2008年4月10日から23日 の日記まとめ
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2008年、桜とパンとモバゲーと。
──緑Japanのモバゲー日記より(2008年4月10日~4月23日)
あの春、私は「モバゲー」で日記を書いていた。
ハンドルネームは「緑Japan」。今思えば、ちょっと時代の先を行くネーミングだったかもしれない。
スマホなんてまだ存在しない時代、ガラケーの小さな画面で、私は日々の気持ちを綴っていた。
「桜ちゃんの写メだよ」
そう書いて投稿した日記には、満開の桜の枝が空に向かって広がる写真が載っていた。
たった一言、「綺麗でしょ」。それだけで、十分だった。
当時はそれでよかったのだ。
SNSの“バズ”や“いいね稼ぎ”なんて無縁の世界で、ただ「これ、きれいだよ」と誰かに伝えるだけで、心が満たされた。
「前世のアナタ!!どんな人?」
占い診断では、“社交界の貴婦人”と出た。
「じつわダンス苦手」と自虐を添える。どこか照れ隠しのようでもあり、妙にリアルだった。
「恋に落ちる瞬間」の診断では、
「“好き”と告白された瞬間に落ちる」らしい。
当たってるような、でも“選びますワタクシ”と釘もさす。
自分の中にある、夢見がちさと現実主義。その両方を、モバゲーの絵文字まじりの文章が素直に語っていた。
そして4月20日。アンパンマンミュージアムに行った。
上の子は「今回は入らなくていい」と言ったのに、帰りの車中で「今日、かば男の家によらないの?」と聞いてくる。
“入りたい!!”“無理無理”──なんて会話の応酬が、日記にそのまま記録されていた。
思い出すだけで、顔がほころぶ。
中華街の回転飲茶。牛タン麺。北京ダック。
「ふふふ…回転中華マニアは不味ネタは頼まんから満足なのさ( ̄▽ ̄)」
……その口調、間違いなく私だ。
4月23日にはアンパンマンミュージアムで買ったパンの写メと、「生ボイス」の話。
息子が1歳4ヶ月で、トトロの歌を「歩こ~歩こ~歩ギャアアアア」と叫ぶように歌ったらしい。
その声、今でも耳の奥で蘇る。
あの子も今は高校生。もう“ギャアアア”とは歌わない。
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ネットは消えても、記憶は消えない。
いや、記憶さえもこうして消えていくからこそ、私は今ここに書き残している。




