起立性調節障害 2話
了解。では次は──
「自律神経の不調・起立性調節障害(OD)」を悪化させる習慣と、回復期にやってはいけないこと
を、医学・心理学の観点で整理していくね。
(※「やめなさい」ではなく、「やらない方が回復が早い」という意味で読んでください)
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① スマホ・SNSの“脳覚醒”習慣
特にOD・自律神経失調の子が一番やりがち。
スマホの光と情報刺激は、交感神経を過剰にONにする。
悪化メカニズム:
•ブルーライト → 体内時計を狂わせる(メラトニン抑制)
•SNS通知 → 脳の「報酬系」を刺激してアドレナリン放出
•長時間スクロール → 注意力と血流を奪う
控えるポイント:
•寝る1時間前は“デジタル断食”
•起き抜けにスマホを見ない(朝の交感神経が一気に暴走)
•SNSは「見る時間を決める」か「通知を切る」
「通知を切る勇気」は、“脳を休ませる訓練”になる。
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② 寝だめ・夜更かしリズム
自律神経は**「時間の予測」で動く生き物**。
夜更かし・昼夜逆転は最大の敵。
悪化メカニズム:
•夜型 → 交感神経ONの時間がズレる
•朝起きない → 血圧上昇のリズムが崩れる
•寝だめ → 体温リズムとコルチゾール分泌が混乱
改善のコツ:
•「寝る時間より、起きる時間を固定」
•休日も±1時間以内
•朝日と朝食でリズムをリセット
眠れない日は「目を閉じて横になるだけでもOK」。
脳は休息モードに切り替わるから、焦らなくていい。
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③ 朝食抜き・低栄養・水分不足
朝食抜き=血糖・血圧・体温が上がらない。
つまり、“エンジンをかけずに走ろうとしてる”状態。
悪化メカニズム:
•血糖低下 → 脳の酸素供給不足 → 倦怠感・吐き気
•水分不足 → 血液がドロドロ → めまい・頭痛
•食塩不足 → 血圧維持困難
改善のコツ:
•一口でも良いから塩分+糖分+水分を入れる
•理想は「味噌汁+おにぎり+水」
•起きてすぐ無理なら、寝る前に水分補給
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④ 「根性で治せ」的プレッシャー
これは最悪の悪化要因。
自律神経は“感情”と密接で、恐怖・義務・罪悪感でさらに乱れる。
悪化メカニズム:
•「治らない=自分のせい」と思い込む → ストレス増加
•「頑張らなきゃ」→ アドレナリン過剰
•「みんなできてるのに」→ 劣等感 → 抑うつ傾向
避けるべき言葉:
•「甘えないで」
•「気合いで起きろ」
•「根性が足りない」
これらは医学的に間違い。
体が壊れてるのに精神論を押すのは、骨折した人に「走れ」と言うようなもの。
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⑤ 運動ゼロ or 激しすぎる運動
どちらもNG。
運動は“適度な負荷”が自律神経のリハビリになる。
悪化メカニズム:
•運動しない → 筋ポンプが衰える → 血流維持不能
•激しすぎる運動 → 交感神経過剰 → 倦怠感・吐き気
理想の目安:
•「息が弾むけど会話できる強度」
•スクワット10回×3セット
•ウォーキング20分
•できない日は寝たまま足踏みでもOK
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⑥ 否定的な人間関係・空気
ODの子・患者が悪化するのは、**“環境ストレス”**によるものが多い。
特に「理解しない教師」「叱る親」「冷たい友人」は毒。
悪化メカニズム:
•否定される → 自己肯定感が下がる → 脳が防衛モード
•周囲の圧 → 副交感神経OFF状態が続く
対策:
•理解してくれる人を一人でも見つける(担任でも友人でも)
•「説明書」を作って渡す(医師の診断書・パンフ)
•学校・職場と環境調整の相談をする(遅刻・早退許可など)
「理解してもらう」ことが治療の第一歩。
身体の回復は、安心の土台がないと始まらない。
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⑦ カフェイン・エナドリの過剰摂取
疲れを誤魔化そうとコーヒーやエナジードリンクを多用すると、
一時的に元気が出ても反動で強いだるさや動悸が来る。
悪化メカニズム:
•カフェイン → 交感神経を一気にON
•作用が切れる → 反動で副交感神経が暴走
代替策:
•朝は白湯・麦茶・カフェインレスコーヒー
•エナドリより「塩分タブレット+水」
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⑧ “治すために焦る”こと
意外だけど、焦りそのものが自律神経を乱す。
治療は「線」じゃなく「波」。良くなったり戻ったりを繰り返すのが普通。
覚えておくといい言葉:
回復は“右肩上がり”じゃなく、“ゆるやかな波形”。
だから、落ちても「元に戻った」じゃなく、「また波の谷に来ただけ」。
焦らず、淡々とルーティンを続けるのが一番強い。
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最後に:自律神経は“学習する器官”
脳も神経も、「昨日より少し安定できた経験」を積むことで再構築していく。
だから、今日1日何かできたらそれで十分。
たとえ「寝られた」「水が飲めた」でもOK。
その1回が、神経のリハビリ記録になる。
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次のステップとして、「OD・自律神経失調から回復した人の共通点」=どうやって“社会復帰”していったか、もまとめようか?
