春雨スープぅzzz……
「さぁ入って! 」
「は…… はい」
冒険者ギルドはいつものように騒がしく冒険者達が持ち寄りった酒や肴の匂いが充満していた。
私のお父様は元冒険者だったからか魔物の命を獲り商売にするギルドに忌避感ない。
…… 朝なのに、、、
しかし、いつも思うけど、こんな雑貨屋のような招待で入っていいのかしら?
※ 痩せ型でピンクの髪をオールバックにし白い前ボタンのシャツに黒の綿の長ズボンを履いたギルドマスターはササッと慣れたようにギルドのカウンターへ回る
「ギルドマスター、何で連れて来られたのか分からないんですが? 」
「そんな目を吊り上げて怒るなよコラットちゃん! 」
「怒ってないです! 」
吊り目なだけです!
ガハハと笑うギルドマスターを本気で睨む
「ギルマスー領主令嬢に不敬だぞー! 」
「そうだそうだーわはははは! 」
ギルドにいた冒険者達からも笑われてるじゃないですかもー!
「ホラ! またコラットちゃんに怒られるだろ! ヤメロ! 」
ギルドマスターは苦笑しながらハエを払うように手を払うと冒険者はニヤニヤと揶揄うのをやめる
…… あれ? 私、令嬢だよね? あれ?
困惑しながらギルドマスターと目を合わせると、ギルドマスターは施設の端を顎で無言でクイッと示す…… あれ? 私、令嬢だよね?
何度も納得いかないなぁと首を傾げてギルドマスターの指す方を見る。
…… アビ見せ?
※ ギルドには冒険者のパーティーに参加出来なかった者や、流れ者、初心者が能力をウリにする場所がが必ず設けてある。
・紙に自分の能力を書いて示す者
・破壊を行わない能力はそれを使い有用性を示したりする
それを通称、能力見せという。
なぁんだアビみせかぁ…… でもこのギルドにいる冒険者の能力はだいたい持ってるしなぁ…… ん?
黒髪で短髪、家にある辞典で見た事がある前合わせの着物を着ているここらで見かけない男性冒険者がキリッと澄まして正座をしていた。
…… 石床なのに痛くないのかな?
「おーい! ハルサメ! 」
ピクリとギルドマスターの呼びかけに着物の男性は反応する
「この子は、ここの領主の娘さんだ! ひとつ能力を見せてあげてくれんか? 」
ギルドマスターの大声の おねだりにハルサメさんは私を見て口を開く。
「わ…… わたしのアビリティが見たいんでやんすか? デュフ? 」
「お、おう 」
あれー?
イメージが違うな…… ハルサメさんは口の端に泡を溜めてデュフまたはドゥフと笑う。
「せ、せ、拙者は西の果てにある国から来ましたハルサメでやす! お、お嬢さんおおふふふ、美少女でござるな! 喜んで能力を見せましょう! 」
「お、おう」
悪い奴じゃ無いんだ
そうギルドマスターは呟くが、やたら甲高い声で奇妙に笑うハルサメさんがちょっと怖い……
パン! パン!
ハルサメさんは両手を2回合わせて深呼吸をする。
「いきますぞ! 」
左手で地面を、右手で自分の周りの空間を人差し指で直角に指し示し自分の周りに四角い箱を描き終わると胸の前でまた手を合わせる
「閉! 」
そうハルサメさんが言うと箒で床を掃いたようなシャーーッという音と共に薄く光る四角の箱が出来上がり、その中でハルサメさんはニヤリと笑った。
私は思わず近くに寄り観察する。
「デュフ、これは拙者の国に伝わるレア能力〈結界〉ナリ! この中にいるとあらゆる侵入をはね返すでごさるぅ!! 」
「…… 結界 」
使える…… これがあればどこでも寝れるわ!
「きょ…… 強度はどうなのかしら!? 」
「おぅ? コラットちゃんノリノリだな! ーーーおい! 」
ギルドマスターが声をかけると鎧のような筋肉ドワーフの冒険者が樫の木の槌を大きくハルサメさんに振り上げる。
「ちょちょちょ! 」
ハルサメさんが悲痛な叫びをあげる!
「だ…… ダメ! 」
私のお願いで人が傷つくのは…… !!
ガァァン!!! ………… ゴトリ……
「ヒッ! 」
ゴトリって! ハルサメさんの首が落ちた?
私はスプラッターな場面を見ないように目を反らすと、、、冒険者から歓声があがる…… え?
「ゼェゼェ…… いきなりは酷いなりよぅ」
「こりゃ…… 凄いな。 手が痺れて動かんぞ…… 」
ハルサメさんは結界の中で無傷で息を切らし汗を流して震え、筋肉ドワーフさんは結界に攻撃をはね返された衝撃で手に力が入らないのか何度か樫の槌を拾おうとして諦めたようだ。
…… ゴトリという音は槌が落ちた音か……
「首が落ちたかと思った…… 」
「ちょ! 物騒な事を言わないで下されーー! 」
私達の掛け合いが面白かったみたいで軽い談笑が回りから起こる…… あれ? 私、令嬢…… だったかしら?
