お店をしちゃぅzzz……
メリダさんと出会って3年が経った。
あの後、アルドは自分の不甲斐なさを感じ騎士を目指す為に軍の幼年寄宿舎に自ら志願して入寮した。
なかなかハードな生活らしく入寮から以降は領内に帰る事は出来ていない。
泣き言を手紙に載せて何度も送って来るのだけど、それはアルドの母であるフレデリカさんの話のタネになっている。
「アルドったら魔法技研の講習で失敗して服を風魔法で引き裂いて教室で丸裸になったんですってー あはははは! 」
…… 帰宅した時にアルドの精神がもつのかしら?
私はメリダさんの弟子として生活をしている。
父さんと母さんは私が能力なしと思っているみたいで心配をしているけど……
ていうか、私は能力なしって思われていたって知った時は驚きすぎて固まってしまったわ…… 何かわからないけど父さん母さんは泣きながら私を慰めるし……
ちなみにメリダさんは離れた所でクスクスと笑っていた。
そうですよね魔法とか使えるの知ってますもんね?
ーーー メリダさんといえば
「知識が豊富ならそれは能力とかわらんさ」
というメリダさんの言葉で渋々ではあるけど父さんの許可が下りて、今は領主館から少し離れた民家で師匠と二人暮らしをしている。
貴族なんだけど元冒険者という両親はそのあたり寛容だった。
それに加えて父さんがメリダさんの身元確認を王宮にしたおかげもある。
もちろんメリダさんの存在や生存は王に知られる事になったけど引退した戦犯歴のある老魔法使いにそれ程の価値は無いと判断されたのか逗留を許され、ここから王都に向けて仕事を受ける事になった。
仕事を受ける→ 臣下の礼という事なのだろう。
やっぱり存在を隠して生きていかないと死ぬまで搾られる事になりそう。
まあ、そういう事で仕事を受けるのだけど……
「師匠、王都から次の仕事がきていますよ? 」
「えーーっ…… めんどいなぁ。 コラットたのむ」
この通りです。
最初は師匠も頑張ったんですよー?
それは一番初めに師匠から仕事を教わった時に遡る
「ほらコラット、これがポーションの作り方さね。よく練習おし…… あんたは魔法を使えるみたいだしいつか作れる。修得まで長く時間が掛かるとは思うがめげるんじゃないよ? 」
「はい! 師匠! 」
「よしよし、いい子だ…… 」
メリダはコラットの顎をコチョコチョと撫でてフッと笑いポーションを作成していく……
ポーションは煙りの水と言われている。
水魔法に回復魔法を付与したものを火の魔法で炙るのだ
気化を始める水に回復魔法が定着して水のように沈殿するとポーションになる。
飲んでよし、ふりかけてよしの不思議物資だ。
普通の魔法使いか錬金術師は薬草や蒸留機などを使って道具で補助しながらポーションを作るのだけど……
「道具を集めたり旅を大荷物で移動するなんてバカのする事。効率的でないねぇ」
という師匠の考えで空中に魔法を浮かせたまま水の精製と回復魔法の付与、そして蒸留をしてしまう。
ーーーメリダはコラットに尊敬してもらいたかったのが実の所だ。この方法は国王つきの薬剤錬金術師でも難易度が高くて再現が出来るか危ういものだったのだが
翌朝
「師匠、できるようになりました! 」
「うそーーん!? 」
コラットはおやすみ中にポーション作成のスキルに必要なものを手に入れてしまった。
しかも前日のポーション作成の見学の回数が多かったのが良かったのか熟練度の高い澄んだポーションを作り上げる……
コラットのポーションを受け取りマジマジとメリダは涙目で鑑定すると
「これ…… わたしのより純度がたかいんじゃ…… 」
…… とコラットに聞こえない位の声でメリダは呟き唖然とした。
「じゃ…… じゃあ! 」
それから毎日、メリダはコラットに錬金術の色々を見せた。
