛肉は豪州産・ポーランド産と記載されている。公式自身も「ビーフ100%」「粗びき」「溢れる肉汁」を特徴として打ち出している。
だから、あの大量の「肉汁」の全部が、牛肉の赤身から自然に出てきた水分というわけではない。
もちろん、牛脂をハンバーグに混ぜること自体がおかしいわけではない。
むしろ料理としては普通にある方法だ。
赤身だけで作ればパサつきやすい。そこで脂を混ぜて、柔らかさやコクを出す。
理屈は分かる。
しかし私は牛脂そのものが好きではないので、「牛脂を加えて肉汁感を増やしました」と聞いても、魅力には感じない。
だったら多少値段が高くても、もっと肉そのものの質が良いハンバーグを食べたい。
あるいは、そこまで牛肉を楽しみたいのなら、私は最初からステーキを食べる。
ステーキなら肉の繊維も味も焼き目も、そのまま楽しめる。
わざわざ一度挽いて、牛脂を足して、また成形して、切ったらその脂が鉄板に大量に流れ出る。
私には、それがどうも遠回りに見える。
では、実際に食べた人はどう評価しているのか。
口コミも調べてみた。
すると意外というべきか、当然というべきか、肉汁を褒めている人はかなり多い。
2026年の口コミでも、「肉汁がドバッとあふれる」「ジューシー」「肉の旨味が来る」といった感想が見られる。サラダバーやコーンスープ、カレーなどを含めて満足している人も多い。
つまり、私が見て「油すごい」と思ったものを、
別の人は、
「肉汁すごい。うまそう」
と感じている。
ここは完全に好みが分かれるところなのだろう。
そして、あさくまはハンバーグだけを売っているわけでもない。
サラダバー、コーンスープ、カレー、デザートなどを含めて、「たくさん食べられて楽しい」という体験そのものを売っているように見える。
実際、口コミを読むと、ハンバーグ以上にサラダバーやコーンスープを楽しみにしている人までいる。
だから価格だけを見ると、確かにお得感はある。
私がテレビで見た価格帯で、メイン料理に食べ放題まで付いてくる。
それなら家族連れや、たくさん食べたい人には魅力的だろう。
一方で私は、そこでまた別のことを考えてしまう。
その価格で食べ放題まで付けて、店も人件費も光熱費も払って、ちゃんと利益も出さなければならない。
だったら当然、ハンバーグ単体に使える原価には限界がある。
これは「あさくまが悪い」という意味ではない。
商売として当たり前の話だ。
むしろ、その条件の中で「安いのに満足感がある」と評価されているなら、経営としては上手い。
ただ私は食べ物に関して、量よりも「それ自体がおいしいか」を優先する。
サラダバーが豪華だからハンバーグもおいしい、とはならない。
逆も同じだ。
食べ放題が楽しくても、メインの肉が自分の好みでなければ、私はあまり行きたいとは思わない。
そして最大の疑問はやっぱり、
「大量に流れ出した後のハンバーグは、本当に最後までおいしいのか?」
ということだ。
ハンバーグは加熱すれば当然、脂と水分が外に出る。
しかし大量に出れば、その分だけ内部に残る量は減る。
もちろん全部が流れ出るわけではないし、実際の口コミでは「柔らかい」「ジューシー」という評価も多い。
だから、食べてもいない私が「絶対パサパサだ」「絶対まずい」と断定するのは違う。
そこは実際に食べた人にしか分からない。
ただ料理の好みとして私は、
切った時に鉄板へドバーッと出るハンバーグより、切ってもそれほど流れず、噛んだ時に口の中でじわっと肉汁が出るハンバーグの方が好きだ。
見せるための肉汁より、食べるための肉汁が欲しい。
テレビやSNSでは、「切った瞬間に肉汁が噴き出す」という映像は強い。
一秒で「ジューシー」を伝えられる。
だから宣伝としては非常に分かりやすい。
でも、
おいしそうに見える料理と、本当においしい料理は同じなのか?
という疑問は残る。
少なくとも私は、鉄板を脂の海にするほど肉汁が流れ出している映像を見ても、食欲はそそられなかった。
むしろ、
「その脂、肉の中に残してくれよ」
と思った。
ただし、これはあくまで私の味覚と好みである。
口コミを見る限り、あさくまハンバーグの肉汁を楽しみにしている人は実際にいるし、それを目当てに何度も通っている人もいる。
だから私は店を否定するつもりはない。
好きな人は食べればいい。
食べ放題が好きな人も楽しめばいい。
牛脂のコクが好きな人もいる。
ただ私は行かない。
もし同じ金額を払うなら、食べ放題を付けなくてもいいから、肉そのものにお金をかけたものを食べたい。
そして、もう少し払えるならステーキを選ぶ。
結局、食べ物の価値は、
「どれだけ肉汁が出たか」
でも、
「どれだけたくさん食べられたか」
でもない。
食べ終わった時に、またこれを食べたいと思えるかどうか。
それが一番大事なんじゃないだろうか。
私にとって、ハンバーグの肉汁は鉄板に見せるものではない。
口の中で味わうものだ。
だから私は、肉汁ドバーッという映像を見ても、
「すごい」
ではなく、
「まずそうだな」
と思ってしまったのである。




