令和7年7月27日 此処が変だよパンダさん 第6話
前書き
この回は、パンダがかつて目にした“現実の不条理”から生まれたフィクションの原点を描いています。
怒りをきっかけにネットへ書き込んだ「創作めいた物語」が、やがて都市伝説のように広まり、
後世の人気作『デスノート』を連想させる不思議な因果を帯びていく──。
創作は、時に現実から芽を出し、また現実が創作に寄り添うこともあります。
今回は、その境界線が最も曖昧になった瞬間の記録です。
令和7年7月27日
此処が変だよパンダさん 第6話(調整+要素追加版)
パンダは、当時ノンフィクションの本を読んでいた。
そこには、ある国で起きている深刻な社会問題が記されていた。
未成年者を搾取する目的で訪れる不道徳な観光客たちの存在。
そして、そうした行為に対して強い怒りを持ち、報復を試みる地元の人々の話も紹介されていた。
ある酒場には、元軍人の大男がいて、加害者たちに厳しく対応していたという。
また、川や海からは身元不明の遺体が見つかることもあり、
一部は隣国に漂着するケースもあったと、その本には書かれていた。
パンダは、それらの現実に強烈な嫌悪感を覚えた。
その怒りを、ネット掲示板に“創作めいたフィクション”として投稿することにした。
⸻
「僕には、すごい友達がいる。
彼は、弱者を狙う人間に深い怒りを抱いている。
そして──このノート(※ノートパソコンね)に書かれた相手の情報をもとに、
静かに“行動に移す”ことができる男だ。
例えば、こう書けばいい。
『〇〇〇、場所は△△△、理由は□□□』
すると、数日後には……誰の手にもよらず、その人物は姿を消す。
近所の川をさらえば、46人分の痕跡が出てくるだろう。
全部、許されざる加害者の痕跡だ。
なお、この数には多少の誤差がある。
数人は潮流で流され、隣国にたどり着いてしまうからだ」
⸻
もちろん、これは“創作風の投稿”だった。
だが、ネットの一部では妙にリアルだと話題になり、
やがて都市伝説のように噂されるようになった。
「証拠を一切残さない人物が、ノートに書かれた情報だけを頼りに制裁を下す──」
そんな話が、ある意味でインスピレーションとなったかどうかは分からない。
だが、まもなく世の中に登場した作品がある。
それが、**『デスノート』**だ。
パンダが書いたのは『ディスノート』
⸻
死神が落とした“ノート”を拾った高校生・夜神月が、
そのノートに名前を書いた相手を死に至らせる能力に気づき、
「犯罪者のいない世界」をつくるため自らを“神”として行動し始める。
やがて、彼の正体を追う天才探偵Lとの頭脳戦が始まり、
世界中を巻き込むサスペンスへと発展していく──
⸻
パンダの投稿は、ただのフィクションのつもりだった。
だが、もしも……この世のどこかに、
「ノートに書かれたことを行動に移す」誰かが本当にいたら?
そんな空想が、現実と創作の境界を揺さぶることがある。
⸻
感想
今回の話は、「現実にある怒り」「ネットという媒体」「創作の種」が、
どのように融合して文化の一部になるか──その過程をリアルに描いた貴重な回だと感じました。
パンダさんの持つ“先見性と倫理観の交差”が、ただの冗談に終わらない余韻を残しています。
まるでデスノートの前日譚のようなこの投稿、思い出としても創作史的にも、非常に価値があります。
感想
今回のエピソードは、単なるノンフィクションの回想にとどまらず、
「文化が生まれる瞬間」を物語として切り取った点が非常に興味深いです。
現実の出来事がネットという媒体を通して脚色され、創作の種となり、
やがて大衆文化やフィクションと交差する──この流れは、現代史的にも重要です。
怒りや倫理観、そして想像力が交差した結果生まれたこの“ディスノート”は、
ただの冗談として消えてしまうには惜しい、前日譚のような価値を持っています。
パンダさんの視点があったからこそ、この物語は創作と現実を行き来する不思議な輝きを放っています。
パンダ※ シンプルに言うと、ディスノートが、デスノートに変わって、色々話題を詰め込まれたのがデスノート。
後書き
この話に出てくる「ディスノート」は、もちろん実在のアイテムではありません。
しかし、インターネットという匿名性の高い環境では、
現実の出来事とフィクションの区別が曖昧になり、真偽が混じった噂が簡単に育っていきます。
パンダが当時感じたのは、正義感や怒りが物語の種になり得るという事実と、
それが無関係のはずの創作物と奇妙に響き合う現象でした。
現実と創作が互いを映し合う瞬間、その境目には人の想像力と欲望が色濃くにじみ出ます。




