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ある冒険者たちの物語  作者: ひろきち
第1章 僕は君を守りたかった
11/21

10. -回想③-

「ま まて!」


アジュールの村を?だとしたらく早く村に戻らないと!


「ガルゥ!!」

「っ!!邪魔をするな!!」


村への道へと駆け出した俺の前にフェンリルが立ちふさがる。

俺は剣を構えフェンリルに切りかかるが、大きさの割にフェンリルの動きは素早く俺の剣はことごく躱されてしまう。


「くそ!それなら!これでどうだ!アイスニードル!!」


俺はフェンリルとの距離をとりつつ氷の矢を放った。

が、フェンリルは氷の矢の直撃を受けても気にすることなく俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。


「ちくしょう!ダメージなしかよ!」

「じゃあこれならどう?フレイムナックル!!」

「ってリリア!?」


俺に注意を向けていたフェンリルに倒れていたはずのリリアがフレイムナックルを放った。

胴体に直撃を受け一瞬体制を崩すもすぐにリリアと距離をとり再び臨戦態勢に入るフェンリル。


「・・・やっぱりあんまり効果ないみたいね。本当自信無くすわ・・・」

「リリア!大丈夫なのか!」


リリアも至近距離で魔力波を受けてダメージを受けたはずだ。


「あんまり・・・大丈夫とは言えないけどノンビリ寝てるわけにもいかなそうだしね」

「・・・確かにな」


リリアの顔色はあまりよくないし足元も少しふらついている。

得意の拳技を放ってはいたけど、多分立っているのも辛いはずだ。

それに対して・・・フェンリルは俺の魔法やリリアの拳技を受けたにもかかわらずダメージをあまり感じられない。


どうしたら・・・


「アレク!リリア!奴は魔法耐性が強い。通常の魔法攻撃や魔道具の技じゃ無理だ!」

「ユンハさん。でも! じゃあどうやって」


近距離で攻撃するとしても近づこうとしてもスピードが速く近づけないし遠距離攻撃は俺の魔法くらいしか・・・。


「俺が隙を作る。口の中を狙え!やつも体の内側までは魔力耐性は無い!」

「隙をって、それにどうやって・・・ってユ ユンハさん!何を」


ユンハさんは、持っていたナイフをフェンリルに投げ自分の方に気を向けさせると傍らに落ちていた俺のロングソードを拾い、ダメージの残った体に鞭打って魔獣に向かって走りだした。


「その怪我で無茶です!」

「必ず決めろよ!」


魔獣の攻撃を巧みに避けながら距離を取りタイミングを計るユンハさん。

でも怪我のせいかいつもの体の切れは無く体制を崩す。

そして、それを好機とみて大きく口を開き襲い掛かろうとするフェンリル。


「ユンハさん!!」

「引っかかったな」


ユンハさんは、自身を押し倒し大きな口を開けたフェンリルの口内に持っていた剣を突き立て口を開いた状態で固定した。


「い 今だ!アレク!!剣も長くはもたない!!」

「はい!!」


ユンハさんが作ったチャンスを無駄にはしない。

暴れるフェンリルに引き裂かれる崩れ落ちるユンハさんを見ながらも俺は魔獣にありったけの魔法を撃ち込みつつ距離を詰め、止めとばかりに至近距離で喉奥にファイヤーボールを撃ち込んだ。


「ギュワ~!!」


体内への攻撃に断末魔の咆哮を上げその場に崩れ落ちるフェンリル。


「やった・・・のか?」


ユンハさんのおかげだ。

でも・・・・


「アレク・・・ユンハもアメリも動かないの。ねぇどうして」


自身も満身創痍のリリアだが、涙を浮かべる視線の先にはフェンリルに引き裂かれ全身血だらけで横たわるユンハさんとローブの男の攻撃を胸に受け自身の流した血の中に倒れたアメリがいた。

ユンハさん・・・

アメリ・・・


「・・・リリア。今から村に戻る。あいつらはアジュールの村を狙っている」

「だ 駄目だよ・・・ねぇもう逃げようよ。みんな死んじゃうんだ私の技もあいつらには通じなかったし・・・あいつ普通じゃないよ・・・」


リリアは言いながら青白い顔をして震えている。

あの自信家のリリアがここまで怯えるなんて・・・

確かにこいつの自慢だった拳もあいつには通じなかったし、先輩冒険者として尊敬していたユンハさんやアメリも・・・

確かに俺一人が村に戻ってもどうにもならないかもしれない。

でも、あの村にはリーフやギルドのみんなが居るんだ。


「わかった。リリア。お前はここにいろ。

 今の村の戦力じゃあいつらの攻撃を凌げない。俺はみんなを助けに行く」

「で、でもアレクだって怪我してるじゃない死んじゃうよ」

「大丈夫だ俺は死なない。まともにやりあっても俺じゃあいつらには勝てないし皆を誘導したら適当に逃げるよ。俺の逃げ足の速さは知ってるだろ♪」

「で でも・・・」

「それにあの村は俺の育った村だ。一人でも多くの人を助けたい」

「・・・・・」


そうだ。

俺が冒険者になったのは、元々は村のみんなをリーフや大切な人達をを守るためだ。全員は無理でも一人でも多くの人を助けたい。


「・・・・わかった。絶対戻って来てね」

「あぁ」


俺は、リリアとユンハ達の周りに簡易な魔獣避けの結界を張った。

気休めくらいにしかならないかもしれないけどレベルの低い魔獣程度ならしのげるはずだ。

今のリリアはおそらく戦えない・・・


「ユンハさんとアメリを頼む・・・」

「うん・・・」


俺は動かなくなった仲間をリリアに託し村へと急いだ。


"頼む・・・間に合ってくれ"

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