12. -決断①-
「・・・アレク。あの時お前や町に残って戦っていた者は王国の騎士団に救助されたと思うが、対応が早いとは思わなかったか?」
「え?」
あの時・・・俺は教会の前で意識を失い・・・気が付いたときはアジュールに近いアプト村の病院の中に居た。
救援に来た王都の騎士団が助けてくれたとは聞いていたけど、確かに魔獣が襲ってきた段階で王都に救援を依頼したとしても王都からアジュールに騎士団が到着するまでに数日はかかるはずだ。
言われてみれば、騎士団が村に到着したのは早すぎる。
「わしもあとから聞いた話だが、王国の情報網に黒いローブの男がアジュールの鉱山地帯で何やら怪しい行動をしているという情報があったらしくてな。
調査・討伐のため北の勇者が騎士団を率いて対応に動いていたらしいんだ」
「北の勇者が?」
「そうだ。アジュールが襲撃を受けたときはちょうどアプト村に着いたところだったそうだ」
北の勇者。
剣聖と称される王国の第3王子ジードの別名だ。そして賢者のフィラと聖女のローズ、聖騎士のラムザの4人が勇者パーティと呼ばれている。
普段は王城に詰めて有事の際に対応を行っているはずだが・・・。
それじゃギルドに入っていた洞窟の調査依頼は王国からだったのか?
「そうだったんですね」
「あぁ。勇者や騎士団がもう少し早くに到着していればな・・・」
・・・確かにもう少し勇者や騎士団が早くアジュールに到着していれば。
いや、そんなこと考えちゃだめだな。
「いや。でも騎士団のおかげで俺も助かったので・・・」
「・・・そうだったな」
騎士団の人達はリーフや神父様をはじめ襲撃で亡くなった人達も弔ってくれた。
感謝することはあっても責めることは出来ないさ。
「ジゼルさん。なんで俺やレイラにこんな話を?
"無関係とは言えない"って理由だけじゃないですよね?」
「理由か・・・」
確かに俺もレイラもあいつに仲間を殺されたし無関係じゃないかもしれないけど、この話は誰にでもしていいような内容じゃないはずだ。
俺がジゼルさんに詰め寄るとジゼルさんは俺達の目を見て静かに語りだした
「・・・ここから先の話は2人の判断に任せるが、出来ればアレク達には黒いローブの男の討伐に参加して欲しいと思っている」
「「え!?」」
討伐?ってどういうことだ?
各国の勇者クラスを中心に討伐が行われいるのに俺達みたいなのが加わったって足手まといにしかならないんじゃ。
「どういうことですか?」
「封印の事を知って色々と調べた事は話したと思うが、その中でわしはある男と知り合った。最初に封印の解かれたウエスティリア王国のキースという男だ。
彼は封印に関しての研究者でもありウエスティリアを拠点に各国と連携し仲間を集め、黒いローブの男を追い邪神復活を防ぐ手立てを探している。
わしもキースの想いに賛同し以前より協力をしているのだが、現状戦力が不足していてな」
そんな人が居るなんて初めて聞いたけど。
それに戦力が不足って国レベルで動いてるんじゃないのかよ?
「俺達よりランクが上の冒険者なんて沢山いるでしょうし、国が協力しているのなら騎士団や魔道師団から人を出せばいいんじゃないんですか?」
「もちろん各国や冒険者ギルドが協力していることは本当の事だが、ただ、強いだけでは駄目だ。2人は実際にローブの男と戦った経験を持っている。そして生還した。そのことは大きい」
・・・確かにあいつと実際に戦って、生き残った者は少ないのかもしれない。
でも、俺達は戦って勝てたわけじゃない。運良く生き残れただけだ。
「創世記によると封印の数は7つ。そして既に4つの封印が解かれ残りの封印は3つだ。残された時間も少なくなってきている」
「それで・・・俺達に?」
「そうだ。ただ、過去には勇者クラスのパーティもあいつの犠牲になっている。実際に戦った2人ならわかるかとは思うが、あいつの力は未知数だ。
無理強いをするつもりもないし、このまま普通の生活に就いても誰も責めはしない」
「・・・・」
「わしの話はこれで終わりだ。今すぐにとは言わないが検討してくれると助かる」
「わかりました」
その後は他愛もない世間話を少しして、俺とレイラは町長の家を出た。
この後は、一旦宿に戻りフェイトを連れて教会で療養中のシャザムに会いに行く予定だ。レイラも色々と話したいこともあるだろうしな。
「ねぇアレク」
「ん?」
「アレクはさ、復讐というか・・・やっぱり黒いローブの男は憎い?」
「・・・まぁな。
ただ、以前の俺は復讐する気持ちに任せて各地を探し回ったけど、結局は何の成果も出せなかった。
結局、そんな状況に苛立ちを感じてこの町に落ち着いちまったんだよな」
「・・・そっか」
ジゼルさんのいう事はもちろんわかるし、俺だって奴の事は未だに許せないけど・・・
「レイラはどうなんだ?」
「私は・・・仲間の意見も聞くけど行きたいかな。やっぱりあいつのことは許せないし・・・もしこんなことが続くのなら・・・終わらせたい」




