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第7話 ジュラシック・パーク

 恐竜のケンタはさっそく海にもどると、海のものたちに、これまであったことをくわしく話した。海のものたちは疲れきっており、ケンタの話をきいて、複雑な表情を見せた。

「それじゃ、海は行ってしまうんだ」

「いままで、ぼくたちのやってきたことは、なんだったんだ」

「むくわれないな。くやしい」

「もともと、ムリな話だったのさ」

「もういいよ。どうにでもするがいい」

 ケンタはみんなの声をききながら、なぐさめたり、いいわけをしたり、いっしょうけんめいだった。

 イカやエビや、タイやヒラメ、クジラにイルカ、ペンギンたちもやってきて、みんなでワイワイ話し合いがはじまった。

 しかし、選択の余地はなかった。海を出発させるしかないからだ。地球に残るとしたら、陸で生活しなければならない。ペンギンたちはいいけれど、ほかの海のものたちは、ほとんどが、海がなくなれば死んでしまう。

 けっきょく、みんな海についていくことにした。意見が別れたのは、ペンギンや海イグアナなど、陸でもムリをすれば生きていけるものたちだけだった。

「じゃ、みんなで用意ができしだい、ルシン博士の海中研究所へ行こう」

 ケンタはみんなを見まわしながら、ふと気になった。きょうは、だれが海に芸を見せているのだろう。近くにいたイソギンチャクにきくと、

「もう、だれもやってないでござんす」という。

「ええっ!」

「あれま、ご存じなかったんですかい。いえね、ここ何日か、海がなにもしゃべらなくなってんですよ。でまあ、こっちも出し物がなくなりやしてね。ちょうどいいやってんで、海をそっとしておくことに、したんでさあ」

「なんだって!」

 ケンタは大あわて。大声で海をよんだ。

「おおおおおーい! 海いいいいい!」

 何回もくり返したが、返事はない。

 ケンタはみんなと声を合わせてよんだ。何十回かくり返したあとで、やっと海の眠そうな声がした。

「なんだい。ひとがせっかく、気持ちよく眠っているのに。おや、恐竜じゃないか。どうした」

「海、きみは旅にでるんじゃなかったの」

「旅? ああ、そうだった。きみたちの、おもしろい芸を見ていて、すっかり忘れちゃってたよ」

「そろそろ、用意に入ってはどうだ」

「え。きみは行くなっていってたじゃないか」

「いや、あれはまあ、ぼくが自分勝手だったんだ。海、きみの気持ちを考えたら、行かせてあげたほうがいいと思ったんだ」

「へええ、そうかい。じゃ、行こうかな。でも、ここ何日か、ものすごく眠いんだ。眠っても眠っても、まだ眠り足りないんだ。だから、すこし休んでから行くよ」

 そういうなり、海の声はきこえなくなった。これはマズイとケンタはルシン博士のところへ、すっとんでいった。

「博士! たいへんです。海が眠ってばかりで、活動がにぶくなっているようです」

「そうですか。なかまたちが集まってきていますから、用意がととのったら、すぐ始めます。間に合えばいいんですが。こんなときに木星に来られたら、一発でアウトですよ」

「ルシン博士のメッセージが放送されたのに、人間たちは木星行きを中止しないんですか」

「危険なことはじゅうぶん知ったうえで、木星の計画は実行されるようです。たいへんなことになるといっても、まず、海の生物が死んで、それから、海が気化するまで時間があります。その時間をかせいで、その間に、海が気化しないですむような方法を考えようと、そういう計画のようです」

「そんな! 時間かせぎが目的なんですか。そのために海のものたちを、ぎせいにするんですか!」

「人間たちもどうしてよいのか、まったくわからないのでしょうね。だから、時間がほしいんですよ」

「ひどい話ですね。人間はあてにならないと火星がいってましたが、これほどとは思いませんでした」

「もうしわけない」

「博士があやまることはありません。よし、木星のことはぼくにまかせてください。考えがあります」

「では、お願いします。それから海のみんなにお伝えください。みなさんの力が必要です。合図をしたら、みんなでいっせいに海のすみからすみまで、力のかぎり泳ぎまわってください。海をかきまわすのです」

