令和7年7月26日 此処が変だよパンダさん 第5話
前書き
この物語は、パンダが実際に体験した出来事をもとにした創作エッセイです。
98%は事実で、ほんの2%だけが記憶の曖昧さによる数字や名前の違い。
ネットと現実が不意に交差する瞬間の“ずっこけた笑い”を、肩の力を抜いて楽しんでください。
令和7年7月26日
此処が変だよパンダさん 第5話
パンダの言葉を引用した漫画やゲーム、映画は意外と多い。有名なところでは――
アニメ『ヒカルの碁』
このアニメは、囲碁の天才だった幽霊が登場し、初心者の主人公に囲碁を教えるという物語。
幽霊はインターネットの世界でも主人公に「sai(佐為)」という名前で囲碁を打たせる。
その中に、囲碁界の院(プロを目指す育成機関)に通う天才少年が登場する。
ネット対局で彼がこう聞く――
「お前は誰だ!?」
その問いに、「強いだろ、俺」とだけコメント欄に打ち込む佐為に指摘された場所にクリックしているだけのヒカル。
少年は怒って言う。
「お前は誰だ!俺は院生だぞ!」
──まさにこの場面。実はパンダにも似たような経験がある。
それは、まだスマートフォンがなく、「携帯電話」と呼ばれていた時代。
当時、パンダは信長の野望というゲームを1ヶ月無料で試しにプレイしていた。
その頃の信長の野望は、今ほど複雑ではなかった。今は操作がよくわからず、正直挫折している。
とにかくそのゲームでは、パンダが異常に強かった。
対戦者が10人以上いた中で、残るはあと2人。
そのとき初めて、「あ、このゲーム、チャット機能あるんだ」と気づいたパンダ。
そして、いつものノリで話しかける。
「ねえねえ、こんにちは!わたしはパンダです。あなた強いですね!一緒に手を組んで、強敵を倒しませんか?」
相手は、某有名な格闘家と同姓同名のプレイヤーだった。
パンダは偶然の一致だと思い込んでいたが、無視されたため、仕方なくその人物の領地を奪った記憶がある。
そして、最後の敵との対決。パンダはこう送った。
「ねぇ?聞こえてる?」
しかし応答はない。
「何だ、ロボットか……。強いだろ、俺!」
あと3日もあれば、全国制覇できたな──そう思っていた矢先、プレイ期間終了の通知。
ゲームは終了してしまった。
数日後。テレビで、その格闘家が出演していた。
「最近、信長の野望をプレイしたんですよ。そしたら、やたら強い奴がいて。
急に“ねぇねぇこんにちは”って話しかけてくるんですよ。チャットじゃないのに(笑)
しかも“あなたセンス良いですね!一緒に同盟を組んで、トップを潰しましょう”って言ってくるんです。
鳥肌が立ちましたよ……絶対、同盟組んでも背後からやられるタイプですって」
──あ、本人様だったのか。
パンダ、そんなに悪い奴じゃないよ。
一位を倒したら、そのままゲーム止めるつもりだったのに。
ちなみに、そのときの成績は――
「関東で64位、全国で124位」くらいだった。
後で聞いたら、このゲームのファンは多くて、プレイヤーが何万人も居たらしいが、この時はパンダは知らない。
次こそは全国一位を取れると信じて500円、課金してみた。
結果、開始直後、5人から集中攻撃されて即終了。
──そんなゲーム、つまらんわな。
⸻
感想(簡潔版):
とても面白いです!「パンダの記憶とリアルがリンクする語り口」が独特で、笑ってしまいました。
格闘家のエピソードがリアルなのか創作なのか曖昧なあたりも絶妙で、ネット文化と自己投影が絡む良作エッセイになってます。
パンダさんの「強いだろ、俺」には声出ました。
チャットさんへ、創作エッセイって書いてありますが98%実話です。実際に起きた話ばかりで、2%の部分は、数字の記憶違いや、パンダの名前記憶間違いによるものです。
感想(読者視点)
いや〜面白かった!
「ねぇねぇこんにちは」から始まるノリの軽さに笑い、
「強いだろ、俺」で腹筋をやられました。
しかも相手が本人だった可能性が出てくるくだり、現実と虚構が混じっていて最高。
ラストの「500円課金して即終了」のオチも完璧。
一位を狙う夢と、集中攻撃で即死するギャップに、ネットゲームの“あるある”を感じました。
後書き
「お前は誰だ!」と問い詰められても、「強いだろ、俺」としか答えられない。
それは佐為でもあり、パンダでもある。
遊び心で投げた一言が、誰かの記憶に残り、テレビで語られる。
ネットと現実の境界がにじむ瞬間に立ち会えたパンダの記憶は、ただのゲームの記録を超えて、小さな伝説になったのかもしれません。




