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トラビスは状況を正しく理解できてはいなかった。スティーヴの話は支離滅裂だと思われたし、マイケルの話は沈黙に近い寂しい内容だった。ただ、エヴァンジェリンが奪われたという事は理解できていたし、スティーヴに落ち度が無かった、とも理解できる。マイケルに《羽付き》3人を相手に死人をださなかったのは十全だと思われた。彼らが本気になれば、病院の患者を無差別に人質にとる事すらできたのだから。
とはいえ、トラビスが渋い顔をするのは当然だった。「とはいっても、仕方のないの一言で全部を片付けられる程の状況にはほど遠いと思いますが?」「そんな事は分かり切ってる。この次どうするかなんてまったくわからないよ」お手上げと手をあげるスティーヴに軽く青筋を額にたてていた。スティーヴは事の重大さを理解しているはずなのに、いつもどおり軽い事に腹を立てても、なんの建設的な意見は出ない事は分かり切っていた。
「マイケルからも聞いただろう? 《不可視》のギフトは主の与えられた"天賦"のものさ。私たち教会側にとってみれば手を出せない理由だろう? 聖人認定されている者と同じ力を否定するというのは、全力でごめん被りたいことだ」トラビスは机の上に置かれた水差しから飾り気のないゴブレットにツーっと一飲み分の水を注いだ。しかし、すぐに手を付ける事なく、手の中で弄ぶ。「私が、何かトラブルを持ちこの様な状況に陥っているのであれば、切り捨ててもらえればいいと思いますが、彼女たちは決してそういう状況なのでしょうか?」
スティーヴは背もたれに体重をかけてふんぞり返った。胸元で腕を組み、文句を言いたそうに口をパクパクさせた。考えがまとまるまで少しの時間、沈黙が流れた。規則的に打ち鳴らされる時計の振り子の音が虚しく響き渡っていた。「そんな事言ったって、仕方ないだろ。私が時を巻き戻して、"全てなし"なんてできるわけないじゃないか。起きた事はその事実をきちんと受け止めて、悔やむくらいなら建設的な意見をだしたらいいじゃないか」トラビスはむっとした。誰の所為でそんな気分になっているのか、理解しようともしていないのか、と突っ込みたかったが、英吉利紳士的に皮肉を言っても彼の言うとおり、建設的ではない事は分かっていた。しかし気持ちが収まっていなかったから、トラビスは手に持ったコップの縁を人差し指ではじいた。
「であれば、君には何か対応策が?」悔しいのでトラビスはスティーヴに考えることを押し付けてみた。「そりゃぁ、……ないって程でもないけどさ」ほう、と感嘆の呼気を漏らして、トラビスは目を細めた。思慮深いという性格ではないスティーヴが腹案を持っているというのが意外だった。「教皇猊下直々に書簡をお送りになられたほどであるのだからね、この事態は速やかに片付ける事が決定しているのだ。エヴァンジェリン君には悪いが、命の有る無しに関わらず。……であるというのに、人道的観点から考えればできうる限り救いたい、と正直には思っている。それはスティーヴ、君だってよく分かっているだろう? 簡単にダイナマイトを仕掛けて終わり、という事にはできないんだよ」
その上で、と前置きを十分にしてスティーヴの意見を促すために、トラビスは木製のテーブルをトントンと人さ指でつついた。それに合わせて、入口が三度打ち鳴らされた。びくりとしたトラビスに対してスティーヴは平静のまま。
「そのさ、悪いとは思っていたけれど、私もそれなりに自前の情報網はもっているってーところでね。――いいかい?」扉を見るスティーヴの問いかけは、誰かをこの場に追加しようとしているのが分かり、トラビスは偉そうな姿をすっと直し、椅子に浅く腰かけ、右手で促す。