「みんな用意ができしだい、この研究所に集まることになっていますから、イルカに伝えておきます」

 ケンタは研究所からイルカのところへ行き、そのまま、あたふたと、陸へむかった。

 とちゅう、泳いでくる恐竜たちがたくさんいた。人間に変身していた恐竜たちが、ほんとうの姿にもどり、ルシン博士の研究所へ急いでいるのだ。

 浜辺には、たくさんの人間が押しよせていた。心配して海のようすを見にきているのだろう。しかし、そのなかから何人もが、すーっと海に入っていくのが見えた。海に入った人間たちは、波打ちぎわあたりから、恐竜の頭になっていく。なかまたちだ。

 恐竜のケンタは、恐竜の姿のまま街へむかった。

 すれちがう人間たちはギョッとして見るが、たいていは見なかったふりをして行ってしまう。つくりものと思ったかもしれない。それに、いまは、どの人間も海のことで頭がいっぱいなので、少々のおかしなことには鈍感になっているのだろう。

 街に入るとケンタは、ちょっと変身を応用して体を大きくした。人間たちに、見て見ぬふりをできなくさせるためだ。

 パトカーや消防車のサイレンが街に鳴りひびき、戦車が地をゆるがし、ヘリコプターや戦闘機がケンタのまわりを飛びまわった。クレーン車も出動してきた。

 テレビもやってきて、街は大さわぎになった。ケンタは、高いビルにでものぼろうかと思った。しかし、いまは急がなければならない。ケンタは体をもとの大きさにもどし、さっさと自分から大型輸送機に乗りこんだ。

 人間たちが見まもるなか、ケンタを乗せた輸送機はビュンと飛んで、あっというまに着いた先は、なんと、ジュラシック・パークだった。あれほどケンタがきらって、かつ、おそれていたジュラシック・パークだ。

 恐竜の姿で人間たちのなかへ行けば、ジュラシック・パークにつれてこられるのは、ケンタはわかっていた。なぜ、ケンタは、そんなことをしたのだろうか。

 ジュラシック・パークに着くや、ケンタは恐竜たちを集めた。ここにいる恐竜たちは、博物館にいた恐竜たちのように大きく、力も強そうだった。

「なんだ、なんだ」

「新入りが、用があるそうだぜ」

「おれたちをよびつけるなんて、なまいきな新入りだな」

「食っちまおうぜ、そんなやつあ」

「ま、話だけはきいてやろうじゃないか」

 ケンタは岩山の上に立って、話しはじめた。

「みんな、きいてくれ! もうすぐ、海が出発する。しかし、それをじゃましようとするものたちがいる。きみたちの力が必要だ。たのむ。きみたちの力をかしてくれないか。おなじ恐竜のなかまとしておねがいする」

 恐竜たちは、いっせいにブーイングをはじめた。

「なにいってやがる。おれたちは、おまえみたいなちっぽけな恐竜とはちがうんだ。なかまなんかじゃないぜ」

「そうだ、そうだ。おまえらだけで、かってに、なんでもするがいいさ」

「おれたちをつくったのは人間だ。おれたちはジュラシック・パークの恐竜で、むかしの恐竜とはちがうんだ」

 ケンタはいっそう大きな声をだした。

「みんな! 恐竜としてのほこりを思いだしてくれ。地球の海があぶない。こんなとき、どう行動すべきかを考えてくれ。ぼくたちの一族は、海のおかげで絶滅をまぬがれたんだ。海は地球に残れば死んでしまう。なんとかして出発させてやりたいんだ。ぼくたち恐竜のほこりをかけて、出発させてやりたいんだ。そのためには、きみたちの協力がぜひとも必要なんだ」

