異世界転移したおっさんは婚約破棄された悪役令嬢と、もふもふいっぱいのダンジョン経営をして最強賢者に成り上がる
「今日も腰が痛くて」とウメばあちゃんは言った。
「お辛いですね」ウンウン頷く俺、36歳の過疎村医。
専門関係ないナンデモ屋だが、一番多い仕事は皆の話を聞くことだったりする。
そんなスローライフな毎日だが、冬にはもう1つ仕事が加わる。雪山遭難者の救助だ。
だが今回は、しまった。
俺の方が救助隊から外れて、道に迷ったのだ。
(もうダメだ……!)
身体が冷えきり、視界がホワイトアウトした時、俺は神々しい声を聞いた。
「あなたを『優しさを失った世界』へ送ります。この世界はもう滅ぶ寸前。どうか、あなたの固有スキル『共感力』で救って下さい」
こうして俺は異世界へ転移した。
この世界では、誰もが自分のことで手一杯だった。そして、誰もが寂しがっていた。
婚約破棄された悪役令嬢と出会う。
「王子は騙されたのですわ。もふもふたちにヒロイン苛めさせるなど有り得ないのに!」
わかるよ、と俺は頷く。
「きっと、そのままの君を理解してくれる人が現れるよ!」
彼女は感動に瞳を潤ませた。
「それは貴方のことね!」
「ええっ!」
「さぁ、わたくしと『もふもふダンジョン』を経営しましょう」
「世界は?まいっか」
こうして始めた、もふもふでいっぱいのダンジョンは、大当たりだった。皆、癒しを求めていたのだ。
しかし問題が起きた。
「あなた」今は俺の妻となった令嬢が、美貌を曇らせる。
「最近は、クリアする者より堕ちる者が多く過密状態ですの」
俺はダンジョンを回って、彼らの話を聞くことにした。
「わかるよ……辛かったね……君は悪くない」
皆、俺の『共感力』に涙し「お礼に」とその知識を授けては、去っていった。
魔道ガチャ重課金廚の侍女からは、確率変数と当たり時間帯と借金をごまかす方法を教わった。
巨乳ばかりに注目されるのがツラいグルメレポーターのロリ少女からは、世界のグルメ知識。
常に美を要求されて疲れたスタイリッシュな女怪盗からは、闘い方・盗み方と探索の知識。
そして今、俺に悩ましく囁くのは、絶世の狐耳美女妖怪『玉藻前』様だ。
「妾の全てをやろうぞ♡」
伴侶の人間に次々と先立たれて悲しみに沈んでいた彼女は、その妖力と知識を俺に明け渡す決意をしたのだった……!
こうして俺は、賢者をも凌ぐ知識と力を得た。
最後は、未来からタイムスリップしてきた王女だった。世界はいつの間にか救われていたのだ。
彼女が打ち明けたのは、最強賢者のおっさん(妻子持ち)に恋してしまった悩みだった―――
読んでいただきありがとうございます(^^)
サイドストーリーも、もしお気が向いたらどうぞ♪
下のシリーズ一覧から飛べます。