スティーヴは立ち上がり、古い孤児院の扉を開ける。先にある入口は暗闇に包まれてからかなりの時間が経過している。遠くで狼が鳴く様なテキサスの田舎と比べれば、かなりまともに整備されているとは言え、こんな夜半に来る者など何か後ろめたさの一つでも持っている者以外いない。「……」トラビスの視線の先に入ってくる影は、長身の女性一人だった。供回りも居ないとくれば、シンディくらいしか思い当たらなかった。しかし、部屋の蠢くろうそくの明かりで黒いフードの下を表したとき、思わず息をのまずにはいられなかった。
「……ミセス・ローラ……」知っている顔だ。トラビスの記憶からだいぶやつれてはいるが間違いなく、マイケルの母親だ。「お久しぶり、という日が来なければよかったとおもいますわ」トラビスはちらりと、宿舎の方に視線を送る。「息子さんはその奥にいるが――」「会う事などありません。彼は母親などと思ってはいないでしょう」辛辣な自虐であるが、トラビスは良く理解していた。
ローラ・セント・フォスター。トラビスの記憶の中でも三番目に人でなしの親だ。自分の息子に相続された莫大な財産を全てかっさろうとうする、リチャードに依存しているクズ、とマイケルは形容している通り、自分の意思が存在している人物ではない。ただジョージに対して、肉体的、精神的な依存をしていたが、高齢になるにつれて、関係が疎遠になると、依存先をリチャードに鞍替えした女だった。トラビスも彼女に対して何ら同情心は持っていない。腹を痛めて生んだ我が子を嬲り、"鍵"の為だけに命すら簡単に奪おうとした共犯者だと思っていた。
金色の髪は艶がなくくすんでいる。もう40も近いためだろうか、目じりに多少の小じわが見えている。痩せている体は、頑丈なコルセットが無ければ枯れ木の様におれそうな程。全身黒色のコートに包まれて、白いはずのブラウスはかすかな端切れのみ覗かせている。豊な表情を持っていたであろう端正な顔立ちには、疲れが浮いており、年齢にしてみれば美しく保たれているはずなのに、薄い存在感しかなかった。かつて、ローラを見たのはジョージの葬式の時だったが、憎たらしいほどの傲慢さは消え去り、燃え尽きたろうそくの様な印象をトラビスは感じた。
「よく――」顔を見せられた、とトラビスが言おうとするところで、スティーヴが手で制した。「罵倒はやめてくれよ。彼女なりに悪夢に苛まれているのだから。説法なら私もとめないけどね、私たちの本来の使命というのを蔑ろにしてまで、相手を貶める行為はいくら"そこに席を置いている"トラビスさんであっても、私は言うよ」ぐっと、悪態を飲み込むトラビスの姿は、本来神父という立場から考えれば珍しいものではあった。相手に対し罵倒する行為など大罪に起因する罪に近い禁忌である。感情をコントロールできるようになったから地位を手に入れているはずなのに、それでも人の心は存在しているのだから仕方ない。
トラビスは深く息を吸い気持ちを落ち着けると、右手を差し出して空いている席への着座を促した。コートを受取るような紳士的な動きは一切なく、視線は強くなっていた。「……それで?」珍しく不機嫌なトラビスに、スティーヴが驚いた表情を一瞬見せたが、割り切っているのは事実らしく、話をすぐに進めた。「元凶になるのは、リチャード・エドワーズ・デュリが覇権争いに加わろうとしたところからが問題なんだ。アラスカで行われている事はトラビスもよく知っているだろう? 人体実験の果てに何があるのか、人権屋の餌にならない様に巧妙に隠しているけどさ。狂気の産物を作り出そうとして、出来た合成生物を喜んで飼いならしているんだから」