 恐竜たちは、いっそうブーブーいい、あるものたちは、ケンタにおそいかからんばかりだった。

「このやろう、新入りのくせに」

「まったくだ、さっさと食っちまおう」

「おれたちのほこりは、ここ、ジュラシック・パークとともにあるんだ」

「そうだ、そうだ。人間、バンザイ!」

 恐竜たちは、バンザイ! バンザイ! とさけびながら、ケンタにおそいかかってきた。ケンタは小型龍だから、ひとたまりもない。

 ケンタはここに来ると決めたときから、覚悟はしていた。ジュラシック・パークにいる恐竜は、人間がつくっただけあって乱暴で、話もまともにできないときいていたからだ。そんな恐竜たちのところへ乗りこんでいくのだから、命があぶなくなってもしかたがない。

 もし、そうなったとしても、海のために死ぬのなら、それでもいいという気持ちに、ケンタはなっていた。

 ケンタは恐竜たちにおそわれながら、そのまっただなかで、ほこらしげな気持ちだった。大きな口がせまり、するどい歯の一本一本が

はっきりと見えたとき、ケンタは目をとじた。

 ガン! とはげしいショックをケンタは感じ、たおれた。

『ハンナ、ルシン博士、チャーリー、みんな、さよなら。海よ、さようなら、ありがとう』

 ケンタは頭のなかがまっ白になった。このまま気が遠くなって、すべてがおわるはずだ。

『ああ、よかった。ものすごく痛いかと思ってたんだけど、痛みはおどろくほどなかった。心がけがよかったからだな』

 ケンタは横たわったまま、待っていた。

 しかし、気はしっかりしていたし、耳もきこえていた。その耳に、きいたことがある声がひびいた。

 ケンタはおそるおそる目をひらいてみた。青い空が見えた。太陽がまぶしく輝いていた。生きているらしい。

「さあ、ケンタ。起きなさい」

 声がよびかけていた。ケンタは体を起こし、まわりを見まわした。

 なんと、ジュラシック・パークの恐竜たちが、みんなひっくりかえって、のびていた。目をまわしているらしい。声の主の姿はない。

「どなたですか。ぼくをたすけてくれたのは」

「ははは。わしたちじゃよ、ケンタ。ほら、博物館の恐竜じゃ」

 姿は見えないが、たしかに、この前行った博物館の恐竜の声だった。

「ここに、いらっしゃるのですか。どこですか」

「ふん。わしたちは、だてに長生きはしとらんのさ。もっとも、いまの状態じゃ、生きているとはいいにくいがな」

「わしらは博物館におるよ。こんなジュラシック・パークの連中なんざ、わざわざ出かけていかなくとも、ほら、このとおりじゃよ」

「そう。いちころじゃよ」

「ケンタよ、あぶないとこだったな。こんなところへ来るのなら、ひとこと、わしらに相談してほしかった」

「すいません。急いでいたものですから」

「では、決めたのじゃな」

「ええ、海を出発させることにしました。それで、木星ロケットの発射をやめさせるために、このジュラシック・パークの恐竜たちに手伝ってもらおうと思ったんです」

「だめだよ。ここの連中はね、口でいったって、きく耳をもってないんだ。よし、そういうことなら。おい! コラ! できそこないども! 起きろ! 目をさませ!」

 まわりでのびていた恐竜たちが、いっせいに目をあけ、起きあがった。

「おい、おまえら! いいか、よくきけ。ここにいる恐竜のケンタが、おまえらのはたらきを必要としている。ありがたく、はたらかせてもらえ。ちゃんということをきかないと、また、ひどいめにあわせてやるぞ!」

 ジュラシック・パークの恐竜たちは、姿が見えないのに声がきこえるので、みんなふるえあがって、こわがった。

「はいはい、わかりました。なんでもいうとおりにします。どうか、命ばかりはおたすけを」

「よろしい。では、さっそく、ケンタのいうとおりにするがよい。さあ、ケンタ。たのんだぞ。恐竜のほこりを忘れるな」

 声は消えた。ケンタは心のなかでお礼をいって、立ちあがった。

 ケンタは、恐竜たちをしたがえて、ジュラシック・パークを出た。

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