3. 冒険者として
サラの教育を受けるようになって早いもので1か月が経過した。
あ、月の呼び方は違ったけど日付や月の概念はこの世界にもあるそうだ。
この1か月、俺はサラから小さい子供が勉強するような初歩の言語学習指導や、この世界の歴史や地理、各国の情勢、法律、通貨や食事など様々な事を学んだ。
可愛い顔して結構サラはスパルタだったけど、おかげで日常会話レベルなら村人と会話が出来る様になった。
そして・・・俺への教育も一段落したということでサラは王都の神殿に帰ることが決まった。
「で・・・俺は今後どうすればいいんだ?」
「そうですねぇ。特に制限はないので好きにしていいですよ♪」
「好きに・・・って言われても」
色々と教えては貰ったけど好き勝手出来るほどのレベルには至ってない。
好きにしてと言われてもな・・・
「ですよね♪まぁしばらく暮らせる程度のお金は国から提供します。
それで当面生活しつつ今後自分で稼げるような仕事を見つけてください。
住む場所は、このままこの村に居ても良いですけど小さい村ですし、私と一緒に王都に行くことも可能です。ただ、王都は仕事は沢山ありますが物価も高いんですよね」
「一長一短だな」
随分手厚く保護してくれるんだな。
まぁずっと保護してもらうわけにもいかないんだろうけど。
でも・・・仕事か。
「なぁ前に冒険者って仕事もあるって言ってたよな?」
「冒険者ですか?はい。この村にもギルドの出張所がありますので登録は可能です。冒険者になりたいんですか?」
「決めたわけじゃないけど・・・やっぱりちょっと憧れるって言うか」
「・・・私にはその感覚はよくわかりませんが、前に指導した女性の方も冒険者になりたいとか言ってましたね」
だよな。
やっぱりファンタジーの世界に来たら憧れるよな冒険者。
剣と魔法でモンスターと戦うとか胸熱だよ。
「でも、大変ですよ冒険者って。確かにあなたは剣筋も良いですし魔法も使えますから冒険者としてやっていけるかもしれませんが・・・
ランクが低いうちは報酬も低いですし、探し物や採取など単純な依頼が常にあるわけじゃありません。それに報酬が高い討伐依頼になると死と隣り合わせですからね」
「・・・死・・・ですか。それって教会で生き返らせてくれたりは・・・」
「ふぅ。。。迷い人の方はみんな同じ事を聞くんですね。
高位の神官や聖女様でも、そんな都合いいこと出来ません」
「で ですよねぇ~」
・・・死と隣り合わせか。
それにゲームみたいにリセットも出来なければ復活も出来ない。
聖女様?は居るみたいだけど蘇生は無理なんだ・・・
まぁでも現実なら当然と言えば当然だよな。
でも・・・多分俺はあの時トラックに轢かれて一回死んでるんだ。
それなら・・・冒険者としてこの世界を謳歌するのも悪くないかもな。
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名残惜しい気持ちを残しつつサラと別れた後、俺は早速ギルドに出向いて冒険者登録を行った。
そして配布されたカードを見て思わずニンマリしてしまった。
この世界で初めて手に入れた身分証。
そしてそこに刻まれたランクDの文字。
こういうのを貰うとようやくこの世界の住人になれた気がするよな。
それに冒険者になりたての新人は大抵ランクEからスタートらしいのに俺は試験の結果ランクDと判断された。
教えてもらう事ばかりだっただけに自分のことが評価されたと思うとそれはそれで嬉しいものだ。
まぁこんなところで剣道やってた実績が役に立つとは思わなかったけど、剣士として冒険者登録もされた。
ただ、ランクDとは言っても下位ランクの冒険者であることに変わりない。
今後いい生活してくためには、沢山の依頼をクリアして早くランクを上げなくちゃだな。
そんな思いもあり、早速ギルドの受付で、受けられる依頼を聞いたところ、王都へ向かう乗合馬車護衛の仕事を紹介された。
普段は専属の護衛がいるらしいんだけど体調を崩したらしくギルドに依頼が来たらしい。
急な依頼であることと丁度ギルド所属の冒険者が出払っていたこともあり新人の俺が紹介された形だ。
普通、冒険者になったばかりの新人に振る仕事じゃないとは思うけど・・・依頼金が結構な額だったこともあり不安はあったものの初仕事として受ける事にした。
そして、翌日指定された馬車へと向かうと乗客の中に"サラ"が居た。
王都に帰るとは言っていたけど、まさかこんなすぐに再会するとは。
ちょっと嬉しい誤算だな。
「・・・まさかあなたがこの馬車の護衛とは・・・新人冒険者が護衛とか不安しかないんですけど」
「そう言うなって。Dランクで受けられる一番依頼金が高い依頼だったんだから。
それに俺とサラの仲じゃないか」
「ご 誤解されるような言い方しないでください!」
「つれないなぁ・・・」
・・・だからそんな心配そうな目で見ないでくれよ。
俺だって生活してくために必死なんだからさ。