聞いたことない言葉があったため、トラビスは眉をひそめた。「合成獣なんて聞いたことがないけれどね?」静かに聞いていたローラが口を挟んだ。視線はトラビスに合わせず、奥にある寮への扉を少し気にしていた。「あの人がやっているのは掛け合わせよ。メンデルと同じ交配し育成させるというもの。強い母体が必要で"人工的"にその母体を作るために、《羽付き》の核を"分散"させて埋め込んでいるのよ。……悍ましいという言葉しかないわ」苦々しい口調から本当に嫌がっているというのは分かったが、トラビスが同情する気は一切起きなかった。「掛け合わせで作られる"物"は二つよ。一つが《羽付き》同士……正確には《羽付き》のまがいものだけれど、それらによって新たな核を持つ羽付きを作ろうとしている。……ほとんど孤児の様な身よりのない子供たちが餌食よ。肉体的にも脆弱な彼らの行為を見るのも悲しいものだわ」
うっと、ローラは口を押えて嘔吐を飲み込んだ。想像するに酷い状況であるのは分かった。銃でも突きつけられ――年端もいかない子供たちが交わる様を見させられたのだろう。リチャードにしてはなかなかパンチの効いた趣味だな、とトラビスは想像しながら鼻で笑った。「もう一つは?」トラビスが促すと、ローラは言いよどんだ。その表情が蒼白であるのは、元々色白の所為なのか、暗い明かりの所為なのかは分からなかった。仮に見た物を思い返して青くなっていると弁明する様な事があれば、トラビスは「ざまあみろ」とマイケルに代わって笑ってやってもよかった。その程度の心の弱さで、よくも息子を餌食にしようとする所業ができたのだと罵ってやりたかった。
「もう一つは、《羽付き》でない者と《羽付き》とで核を作りだせるか、っていうものよ。生まれた半端な物体は……彼らの餌にするためにミンチにされるのをみたけれども……」目を伏せ、ローラが何を思い描いたのか。「それで、その半端な者が合成獣という事か」ええ、とローラは頷く。「知能もなく、飢餓感に苛まれるあれらは、ただの獣だもの。餌の豚に食らいつく様や、職員へ歯をむき出しにする姿は、恐怖でしかないわ。……全身の毛は薄く、のっぺりとしているのに目は大きい。核の影響なのだろうけれども、体中に瘤の様なものができていてね、体も、顔も、酷いのよ。皮膚病の様にも見えるのに、爛々とする目は常に充血して赤く、ぎらぎらとしているのよ。肋骨の浮き出た体は全体的に細いのに、成長が早い所為で身長高く、常に餌を探しているの。たまに共食いしているのすら見るわ」
「そいつらを猟犬として使うと? この街で? 戦争ではなく、ただの"抗争"に?」「あの人は、そうすると思うわ。特にサルヴァトーレには煮え湯を伸ばされているから……。止められるわけないわ」トラビスは不機嫌に腕を組んだ。その意味をスティーヴが理解した様で、代わりに口を開いた。「戦争ならいざしらず、無差別に殺す、っていう獣を街に放つ危険性をいくら、頭のない……といわれるリチャードだってわかっていることだろう。獣が溢れたら、焦土を作り出すだけで、稼ぐ場所すらなくなってしまうよ」しかし、ローラは静々と首を横に振った。「あの人が、目先の事以外考えていないのは事実よ。意趣返しが出来ればそれでいい、というのが彼の本音なのよ。獣たちはもう檻で準備万端だもの、100、200という数なのかしらね。どのくらいいるのすら想像つかないわ。少しでも思慮深さがあるのであれば……メアリー・メロに手を出す事なんてしやしなかったでしょうよ。その上、息子が命を狙わない様にしている事すらも気づいていいはずなのにね……」
木製の扉はたやすく開かれた。大きな音は立てないが、軋んだ音はうるさい。寝ている子供たちが起きないか、スティーヴが戦々恐々としたが、トラビスは気にしなかった。音を立てた張本人であるマイケルは、悠然とローラの前の席にやってくると、投げ出す様に椅子を引くと、どかりと腰を下ろした。偉そうに足を組み、蔑んだ瞳をローラに向けた。「……僕が聞くのは一つだけだ。それ以外で口はききたくないね。――メアリーは何処にいる?」
