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ある冒険者たちの物語  作者: ひろきち
第1章 僕は君を守りたかった
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5. -魔導士フェイト-

商隊が襲われた湖の畔に戻った俺達は遺体を弔っていた。


洞窟を調査したい気持ちもあったけど、軽症とはいえレイラさんも怪我を負っていたし俺達は一旦町に戻ることにした。

ただ、"仲間を弔いたい"というレイラさんの頼みを聞いて畔に立ち寄った。

俺も・・・レイラさんの気持ちはわかるからな。


「・・・」

「・・・」


無言で穴を掘り遺体を埋めてゆく。

辛いよな。

俺はともかく、一緒に活動していたパーティメンバや商隊だ・・・それにどの遺体も損傷が激しくより悲しみを誘う。


「この子は外傷が少ないな・・・」


そう思いうつぶせに倒れた魔導士のローブを着た女性を抱き上げようとしたところわずかに腕が動いた。


「・・・!!?」


もしかして、まだ生きてる?


「レイラさん!!この人まだ息がある!」

「え!?」


慌てて近づいてきたレイラさんは俺から女性を奪い取る様に抱きかかえるとその顔を見て涙声でその名を呼んだ。


「フェイト!生きてるのか!フェイト!」

「レイラさん落ち着いて!息はあっても無茶させちゃ駄目だ!」


そう言いながら俺はフェイト?という女性に手をかざし回復呪文を唱えた。


「ヒール」


俺の手からあたたかな光がフェイトを包み込む。

俺のヒールでも痛みを和らげることくらいは出来るはずだ。


しばらくヒールを掛けているとフェイトと呼ばれていた女性が目を開いた。


「私は・・・生きてる?」

「フェイト!!良かった。良かったよぉ~」

「ちょ!団長苦しい!!でもどうして。私は魔獣に攻撃されて・・・」


・・・っていうか団長ってやっぱりレイラさんの事なのか。

てっきり男。それもむさいおっさんかと思ってた。

雰囲気からしてこの子はレイラさんのパーティメンバーなんだろな。

・・・でもどうしてこの子は生き残れたんだ?

と俺はフェイトと呼ばれた女性の胸元のネックレスに気が付いた。


「身代わりのアミュレット・・・・か」

「「え?」」


レイラさんとフェイトさんが俺の方を向く。


「多分、あんたは魔獣の攻撃で命を失うレベルの攻撃を受けて気を失ったんだろう。ただ、そのアミュレットが身代わりになってくれたんだと思う」

「・・・」


俺がネックレスを指さすとフェイトさんはネックレスを手に取りひびの入った宝珠を見つめた。


「これ・・・母さんの形見だったんです。そんな効果があるなんて知りませんでしたけど・・・母さんが私を守ってくれたんですね」

「そうかも・・・しれないな」





--------------------------------

その後俺達は体調が万全でないフェイトさんを俺が所謂お姫様抱っこ的な形で抱きかかえる形で町に向かって歩き出した。

最初はかなり恥ずかしがっていたけど歩けるほどには回復もしていなかったこともあり・・・渋々受け入れてくれた。


ちなみに呼び捨てで構わないということだったので、今後はレイラ、フェイトと呼ばせてもらうことになった。


その後、俺は街道を歩きながらレイラ達パーティの事を聞いた。

王都の冒険者ギルドに所属するBランクパーティであること。

レイラをリーダーとした5人編成のパーティで先の戦いで2人の仲間を失ったこと。

フェイトはレイラの従妹で本当の妹の様に可愛がっていたこと。

そして・・・実は自分は貴族の令嬢だけど政略結婚させられそうになって逃げだし冒険者になったということ(ほんとうかよ・・・)

ちなみに歳はレイラが18歳でフェイトは16歳だそうだ。

そして村に救援を求めてきたシャザムは24歳との事だ。

老け顔だったのでもっと年上かと思ってたわ・・・。


・・・正直元貴族って話は眉唾な気もしたし、本当なら俺になんか話をしちゃまずいんじゃと思ったけど、打算ない感じで話をしてくるレイラには好感が持てた。

顔はリーフに似ているけど性格や雰囲気はだいぶ違うな。


そんなことを思って歩いているうちに町に到着。

陽も傾き始め辺りは薄暗くなってきている。


門に近付くと俺の事を心配したのか、魔獣の襲撃に備えてか冒険者や衛兵が多数集まっていた。

そして、その人々の中から俺に気が付いたのかジークが駆け寄ってきた。

あの様子だと町は襲われなかったみたいだな。


「アレク!馬鹿野郎無茶しやがって」

「悪い。心配かけたな」


そして、衛兵たちの集団の中に居た町長のジゼルさんも俺に近付き話しかけてきた。


「無事だったかアレク」

「はい。心配おかけしました。町は大丈夫だったみたいですね。

 あ、こちらは冒険者のレイラとフェイトです。他は・・・残念ながら」

「そうか・・・。レイラさん、フェイトさん。

 お2人共怪我もしているでしょうし、しばらく町で療養して行ってください。

 王都のギルドには早馬を向かわせて状況は伝えます」

「お心遣い感謝します。助かります」


ジゼルさんの提案に礼を述べるレイラ。

流石手際が良いな。


「それよりアレク・・・やはり奴だったのか?」

「・・・俺が到着したときには既にいませんでしたが、話を聞いた限り間違いないです」

「そうか・・・奴が現れたのか」


ジゼルさんとは冒険者時代からの付き合いでアジュールの事や俺が追っていた黒いローブの男の事も知っている。

だからこそ奴(黒いローブの男)の恐ろしさも知っている。


「あ、ジゼルさん。そういえば湖の先にある洞窟について何かご存知ですか?

 確か炭鉱跡地だったと思うんですが、奴はあそこで何かした後、消えたらしいんです」

「・・・洞窟か」


洞窟という言葉にジゼルさんが思いつめた顔をしている。

どうしたんだ急に?

あの洞窟に何かあるのか?


「はい。やっぱりあの洞窟には何かあるったんですか?」

「あぁ・・・アレクそれにレイラさんとフェイトさんだったか。

 明日家に来て欲しい。少し話したいことがある」

「はい わかりました」


なんだろう?あらたまって。

雰囲気的に楽しい話ではなさそうだけど。


その後、俺はレイラとフェイトを連れシャザムやユズハが居るであろう教会へと向かった。

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