夢のヒントをもう少しぃzzz……
「なるほど、コラットの能力はヤバイな」
「…… コラットォ…… コラットォ…… 私の可愛いコラットォ…… 」
父の手の再生が終わった後、家族3人とメリダで領主館の厨房に閉じこもり残り物を探して夜食を食べている。
アーネストは右手が再生したのをひとまず隠す為に手を袖に通さずに服の腹の部分に隠して、美味そうに酒をメリダと飲み交わす。
母はコラットの能力に感動してずっと娘に抱きつきながら泣いて離れない
「あの…… 私は幼いのでそろそろ寝たいのですが? 」
コラットは母の涙に濡れる肩の気持ち悪さに参ってしまっていた。
「幼いって…… 幼女が自分で言うかね…… クックック」
「ウチの娘は賢いなぁハハハハハ 」
本来なら厭戦気分のメリダと娘を旅にやる父親の暗澹とした雰囲気になる筈なのだが……
笑い者にされたコラットはじっとりと父とメリダを睨む
「いや、今日は祝いだからな」
「そうさね」
喜ぶ両親と師匠の赤ら顔にコラットは苦々しくも嬉しい複雑な気分になる。
こういう時に御開きにする母親は普段は飲まない酒を飲み泣き濡れて使い物にならない。
ーーー お母様は泣き上戸かぁ…… はぁ……
それも仕方ないのだ
父親の手の再生を終えた後に自分が得た能力を一部、両親に披露したのである。
可哀想と考え、守ろうとしていた我が娘は強者の器だったのだからその欣幸は仕方がない……
「よし、俺も領主を辞めてついてくわ! 」
「え!? お父様?? 」
ポワポワと体温があがり眠たくなり出したコラットはいきなりの発言の衝撃に目を剥いて驚く
「あなた…… 」
「なんだよマリア? ダメってのか? 」
「賛成です私もついていきます…… ぐすん」
「え!? お母様も!? 」
いきなりの両親の出奔の発言に頭が痛くなるが、両親は酒に酔った上での発言ではないとコラットに目を向ける
元々が手を失って冒険者を廃業したのだし、コラットを養う為に領主になったのだ。
腕が戻り娘の能力が素晴らしいと分かればしがらみは無い。
領主として税の徴収やデスクワークなど投げ出せて清々するとさえ笑い話す。
「し…… 師匠ぉ…… 」
「………… 面白い、家族水入らずの旅にわたしも混ざっていいかね? 」
「…… 師匠ぉー…… あー…… 頭が痛い、もう現実逃避で寝てきます」
頼りない無責任な大人に頭を痛めコラットは領主館にそのままになっていた自分の部屋にフラフラと向かった
ーーー
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ーーーーー
「ーーーーー 、 でどうするよ? メリダ 」
「ああ、とりあえずは王軍からの依頼はやってしまうよ…… それから逃げないとね、規定の物が規定の通りにならないと軍属は煩いからね」
コラットが寝に行った後、酒が抜けたように真剣な顔で3人は向かい合う。
「そうだな一応、仕事はしましたという実績を残しておかないといけないだろうな…… 封蝋の手紙による依頼を反故にすると面倒になる」
「そうさね早々に、明日から取り掛かるとしよう…… それが終わってから行く当てはあるのかい? 」
メリダの言葉にアーネストとマリアは目を合わせ頷く。
「メリダさん、私の故郷の国に逃げようと思います」
「そうかい脱国かい。いいね…… 国を超えるのが一番早いねぇ」
ーーー そういう細々とした詰めが主役であるコラット抜きに進んでいった。
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ーーー コラット……
眠りについたコラットは揺り籠のような優しい寝心地の中で薄く目を開く
「夢の中? 」
コラットは天使と出会う夢の中にいると気付いた。
寂寥感のある天使である前世の母の声に首を傾げる。
「どうしたの? 何か嫌なことでもあった? 」
ーーー いえ……
前世の母は、現世の母が愛する者に触れれる事に嫉妬をしていた。
ーーー なんでもありません。 ジュースが溢れて焦っているだけです。
「へー天国にジュースあるんだ? どんな味? 」
暫しの雑談が始まる。
ああ、終わらなければいいのに……
そう思う前世の母はコラットの夢の終わりを感じる。
ーーー コラット、起きたら朝の内に街に降りなさい。そこであなたに必要な能力が得れるでしょう…… 頑張るんですよ
「必要な能力? 」
コラットの言葉に答える前に夢は開けていく……
あの世の白い部屋にPCが3台か並びクワトロディスプレイにはコラットがパチリと目を開く映像が映る
「コラット…… 」
PCの前には簡素な白いワンピースを着た前世の母が座りディスプレイに映るコラットを優しく撫でる
本来は必要以上に現世の魂に情報を与えてはいけない
しかし前世の母は神より与えられたPCでコラットの有利になる情報を漁っている。
「しかし運良くいい能力持ちが来たわね…… 」
生前は軍事のセキュリティーとハッキング部門に居た前世の母はこのPCのクセをなんとか掴み上手に運用をし始めた。
そこにはコラットの近くにいる人間の個人情報さえも表示されていた……
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「…… 天使さんに言われて来たけど、何をすればいいんだろう? 」
コラットは朝早くに街に流れる小川の前でポケーッと人の流れを観察する。
「おうコラットちゃん! おはよう! 」
「あ、おはようございます」
領主の娘に気軽に声をかけてきたのは、この街にある冒険者ギルドのマスターであるゴードンだった。
厭戦気分
戦争嫌だなーという感じ
暗澹
希望がねーなーという感じ