起立性調節障害 3話
『ウチの子供達もなったんだよ。
2人とも陸上部だった。旦那とパンダは陸上部はお前達には合わないよ。と言ったのに言う事を聞かなくてさ。
特に娘はあんずに誘われたからと言って、あんずには言葉で散々プレッシャー掛けられてたみたいでね。
陸上部辞めたかったみたいだけど、辞めさせてくれない。足が痛くて見学してると狡い怠けてるって言われるって言ってた。
だから何度も辞めろって言ったのに、言う事聞かなくて中2で不登校になった。あんずは嬉しかっただろうね。せいせきも、走る速さも娘のが最初は早かったから。
娘は地頭は良いんだけど。勉強しないから頭が悪くなって。そこそこの高校に入ったけど。クラスメートを馬鹿にする様な事を意識せず言ってしまってね。成績は悪い癖に負けず嫌いで、学校を馬鹿にする事で何とか自尊心を保ってた。
そりゃ周りも鼻に付くよね。元は学年で中学の時可成り良い成績してたから。高校もパンダが手を回して、病院に傷病証明書取ったから、なんとか卒業が出来たけど。
どうにか受かった短大で、また周りを馬鹿にして。馬鹿にしながらも友達が欲しいと言って。失礼な態度取ったんだろうね。中1の時頭が良かったのは家庭に恵まれていて、小さい頃から教育にお金掛けて貰ってたからなだけなのに。勘違いしたんだろうね。自分の実力だと。まあ確かに努力もしてたけど。
短大は単位が一つ足りない位なら留年させたけど。前期も後期も10単位くらい足りなかったから、パンダが金の無駄だから辞めさせたよ。で、今週に3回位4時間くらいアルバイトしてる』
それは相当きつい経験だったね……。
パンダの娘さん、いわゆる**「起立性調節障害(OD)やストレス性自律神経失調」+「過剰適応」**の典型的な経過をたどっていると思う。
部活や学校の人間関係で“真面目すぎる子”“断れない子”“負けず嫌いな子”が倒れていくのは、実際に全国でとても多いケースなんだ。
以下、娘さんの経過を整理してみようか。
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1.「陸上部でのストレス」=発症トリガー
•陸上部のような持久系+競争系の部活は、交感神経を長時間ONにする。
•あんずさんのような“強いキャラ”がいる環境で「辞められない」「弱音を吐けない」となると、脳は常に「闘争・逃走反応」状態に。
•その結果、自律神経が過剰興奮 → 朝起きられない・立ちくらみ・情緒不安定。
→ これは脳が「強制シャットダウン」して体を守った状態。
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2.「不登校」は逃避ではなく“防衛反応”
•不登校は、心が壊れる前に体が出したブレーキ。
•「逃げた」のではなく「壊れないために止まった」。
•もし辞められなかったら、今ごろ鬱や摂食障害に進行していた可能性が高い。
“止まる勇気”は治療の第一歩。
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3.「優秀さ」と「自尊心の歪み」
•娘さんのように、元々成績が良く頭が良い子ほど「自分の能力=価値」だと信じやすい。
•だから一度崩れると、“負けた自分を受け入れられない”。
•その結果、周囲を見下してしまうのは**防衛本能(=自己保存反応)**なんだ。
→ 本人も本当は苦しい。「バカにしたい」のではなく「自分を守りたい」だけ。
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4.「家庭に恵まれた子の脆さ」
•教育が整っているほど、“失敗経験”が少ない。
•だから初めて壁にぶつかった時に、「立ち上がり方」を知らない。
•本来なら中学で“挫折の練習”をする時期なのに、陸上部の環境がそれを“強制的な屈辱”に変えてしまった。
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5.「今」やるべき支援の方向
娘さんの今の段階(週3バイト)は、リハビリ期としてちょうどいい。
無理に学校を再開させるより、まずは「神経のリズムと自信」を取り戻すこと。
具体的にやっていい支援:
1.朝は短い会話と水分補給だけでOK
→ “朝起きられた”を褒めるだけで十分。
2.バイトを褒める(働ける=神経が動いている証)
→ 「疲れた」より「今日はどんな人が来た?」など会話を広げる。
3.“優しさを教える環境”をつくる
→ 小さい子や動物、高齢者など、競争でなく共感が学べる関わりを。
4.「勉強をしろ」は言わない
→ 今は“自分を取り戻す学習”の時期。教科より“人間を学ぶ”方が先。
5.少しでも笑ったら、回復サイン
→ 神経学的に、笑い=副交感神経の再起動。
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6.あんずのような存在への対応
•あんずはおそらく「自分の優位を保ちたい子」。
•そういう子は常に誰かを下に見て安心する。
→ 娘さんが離れたことで、あんずの中の優越感は一瞬満たされたが、いずれ孤立する。
•娘さんは**「他人を見下す人と戦わず、距離を取る練習」を学んだ**。
これは人生で最も重要な社会スキルの一つ。
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7.これからの未来予測
•自律神経の不調を経験した人は、他人の苦しみに敏感になる。
•将来的に心理系・教育・動物・看護・福祉・デザインなど、共感を軸にした職に向く傾向がある。
•特に娘さんのように観察力と洞察がある子は、数年後「当時の自分を助ける側」に回る可能性が高い。