もちろん、寝ていないコラットには作れないのだが、翌日、またはお昼寝の後には寝惚け眼で
再現してしまう……
いや、メリダより少し良いものを作ってしまうのだ……
そして一年半が過ぎる日……
「やーーーめたーーー! 」
メリダの仕事投げ出しが始まった……
メリダが数十年、気儘に旅人として生活していた日々は仕事をめんどくさいモノへと思いを堕とすに十分な年数だったし、自分が旅をして得た知識や呪法をまだ幼い子が一晩または昼寝をすると再現してしまうのだ
「ええーーっ!? 師匠だめですよー!? 」
コラットも一緒に投げ出せば良いのだが知識や交渉術などの大人の思考をスキルとして得てしまい幼い体に対して仕事に対する責任感のある成人の考え方をしてしまう……
めんーどくさー
という表情のメリダはパタリと長椅子に横になると不満顔のコラットにニマリと笑顔を見せ口を開いた。
「じゃ、コラットがやってよ! 」
「はいー? 」
こうしてコラットが王宮からの仕事を全て受ける事になってしまったのだ。
「師匠あの…… まだ私、成人すらしていないんですけど…… 王宮の仕事となればそれなりの人間に使用されるので責任感が重いのですが…… 」
「王子よ…… 」
「え? 」
「あんたの作ったポーションやマジックポーションは王子が使ってるの」
どうやら薬草や器具を使わない回復薬はそれらは純度が高く、宮廷医師団の鑑定の後に剣や魔法のレッスンで傷付いた王子に使われている
「え? でも師匠のポーションじゃないんですか? 」
「ここ見てみ? 」
メリダはコラットに2本のポーションを渡すとコラットはそれに目を落とす。
透明な瓶の中にはゆらゆらとポーションが揺らぐ。
「…… 貼ってあるラベルにMかKと書いてるだろぅ? 」
「ーーー 、 はい、書いてますねコレ何かなと疑問ではいたんです」
「Mはわたし、Kはアンタさ…… 」
・MERIDA
・KORAT
「はぁ、 なるほど私はまだ見習いですからねKのポーションは一般兵にでも使うんでしょうか? 」
「…… 見習いって…… はぁ、 あのね話の流れならわかるだろうに? アンタのポーションは私の作る物より質がいいんだよ? だから王子はK印のポーションを率先して使ってるんだよ! 」
興奮しながら叫んでしまい腹圧がかかったのかブーーっと師匠はおならを出してしまう。
しばらく気まずい空気が流れて師匠はクルリと長椅子の上を転がりコラットに背を向ける。
「…… 免許皆伝」
「え? 」
「ポーションや道具の私の知ってる限りは全て教えた。免許皆伝だよ仕事を頑張ってくれね」
「ええええーーーーーっ!!!? 」
幼ない驚き声が部屋に響き渡り
コラットから顔を背けたメリダは恥ずかしさ弟子の才能を羨ましく思いひっそりと涙を流した。
ーーーー はぁ、 あれから師匠は本当に仕事をしない……
師匠がワインを揺らしながら本を読むのを目の端に見て、ポーションとマジックポーションの作成をコラットは始める
「まぁ、報酬はほとんど私が貰っているからいいけど…… 」
王城から下賜される報酬はかなりのもので、8:2の割合でコラットが多く得ている。
それを領主である父に師匠からとしてほとんど寄付をしている。
「お父様、メリダ師匠からの寄付です」
「おお、ありがたい…… えぇぇ!? こんなに? 」
それなりの金額を動かす領主である父が驚く程の金額である、残ったコラットのお小遣いもそれなりでコラットは満足をしている。
コラットのポーションはそれだけの価値があるのだ
価値のある物は目に付く、それを知るのはある秋の日の朝だった……
メリダワークショップという屋号になった師弟の棲家に魔法付与アイテムを作る素材が納入される時に俗塵が訪れる事になる。