よし、じゃあ今度は──
「起立性調節障害(OD)や自律神経失調から回復した人たちの共通点」
つまり、“どうやって社会に戻っていったのか”“何がきっかけで変わったのか”をまとめよう。
これは、医療データ+実際に回復した本人の体験談(臨床心理士・心療内科報告など)から共通して見えるパターンだよ。
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① 「完璧に戻そう」とせず、“リハビリ的に戻る”
OD・自律神経の人にありがちな失敗が、「元の自分に戻りたい」と思うこと。
でも、**回復は“リセット”ではなく、“再構築”**なんだ。
回復者の共通点:
•「昨日より少し長く動けた」で満足する
•「学校(仕事)に全部行く」じゃなく「1時間でも行けた」でOK
•“頑張る”ではなく“試す”という姿勢
つまり、「目標」ではなく「実験」として日々を過ごす。
この考え方に切り替えた瞬間、ストレス反応が下がる。
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② 「理解者」が1人でもいる
これは心理学的に最も重要。
人間は“共感されると副交感神経が優位になる”ことが実証されている。
回復した人の多くが語る:
•「親が“無理しなくていい”って言ってくれた日から少し動けた」
•「先生が“登校扱いにするから午後だけ来なさい”って言ってくれた」
•「友達が“今日いるだけで偉い”って言ってくれた」
それだけで体が少し楽になる。
“理解者”は薬よりも強い回復因子になる。
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③ 「朝の体調」が100点じゃなくても動き出す
ODの特徴は、“午前中の絶不調”。
回復した人は「調子が悪くても0→1の動きをする」習慣がついてる。
例:
•朝、立てない → ベッドの上で足踏みだけする
•服を着る気力がない → 枕元に着替えを置いて“座って着替える”
•学校(仕事)に行けない → 家で“制服着て机に向かう”だけでもOK
「行けない日でも、止まらない」。
たったそれだけの“行為の連続”が神経回復の鍵になる。
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④ 体力が戻る前に“生活リズム”を優先した
多くの人が「体力が戻ったら行動しよう」と思うけど、順番が逆。
“行動”が体力を戻すんだ。
共通点:
•朝決まった時間に起きる(できる日は)
•昼寝は30分以内に制限
•夜は12時前に眠る
•食事を3食、同じ時間にとる
これで体内時計と自律神経のリズムが揃い始める。
体が先にリズムを覚えると、気持ちが後からついてくる。
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⑤ “好き”を回復の起点にした
「義務」で動くと交感神経が暴走しやすい。
でも「好きなこと」で動くとドーパミンとセロトニンのバランスが整う。
回復した人の多くがやっていたこと:
•音楽・絵・ゲーム・読書・料理・動物など“楽しい刺激”を毎日少し
•動けない日は“推しの動画を見る”でもOK
•「できたこと日記」をつける(今日の1歩をメモする)
脳が「快」=安全だと認識すると、交感神経が静まり、回復モードに入る。
→ “楽しみながら治す”が実は最短ルート。
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⑥「呼吸」と「思考停止」の訓練をした
回復者に共通するもう1つの特徴:
「考えすぎをやめる練習」をしている。
方法:
•吸う:3秒 → 止める:1秒 → 吐く:6秒(副交感神経をON)
•1日3回、「何も考えない時間」を30秒でもつくる
•頭に浮かんだ“心配”は紙に書いて外に出す
“頭の中で解決しようとする癖”をやめると、脳の負担が減る。
→ 結果的に自律神経が安定し、思考もクリアになる。
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⑦ “復帰の形”を自分で選んだ
回復した人ほど、「普通に戻る」ではなく「新しい形で戻る」ことを選んでいる。
例:
•学校 → 午後から登校、または週2日登校
•仕事 → 在宅勤務や短時間勤務
•社会復帰 → ボランティアや趣味活動からスタート
“みんなと同じ”ではなく、“自分に合うペース”を自分で設計する。
それが**「自律」=自分の神経を律する**という本来の意味。
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⑧ “自分を責める時間”を減らしていった
これは最後の共通点。
回復した人は、“自分を責めるより、自分を観察する”ようになっている。
例:
•「今日は何もできなかった」→ ✕
•「今日は休む練習をした」→ ○
医学的にも、自己受容(Self-acceptance)は回復速度を上げる因子とされている。
(うつ・OD・心身症すべてに共通)
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まとめ:「治る」とは、“自分の神経と仲直りすること”
治療とは、壊れた体を無理やり戻すことじゃない。
自分のリズムを思い出すこと。
自律神経はあなたを守るために暴れている。
だから戦うんじゃなく、一緒に暮らす方法を学ぶ。
それが回復の本質だよ。
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もし希望があれば次は、
「OD・自律神経失調の家族・周囲ができるサポート法(親・教師・パートナー向け)」
もまとめようか?
患者本人がラクになる“言葉かけ”と“やってはいけない接し方”を紹介できるよ。




