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ある冒険者たちの物語  作者: ひろきち
第1章 僕は君を守りたかった
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9. -回想②-

「今の魔法はあいつが?」

「だね。まぁあんまり歓迎されている様には見えないよね」


俺の横で攻撃態勢を取りながらリリアが答えた。


「気をつけろ。今の魔法・・・かなり高位の術式だ。

 それにあいつの横に居るのは・・・」

「はい。フェンリル・・・ですね。それも2頭」


ローブの男の左右には瘴気を纏い魔獣化したフェンリルが男を守るように待機している。

俺はまだ戦ったことが無い魔獣だけど間違いなく強敵なはずだ。

それにあのローブの男は、"前の冒険者"って言ったな・・・もしかしてメルト達は既にあいつらに?


「良くわからないけど今の攻撃が私たちを狙ってたのは確実だよ!

 とりあえず私が前に出るからアレクはユンハの治療をお願い!」

「あぁわかった。リリアも無茶はするなよ」

「ふん!誰に言ってるのさ。アメリ援護頼むよ!」

「了解!」


そう言いながらローブの男と魔獣へと向かい走り出すリリア。


今日はパーティの回復師であるリーフが居ないから治癒魔法を使えるのは俺だけだ。早くリリア達の支援にまわらないとあいつらでもあの相手では危険だ。

それにローブの男もさっきの魔法からしてかなりの手練れのはず。


俺はユンハさんに駆け寄り傷口にポーションを振りかけつつ治癒魔法を施した。

これで回復スピードが少しは上がるはず。


「ユンハさん大丈夫ですか!」

「あぁ何とかな。それよりあいつらはかなり危険だ。手足を動かせるレベルでいい早く回復を頼む」

「はい!」


俺がユンハさんの回復を始めた頃、アメリは杖を掲げローブの男と魔獣に向けて火球を放っていた。


「火の精霊よ!力を貸して!ファイヤーランス!!」


アメリの呪文に合わせ幾つもの炎の槍がローブの男と魔獣に放たれる。

初級の呪文で単体の攻撃力はそれ程高い魔法ではないけど速射が出来るし熟練度が上がればそれだけ威力も上がる。

もちろんアメリのファイヤーランスは並みの魔法使いが使う火魔法よりもはるかに高い威力を有している。

そして、魔法の直撃に一瞬意識が向いた相手にリリアが渾身の一撃を叩きこむ。


「これで決める!フレイムナックル!!」


炎に包まれたリリアの拳がローブの男に迫る。

リリア自身は魔法が苦手でほとんど使うことは出来ないけど身に着けているナックルに炎系の魔力が付与されているため微力な魔力を送ることでも発動するようになっている。

いわゆる魔道具という奴だ。

あの攻撃は並みの敵なら一撃で粉砕する。


「なっ!?」

「瘴気の壁?」


が、リリアの拳は男が放った瘴気の壁によって阻まれた。

そして攻撃直後の無防備なリリアとフォローに入ろうとしたアメリにローブの男は無詠唱で魔力波を放った。


「「きゃぁ!」」


魔力波を受けたリリアとアメリは後方に弾き飛ばされその場に倒れこんだ。

リリアもアメリも上級ランクに分類されるランクBの冒険者だ。

それを一瞬の攻防で無力化してしまった。


「嘘・・・だろ」


フレイムナックルはリリアの最大級の技である。

多分最初から決めに行ったんだ。

それを防いだ・・・それも瘴気の壁で。

もしかしてアメリの魔法もあの壁が防いだのか?


・・・考えたくはないけどあのローブの男も魔獣なのか?

でも・・・あいつ俺達と同じ言語でしゃべってたぞ?

瘴気に取り込まれずに意思を持って行動してるって言うのか?


「アレク!俺の回復はもう大丈夫だ!リリアやアメリの援護を!あの男はヤバいぞ!」

「はい!」


一瞬呆けてしまっていた俺をユンハさんが現実に引き戻してくれた。

確かにこのままじゃ2人が危ない。


アメリの火属性の魔法は奴に通じなかった。

だとするとアメリの火力に遠く及ばない俺の魔法じゃ歯がたたない。


それなら・・・俺は自身に攻撃力アップとスピードアップのバフをかけると同時に剣に冷気をまとわせ一気にローブの男との距離を詰め切りかかった。


「くそっ」


わずかにローブを切り裂くことは出来たが、男は俺の渾身の一撃も余裕でかわした。


「ほぉ先程の武闘家に魔導士も中々の火力でしたが今度は魔法剣士ですか。中々楽しませてくれるパーティですね」

「余裕でかわしておいて良く言うぜ!」


こっちはバフで能力値をアップしてギリギリで攻めてるって言うのに軽くかわしやがって。

反転して更に切りつける俺の剣もかわされた・・・でも剣は奴に届いた。

それに・・・やっぱり両隣の魔獣は動かないな。


俺の攻撃を余裕でかわしつつローブの男はさらに話しかけてくる。



「そして、我に攻撃を仕掛けてきた判断も正しい」

「やっぱり、お前が魔獣を操っているのか!」

「ほぉ気が付いたか」


やはりそうか。

魔獣は本能のままに動く。それなのに今こいつの両隣に居る魔獣は全く動かない。まるでローブの男の指示を待つように・・・


「いいのかよ。バラしちまって」

「問題なかろう?お前はここで死ぬんだからな」

「くっ」


俺の剣を弾きつつ再びローブの男が魔力波を放った。

ギリギリのところでかわしたものの俺は態勢を崩し倒れこんでしまった。


「しまっ!」

「ふん 死「アイスアロー!」」


とどめを刺そうとしたローブの男に無数の氷の矢が突き刺さる。

アメリの魔法だ。

俺は素早く起き上がり後方に居たアメリの隣に移動した。


「アメリ助かった」

「まだです・・・多分効いてない」

「ふふふ・・・面白い。実に面白いですね」


氷の矢に貫かれたはずのローブの男は不気味に笑い俺達の方に体を向けた。

ローブには無数の穴が開いているが意に介さないように話しかけてくる。


「中々やってくれますね。先程の魔力波で倒したと思ってたんですけどね」

「あいにく様。私もそれなりに魔力耐性はあるのよ。やられたふりしてチャンスを狙ってたの」

「なるほどなるほど。倒れていれば助かったものを・・・」


そう言いながらローブの男は不気味な笑顔のまま右手をアメリの方に向けた。

そして・・・


「なっ」


一瞬だった。

男の指先から無詠唱で放たれた光がアメリの胸を貫いた。

糸の切れた人形の様に血を流しながらその場に倒れるアメリ。


「ア、アメリ!!」

「今度こそ死にましたかね。

 ふぅ・・・それにしても思ったより時間が掛かってしまったみたいですね。

 本当はもう少し君たちと遊んでいたいんだが、もうひと仕事あってね」

「もうひと仕事?」

「あぁ。今から近くの村を焼き払わなくてはならないんだよ。

 だから悪いけどそろそろお暇させてもらうよ」

「何・・・・だと?」


近くの村?それってアジュールじゃないのか?


「じゃ後は任せたよ」


そう言いながら右隣りに居た魔獣の鼻先を男が撫でると魔獣は咆哮をあげ鋭い目を俺達に向けてきた。

そして、ローブの男ともう1頭のフェンリルはふわりと浮かび上がると消失した。

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