ローラは目をぱちくりと大きく瞬かせた。意外に思ったのは彼女だけではなく、トラビスも驚いていた。「なんだよ」と口をへの字にしたマイケルはトラビスをにらんだ。「てっきり仕返しをするんだろうとおもったけれどね。それに――エヴァンジェリンさんの事も気にするんだろうかとも……」スティーヴが二人に代わって胸の内を投げた。はん、と鼻を鳴らして、マイケルは腕を組んで渋面になった。「腹立たしいけどね、あの野郎とやり合ってもなんの得にならないじゃない。僕が今まで放置していたのもそれだけだよ。頭から言われたんなら別だけど、そうじゃないなら手を出す事はないね。勝手に野垂れ死ねばいいと思う。僕の個人的な恨みつらみなんて、暴力を振るうには意味ないよ。"サニー"の恨みはあるだろうけど……それはあの野郎とは別さ。ヴァネッサさえどうにかできればいいから」
イライラしているらしくマイケルは組んだ足を細かくゆすっている。目の前にいる母親に対して反抗期であったとしても殺意すら感じる冷めた視線を向けるマイケルに、ローラは視線を合わせる事すらしなかった。トラビスもどう言うべきかは悩んでいた。マイケルの心境は痛い程知っていたし、それに加担する事についてなんの臆面もなかった。マイケルがリチャードとローラに復讐をしたい、としても不思議には思わなかったが、それでも、不干渉を貫こうとする理由も察しがついた。
マイケル・キーソン・フォスターは死んでいた。ヴァネッサの手で、目の前に愛犬の躯を手向けられて。トラビスは当時のことを思い返さない日はない。孤児院にいる子供たちは色々不遇な状況であっただろうが、その中でも一番残酷で、残忍なものだったマイケルの出来事は、忘れようとしても忘れられないものだった。
血と硝煙の臭いに腐肉の鼻を劈く様な臭いは、屠畜場のゴミ置き場より強烈で、脳内にすら直接入り込むドロリとした空気は、吐き気を催促するように食堂を伝って肺全体に広がった。胃が強烈な臭いに反応して急激に収縮し、あまりに不衛生な環境であるため、肺が呼吸を拒否。横隔膜が痙攣する様に感じ、口の中に酸っぱい味が広がるが、自らの吐しゃ物をぶちまけるわけにもいかず、口の中に押し込んだ。耳殻に響き渡るハエの軍団の耳障りな音が、大量のドップラー効果を伴って輪唱される。むず痒い振動は耳を、脳を存分に揺さぶり、体中にハエの大群が舐めてきている様な気持ち悪さを持たせ、体中がかゆくなった。白色のウジ虫が犬の死骸に群がり、くぼんだ瞳から噴水の如くあふれ出ていた。苦しみを与えるために刻まれ皮膚は、元の形状に戻る事が叶わず、階段状に層を作り、凝固した血の黒い塊が、飴細工の様に蓋をしていた。
目の前に横たわる少年の姿をはじめ見たとき、トラビスは神に祈らずにはいられなかった。抉り取られた眼球が死を冒涜する様に金串に刺され、まるでバーベキューを楽しむ様に彼の口の中に突っ込まれていた。視神経を含んだピンク色の肉塊に蔓延るウジの姿が強烈で、引っ張り出そうとしたところで、ずるりと溶け落ちた。コンクリートに広がる黄色とも黒ともつかぬ液体は、蔓延る蟲の餌食となって、瞬く間に消えていく。耳から湧き出るハエの姿は、少年の脳を食い物にした虫たちの姿であり、まさしく蠅の王を呼び覚ました狂気の産物といえた。死者をいたわる気概一つなく、皮膚に何重にも刻まれた鞭による殴打、裂傷痕は、張り裂けた肉片をそのまま、肩甲骨や、大腿骨をむき出して悲惨さを増長させていた。服部に刺された気色悪いナイフは、内臓を切り刻むために用いられたもので、刺したまま何度も腹の中を掻きまわしたらしく、放射状に線状の傷跡がついていた。