談笑に混じって慌てたような声も耳に入る
「おい、あのドワーフって…… 」
「ああ、確かBランクのパワータイプの戦士だ」
「…… あの攻撃を防げるって事はハルサメって奴すごいんじゃないか? 」
…… Bランクの冒険者の攻撃を防げるって凄いわ。Bランクの冒険者といえば複数人が揃えば竜種のワイバーンを倒せる程の実力があったはず
欲しい! 結界の能力!
「ーーー あ、あの、 ハルサメさん…… もう一度、私に結界の能力を見せて下さいませんか? 」
「おふぅ…… 良いですぞ! 開! 」
ハルサメさんが〈開〉と唱えたら結界は解ける。
なるほど指で結界を張る大きさを指定して〈閉〉で発動、〈開〉で能力の終了…… という事かしら?
この後、2回も結界を張って解いてをしてくれたハルサメさんにお辞儀をして感謝するとホッコリ笑顔でお辞儀を仕返してくれた。
変な方言のある人だけど、いい人みたい。
ハルサメさんは私に見せた事で、結界は有用性があると判断した冒険者からパーティのお誘いがあり嬉しそうにギルドを後にした。
「ギルドマスター、少し疲れたので休む部屋をお借りできませんか? 」
私は冒険者ギルドの休憩所で〈おひるね〉して結界の能力を手に入れた。
これで、どこでも寝る事が出来そう!
おひるねから覚めて結界が使えると確認したコラットは欣喜雀躍して喜んだ。
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「ーーー という事がありました 」
「へえ…… 結界ねぇ」
師匠の店に帰り、おひるね能力を伏せて結界の凄さを伝えたが…… 何か聞いているのかいないのか分からない反応が返ってくる。
「? なんか生返事ですね? 」
「ああ、すまないね武器の強化には細かい魔力操作が必要なんでな 」
「え? 結局、武器を作るんですか? 」
師匠はリビングで蜂蜜と温かいミルクを混ぜたものを飲みながら羊皮紙に設計図を書いている。
その設計図に頭を寄せて覗くと、ゆっくりと師匠に頭を撫でられそのまんま話を続ける
…… 師匠のナデナデはなんか気持ちいい。
しばらく師匠は私を撫でながら考えていたがフフと笑い目を細めた。
「、、、 まいいか、知る事も私の弟子なら大事かね? 武器への魔法付与は設計図なしには出来ないんだよ」
「設計図なしには…… ですか? 」
師匠は基本、魔法を行き当たりばったりのように適当・的当に使う。
こんなめんどくさい事をするのは初めてだから少しビックリ……
設計図には王都から来た素材の中に華美なミスリル製の片手剣が入っていた。
図面を見る感じでは、その剣を雛形にして付与を加えて行くという感じ…… かな?
「…… なんで私を見てるんですか? 師匠…… 」
いつの間にかナデナデを止めた師匠は今はじっくりと私の顔を見ている。
「いやね、普通のコラットぐらいの歳の子ならワクワクしながらポケーッと眺めているもんさ。でもアンタはこの設計図を理解しようとする知性が見える…… 本当に子供かい? アンタは? 」
そう言いながら師匠はクックックと笑う
「失礼ですよー? 子供も色々じゃないですか? 」
と言いながら空になった師匠のコップをキッチンに持って行って飲み物を入れる…… 今日は冷えるから生姜入りの紅茶にしとこう。
「そんな所なんだけどねぇ…… 」
師匠は小さな声で呟いた。
文句を言おうとキッチンからリビングを覗くと、悪気もなく頬杖しながら微笑む師匠にため息をついた。
「ーーー で、だね。あ美味しい」
「はいありがとうございます」
手渡したコップから紅茶を一口飲んだ師匠は設計図を指差し説明をする。
魔法付与した武器を作る時は様々な工程に分かれる。
剣全体に例えば火の魔法を付与すれば握りが炎により熱くなり触れない。
つまり剣身には火の魔法を付与して鍔には火の魔法に反する魔法を付与しなければならない。
また付与する魔法によっては柄の全体に強固さを加える魔法を付与しなければ剣身の魔法で朽ちてしまい打ち合いの途中に剣先だけ落下してしまうかもしれない。
「そういう細々とした事を事前に設計しておかないと多重の魔法を使う事もあってオーバーヒートして脳が焼き切れてしまう事もあるんだよ」
「えー!? こわい! 」
師匠は笑顔で私の背中を摩り私が落ち着いて恐怖の表情が和らぐのを見ると素材が置いてある部屋に行きミスリルの剣をリビングに運んできた。
「さて、まだ夕方前だしやってしまうかね? コラットよく見ておきな…… いつか金が必要な時に作る事があるかもしれないからね 」
私は頷いて師匠の魔法付与を〈観察〉した。
欣喜雀躍
ぴょんぴょんはねて喜ぶ事