7. -町長-
食事の準備が出来たということで部屋にレイラ達を呼びに来たアンナさんに2人を任せて俺は逃げるように宿を出た。
悲しくないわけないんだよな。
湖から町に着くまでもフェイトを励ます様に明るく振る舞ってはいたけど、レイラも大切な仲間を失ったんだ。
それに"守れなかった"って・・・パーティリーダーとしての責任を感じてるんだよな。
本当なら慰めの言葉でも掛けてあげるべきだったんだろうけど出来なかった。
違うとわかっているのにレイラを見ているとリーフが泣いてるように見えてしまって・・・俺もまだあの時の事を・・・リーフ。
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翌朝、俺はレイラとフェイトに会うため再びアンナさんの宿屋に向かった。
レイラ達と一緒に町長のジゼルさんの話を聞きに行く約束をしていたからだ。
でも、昨日の今日だしまだ2人とも休んでいるかもしれないな。
そんな事を考えながら宿屋に入るとアンナさんが受付の掃除をしていた。
「アンナさん 昨日はどうもありがとうございました」
「あら、早いねアレク。昨日の2人かい?」
「はい。ジゼルさんのところに一緒に行く約束をしてるんですよ」
「そうかい・・・まぁ面白い話ってわけじゃないんだろうね。
レイラさんは起きて庭にいるよ。フェイトさんの方はまだ本調子じゃないみたいだから寝てるみたいだね。休ませてあげた方がいいんじゃないかい?」
「確かにそうですね。ありがとうございます。庭に行ってみます」
フェイトはヒールを掛けたとはいえ死にかけたんだもんな。
確かに無理させちゃまずいな。
「あ、アレク・・・」
「レイラ?どうかしたのか?」
庭に着くとテラスの椅子にレイラが座っていた。
そして、俺を見るなり少し顔を赤くし恥ずかしそうに話しかけてきた。
「いや、、、昨日はその・・・見苦しいところ見せたな」
「見苦しいとか無いよ。気持ちは・・・俺も仲間を失ったから・・・わかる」
「そう・・・だよな」
気まずい・・・それに何だかしんみりしちゃったな。
少し話題変えないと。
「あ、そ そうだ。朝食はもう食べたんだよな?フェイトは休んでるみたいだし町長のところ行くのは俺とレイラだけでいいか?」
「うん。大丈夫だよ。フェイトは疲れが出たみたいだし休ませてあげたいかな」
「だな。でもそういうレイラだって昨日は無理してただろ?町長のところから帰ったら少し休めよ」
「ありがと。優しいんだねアレクは♪」
その後、俺とレイラはアンナさんフェイトの事をお願いして、町長のジゼルさんの家へと向かった。
少し気分を持ち直したのか一緒に歩いている間は笑顔も見ることも出来た。
やっぱり彼女は笑顔の方が似合う。
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ジゼルさんの家に到着し呼び鈴を鳴らすと程なくしてジゼルさんが出てきた。
「ジゼルさんおはようございます」
「あぁおはようアレク。それにレイラさん」
「おはようございます。昨日は色々とお世話になりました」
「いやいや困っているときはお互い様だよ」
そう言ってジゼルさんは俺達を応接室に案内し椅子に座るよう促した。
町長の家は町の集会場も兼ねていて
「それで話って?」
「アレクよ。そう慌てるな。まずはレイラさんに話を聞きたい」
「私に?」
「うむ。レイラさん達を襲ったのは黒いローブの男とその配下の魔獣ということで間違いは無いんだね?」
「はい。私達は中央のアースフィア王国へ向かう商隊の護衛をしていたのですが、あの湖のほとりで休息をとっていたんです。そこで急にあいつらが・・・」
「ふむ。そして黒いローブの男は森の中の洞窟へ入っていったんだったね」
「はい。私達に攻撃をした後。洞窟内で何があったかまではわかりませんが、洞窟から巨大な土煙と黒い光が上がったのは見ました」
「あ、土煙なら湖のほとりで俺も見たな」
「そうか・・・・」
昨日もだったけど、神妙な顔をして・・・どうしたんだジゼルさんは。
あの洞窟には何があったんだ?
「アレク。レイラさん。2人は黒いローブの事はどれくらい知っている?」
「意思を持った人型の魔獣で、数年前から村や町を幾つも消滅させているってことくらいしか・・・後は各国から討伐依頼が出ているということでしょうか」
その話は俺も知っている。
各国の勇者クラスが討伐に乗り出しているってのに未だ足取りすらつかめてないんだよな。
「そうだな。アレク。お前はどうだ?」
「・・・俺の知っている情報も同じかな。
後は・・・俺にとっては故郷と大切な仲間を奪った敵だよ」
「そうだったな・・・」
未だにあいつの事を考えると昔の事を思い出してしまう。
忘れることは出来ないさ。
「それよりも、あの洞窟に何があったんですか?
ただの炭鉱跡地ではなかったんですか?」
「・・・炭鉱跡地であることは間違いないが・・・あの洞窟は封印の洞窟だ」
「「封印の洞窟?」」
なんだそれ?前に聞いたときは炭鉱跡地としか言ってなかったじゃないか。
それに"封印"って何を?
「このことは一部の者しか知らない機密事項だ」
「・・・いいんですか?俺達にそんなことを話して」
「まぁお前さん達も無関係とは言えないからな」
「・・・・」
「あの洞窟にはかつて女神ミラが倒したとされた邪神の一部が封印されておった。
2人も創世記は読んだことがあるだろ?」
「女神ミラが大地を創造した話でしたよね」
「それで異界から来た邪神を倒して封印したっていう・・・」
昔、孤児院に居た頃に神父様に読まされたんだよな。
俺は本とか読むの面倒だったけどリーフは楽しそうに読んでたな。
でも、まさかその邪神?
「あれって神話というか空想上の話じゃないんですか?」
「・・・わしも昔はそう思っていた」
「"思っていた"ということは違かったと?」
「あぁ さっきも話した通り、あの洞窟は元々炭鉱として掘削されていた。
だが、掘削している最中に別の洞窟なのか広い空間に行き着いてな」
「・・・」
「そこにあったのさ。幾重にも結界が施された巨大な瘴気の塊が」
「それが邪神の?」
「そうだ。当時わしはまだ先代町長の補佐だったんだが、町長の指示ですぐに王都に報告に向かった。そして調査が行われたのち王都の指示のもとであの炭鉱は廃坑とされ入り口も破邪の結界が張られた」
それじゃ、あの黒いローブの男はその結界や封印を解くために洞窟に魔力波を?
「わしも封印の事を知って色々と調べたんだが、今から約15年近く前に西の王国ウエスティリアで最初の封印が解かれたそうだ」
「15年前って!じゃぁウエスティリアの森林地帯が瘴気に汚染されたのは!」
「そうだ。そしてその6年後に南のサザン帝国でも封印は解かれている」
確かにサザンでも大規模な瘴気汚染が発生したって話題になっていたよな。
「そして、3年前に北のノーザン王国の封印も解かれた」
「3年前って・・・もしかしてアジュールも?俺達が向かったあの洞窟も!」
「おそらくな・・・」