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ある冒険者たちの物語  作者: ひろきち
第2章 異世界転移は楽じゃない
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2. この世界で生きること

「痛っ!」

「〇v@■〇**~!!」


その後、俺は男に先ほどの石造りの建物へと連行され、鉄格子のある牢屋の様な部屋に投げ込まれた。

扱いが雑だぞと講義したいところだけど・・・言葉が通じないから抗議すら出来ない。


まてよ。

言葉が通じないってことは釈明も出来ずにこのままここに居なきゃならないのか?

いや、そもそも俺はどんな罪状なんだ?

・・・もしかしていきなり殺されたりしないだろうな?


俺が悲観しながら床に座り込み俯いていると牢屋の外からこちらに向かってくる足音が聞こえた。そしてその足音は俺の牢屋の前で止まった。

顔を上げると目の前にはやや釣り目でキツそうな顔をしているが中々の美女が俺のことを見下ろしていた。

着ている服は簡素なものだが、何処か気品がある。


と俺の頭の中に突然女性の声が響いてきた。


『大丈夫ですか?』

「え!!な何だ頭の中に?それに日本語?言葉が通じるのか?」

『落ち着いてください。私は今、あなたの脳に思念で直接語り掛けています』


何だか不思議な感じだが確かに目の前の女性の口は動いていない。

俺は牢屋の鉄格子に飛びつき、話しかけてきてくれた女性に近づき話しかけた。

傍目に見ると無表情で俺を見つめる美女と必死に語りかける俺の絵面はおかしく見えるんだろうな。

警備のおっさんも怪訝な顔して俺たちを見ている。


「わ わかったけど、どうやって会話すればいいんだ。俺は人の脳に直接話しかけるなんて芸当出来ないぞ・・・」

『特別難しいことはありません。私に話しかけることをイメージして念じればよいのです』


そうは言ってもさ。

っていうか俺の問いに応えてくれたってことは俺の言葉も理解してくれてるのか?


『一体あんたは何者なんだ。なんで俺の言葉がわかる。それにそもそもここは何処だ ってこんな感じで良いのか?』


ってこれで伝わったのか?

俺は頭の中で彼女に伝えたい言葉を思い描いた。


『はい。お見事!それで大丈夫です』

『おぉ!!通じた』


をぉ!!マジか。出来ちゃったのか!

女性の方を見るとにっこりと微笑みかけてくれた。

やべ。可愛い。モロに好みなんだけど!!


『では質問に答えます。私は神殿で女神ミラに仕える神官です。

 そしてここは女神ミラが創造したクラウド大陸にあるアースフィア王国です』


そんな国聞いたことないな。

そもそも女神が創造したとか・・・やっぱり俺の住んでる世界とはだいぶ違う。


『・・・やっぱりここは俺が住んでいた世界とは違う世界ですよね?』

『・・・おそらくそうなりますね』

『俺は何でここに来たんだ?誰かに召喚されたのか?それとも死んで転生したのか?』

『・・・わかりません。ただ、私はミラの神託を受けここに来ました』

『神託?』


何?もしかして異世界から勇者が来るとかそういう流れ?

で、俺が勇者?

・・・まさかね。


『はい。異世界より・・・』

『異世界より?』

『迷い人が来ると』

『迷い人?』


なんだそれ?勇者とかじゃないの?もしかして迷子的な?


『はい。時々異界より何らかの要因でこの世界に迷い込む方がいるのですが、私達の世界ではそれを迷い人と呼んでいます』

『・・・迷い込む』


なんだよ。それって・・・本当に迷子じゃん。


その後、俺は[サラ]と名乗る神官から色々な話を聞いた。

王都にある神殿の神官で、神託を受け王国の西の端にあるこのスフィアという村まで出向いてきたらしい。

本人曰く使い勝手のいい中間管理職的なポジションらしい。

この世界でも中間管理職ってのがあるんだなとしみじみ思った。(結構遠かったらしく愚痴も聞かされた)


そして、俺が今いるこの村は西にある王国との国境の村で、俺が居たあの草原は国境の非緩衝地帯だったらしい。

人を襲う魔獣と呼ばれる危険生物も多く住んでいるらしく無傷でこの村にたどり着けたのは結構運が良かったらしい。

ちなみに俺が歩いてきた道を逆に歩いていくと西のウエスティリア王国にたどり着くらしいけど、自分がいるこの村に来れたのは女神さまの導きなんだそうな(本当かよ・・・)


またこの世界には俺の居た世界とは異なりいわゆる魔法的なものがあり神様も実在すること。

そして、人族の他に魔族や獣人族、妖精族など、ファンタジー系のRPGの様な種族がいて、それらを襲う魔獣と呼ばれる危険生物がいるとのこと。

なんだか、絵にかいたような異世界だ。

そして、俺みたいな迷い人も結構いるらしくサラ曰く対面したときの扱いについてはすでにマニュアル化されているらしい。


そして予想はしていたけど迷い人は多いけど元の世界に戻るすべは不明というらしく、生きていくためにはこの世界に住むしかないんだそうな。


ショックと言えばショックだけど、日々流されるように会社と自宅の往復で生きていただけだし親友と呼べるほどの友達も居なければ恋人も居ない。

両親とも最近は疎遠だったし、これと言って未練と呼べるものもないんだよな。

強いて言えば見ていた連ドラとアニメの最終回が見れなかったこと位だろうか。


ということで、俺は当面の間サラに師事してこの世界の言葉や生活の基礎を学ぶこととなった。

まぁ勉強するのは面倒だけど、ここで泣き叫んだところで帰れるようになるわけでもないし、ドライかもしれないけど生きてくためには色々と覚えてくしかない。


ちなみにここまで親切だと何か裏があるんじゃないかって、捻くれた大人としては考えてしまったりもしたんだけど、サラ曰くこの世界の住人としては俺達迷い人から異世界の技術や知恵を得ることが十分な報酬になるんだそうな。

ただ、俺の場合共有できるほど技術も知恵も無いけど大丈夫なんだろうか。


ちなみにこの世界にある魔法は、適正があれば誰でも使えるらしく俺にもその適正があるらしい。

まぁ実際に使えるか使えないかは本人のやる気と努力次第なところもあるらしいけどちょっと楽しみだったりする。

だってさ、何もないところから火を出したり水を出したりとか出来るなんて凄くないか?

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