そして何より、子犬と犬と少年の体はすべて縫われていた。友という言葉を嘲笑する様に、開口された腹の皮膚を虫ピンの様な金串で押さえつけられ、雑多な糸で縫い付けられている。その姿を何と形容すればいいのか知識をトラビスには持ち合わせていなかった。悪魔の所業というのであれば、納得が出来たが、まぎれもなく人の手で行われた行為だ。ぞんざいな扱いを受けている骸に対して、動物に対する尊厳も、子供に対する友愛すらも一片も排除された鬼畜の所業は、トラビスのなかにある種の恐怖を植え付けたのは事実だった。彼の知るマフィアといわれる者たちであっても、慈悲をもって殺すというのに。
しかし、その死体は笑ったのだ。ブリキのおもちゃの様にたどたどしい動きで起き上がり、前に転がる躯を抱き、天に向かって笑ったのだ。骸骨と見まごう程にやせ細った肉体と、自らの肉体から滴る腐液をまき散らしながら、高らかに笑った。醜き姿を呪うかのように、矮小な自分を嘲るかのように、不幸な自身を嗤う様に、自らの手の打ちにいる友と嘆く様に。トラビスには笑う理由は分からぬとも、何故生き返ったのか、その理由は分かっていた。
《羽》を見る事ができるトラビスには、当然《羽付き》の核たる結晶をも見極める事はできる。埋め込まれたのだ。それも歪な形で。粉末状になった核は、彼の腐肉を母体として、全身に経路を作り上げていた。中心となる結晶はなく、残滓として"不安定"な物になる。しかも、犬と共にだ。次第に定着した核は、彼を異形の者へと変えたのだ。
そうにまでなって、マイケルがリチャードとの不干渉を貫いたのは一つ。メアリーの生存が担保されていたからだ。
今ですら、その協定は残っているだろう。
「彼女は、――」ローラは言いよどみ、一度息を飲んだ。「ヴァネッサの手の内よ。かつてフォスターが所有していた廃倉庫の一つにいる。詳しい場所は……、この通り」地図を切り取った紙片を取り出し、ローラは机の上にひらりと乗せた。言葉を告げてから、沈黙が流れた。トラビスも、スティーヴも理解した。その先にある末路を。「また殺すのか」トラビスの重い言葉のとおりの予想を、ローラは無言で肯定した。
静かになった空間を包む空気の温度が下がった、電気が走った様にピリリと一度、二度と下がっていく。
マイケルが立ち上がった。何をするか理解したがトラビスには止める気はなかった。スティーヴがついでといわんばかりにマイケルが抜ける前に聞いた。「エヴァンジェリンさんは?」「……キーガンが用意しているわ。どちらを取るのか、それを見たいのでしょう。ペンシルベニア州の潰れた養鶏場にいるわ。おそらく、――同じ時刻に切り刻むのでしょうね。何方も救えないといいたいのかも」
トラビスは一言。「マイケル。メアリーの方へ行け。私がエヴァを守ろう」「――できるの? 僕の時も死んだ後だったろ」鋭い指摘にトラビスは苦笑した。「次は間に合わせるさ。彼女は教会の庇護下にあるのだからね、そうだろう? スティーヴ」やれやれと肩を竦めて、スティーヴは「あぁ」とだけ頷いた。
ローラが立ち上がる。その姿は幽鬼の様に靜で大人しい物だった。居心地の悪い室内から直ぐにでも外にでて新鮮な空気にでも当たりたいのだろう。マイケルに向けていなかった視線を初めて向けて「元気そうでなによりよ。人ではないようだけれど……」一言。随分な言い方で心配などという事は露も感じさせない。当然マイケルも理解はしているから、「殺した本人がよく言えたもんだよ」仏頂面になったマイケルは、彼女が動くよりも早く、扉から風の様に外へと出て行った。
マイケルの忙しない姿を見て、「忙しないのね」と一言。この親にしてあの子がありだ、とトラビスは思いつつもマイケルに肩入れをしている彼は、「……、時折、君は相当図太いんだとは思えて仕方がないよ」と苦言を呈した。




