6. 初勝利②
「やるじゃねぇか兄ちゃん!!」
「はは まぁ勝ててよかったです」
興奮した様子で御者のおっちゃんが俺に近づいてきた。
その後ろには馬車の乗客も居る。
っていうか逃げてなかったのか?
もしかした俺がやられてたら危なかった?
「逃げてなかったんですか?」
「あぁ、この姉ちゃ・・いや神官様がな、下手に森の奥に入ると危険だし馬車に結界を張るからって」
「結界?」
「そ。忘れたの?私これでも王都の神官よ。結界位作れるわよ」
確かにサラは自分の事を中間管理職とか言ってたよな。
一緒に居ると調子のいい姉ちゃんった感じだけど、もしかしたら結構上位の神官なのかな?それともこの世界では神官なら誰でも結界とか張れちゃうもんなのか?
「まぁそれより護衛のお仕事お疲れ様。詰めは甘かったけど魔法と剣の戦い中々良かったわよ。あれだけ出来れば冒険者としても何とかなりそうね」
「あ、あぁ。ありがとう。最後は正直魔法で追い込むか剣で切りかかるか悩んだんだけど声かけてくれて助かったよ」
本当あの場面で悩んでたら反撃食らってたかもしれないし、戦いは一瞬の判断の迷いが命取りなんだな。
「ふふ。まぁあの場面なら魔法でもとどめはさせたと思うけど剣を使ってもらいたくてね」
「剣を?」
「ふふ。切れ味良かったでしょ?出がけに切れ味をアップするシャープネスの付与魔法をかけておいたのよ。折角だから使ってるとこ見たくて♪」
「は はぁ・・・そうなんだ」
「あ、後2,3日は効果残ると思うから」
セール品の割に切れ味が良いとは思ったけど付与魔法が掛かってたのか。
っていうか、人の所有者に勝手に・・・まぁ助かったけど先に言ってくれよな。
「まぁ・・・その助かったよ。ありがとな」
「ふふ 素直でよろしい♪とにかく初勝利おめでとうね」
そう言いながら微笑むサラ。
ほんと、口調がいつも上から目線で俺のことを子供扱いしてくるのはちょっとムカつくけど・・・ちょっと好みのタイプではあるんだよな。
それに何だかんだとサラには世話になった。
この間は急にお別れってことで何も考えられなくなってたけど王都に到着したら今後こそ本当にお別れのはずだ。
・・・何かお礼がしたいな。
ギルドからは前金として報酬の半分は貰っているし、この世界で稼いだ初のお金で何かプレゼントとかしてみるか?
確か王都に着くまで立ち寄る町がいくつかあるとか言ってたよな。
でも・・・女性にプレゼントとか人生初じゃないか俺。
ボッチで独身のアラサー男子だったもんな。
中々悩ましいな。
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その後、再出発した俺たちは魔獣に遭遇することもなく、無事に森を抜けることが出来た。
まぁ本来はおっちゃんが言っていた通り街道には結界が張られているから魔獣が出る方が異常なんだよな。
ちなみに魔獣の件はサラが上層部に報告するそうだ。
結界に綻びがあったのかもしれないとの事だし場合によっては結界の修繕も必要らしい。
道路の修繕する公団みたいなのも教会の仕事なんだろうか?
あ、それから魔獣の解体を初めて体験した。
討伐した魔獣はそのままにしておくと瘴気溜まりになってしまったり他の魔獣を引き寄せることになるから素材となるパーツを取った後は焼却するか土に埋めるなどの処理が必要とのこと。
前に練習で倒したウサギもどきは特に素材となるパーツもなかったんで焼却しちまったんだよな。
今回のブラッドウルフは大型の魔獣で牙や爪が武具や魔道具の素材になるということもありそれらを剥ぎ取った後、サラの魔法で焼却を行った。
サラはあんまり解体は好きじゃないとは言っていたけど確かに気持ちいいものじゃないな。
指示されながらナイフでさばいたけど、正直何度か吐きそうになった。
魔獣って言っても内臓もあるし血も出るし。。。
しかし、冒険者として生計をたてるならこれも慣れないとならないんだよな。
森を抜けた後の旅は凄く順調だった。
俺は再びおっちゃんと他愛もない会話をしながらノンビリとした時間を過ごし夕刻前には今日の宿泊休憩ポイントとされている町に到着出来た。
魔獣との戦いがあったためか少し遅れての到着だったけど、おっちゃん曰く誤差の範囲なんだそうな。
しかし、おっちゃんから休憩所と聞いていたから、雨風をしのげるような小屋があるくらいなのかと思っていたけど、意外にもしっかりした作りの宿屋や商店、民家が複数軒あり休憩所というよりも集落的な場所だった。
「宿屋だけかと思ってたんですが、結構広いんですね」
「あぁ。休憩ポイントとはいったけど随分発展してるし村みたいなもんだな」
馬を休ませる必要があるから要所にこの規模の集落があるんだそうな。
まぁそうだよな馬だって生き物だしそんな長時間走らせるわけにはいかないし。
客の方もずっと馬車に乗ってれば疲れるだろうし高速道路のパーキングエリアみたいなもんなのかな?




