能力を使ったぁzzz……
「なるほどねつまり絵本の聖女のおはなしの顛末になりたくないかい? 」
「はい」
メリダさんは笑いながら私の事を眺める
2人でマンティスの死体から離れた切り株に座りながら話す。
うーんと伸びをした後にメリダさんは指遊びをするように水の魔法で空中にウサギさんを作っていく。
本当に指遊びなんだろう。見せびらかしもせずボーっと水魔法のウサギさんを空中でクルクルと走らせる。ウサギさんかわいい……
「ーーー わかる」
「え? 」
「私も昔、魔法の能力に優れていたからね散々に使い回されて過労と忙しさでどうにもならなくなって…… 酷い目にあったからね」
ポツポツとメリダさんは華奢で年輪を重ねた指を擦りながら話を続ける。
…… 若い頃に才能を認められて国に仕える事になった事
…… 溢れる才能を惜しげも無く使った事
当たり前になったメリダさんの献身を皆んなが感謝しなくなった事
………… 戦争に狩り出された事
敗戦で責任を押し付けられて刑罰として片足を落とされ王城から追い出された事……
暗い顔をせずに話すメリダさんの顔の皺は耐えて笑おうとする毎に深くなって陽の光で泣いてるようにも見えた。
メリダさんは赤い目を私に向ける
「分かったよ。今日の事は言わない」
「ありがとう」
メリダさんは片足がないので不安定に何度か勢いをつけて立ち上がると私に手を差し伸べる。
私はメリダさんに立ち上がらせてもらった時に、ふとマンティスと戦う前に覚えたスライムの能力を使えないか試したくなった。
せっかく私の事を知ってくれたんだもん
何か出来ないかな?
そう思っちゃった。
「メリダさん」
「なんだい? 」
私はメリダさんの手にスライムのスキルを馴染ませる。
おひるねをして能力を貰った時に出来るんじゃないかなと感じていた。
スキル《再生》発動
「!!!? 」
メリダさんが私のスキル発動を感じて目を剥いて驚く。
「信じてメリダさん 」
私の言葉にメリダさんはフッと力を抜いて笑う
「散々に生き散らかしたんだ、なんか分からないけどここで死んでもいいさね」
「死ぬって…… 大丈夫デスヨー ………… たぶん」
おいおいという顔をメリダさんがするが《再生》を進める。
スライムは身体の一部を失っても心臓に当る魔核を潰されてければ周囲の自然界にある魔力を取り込んで身体が再生する
メリダさんの中をスキルが進み欠損した足に辿り着くとモリモリと周囲の魔力を吸い込み足の形に成長を始めた
ーーーー やっぱりいける! …… と思う…… かな?
「なんだいなんだい!? なんだいこれは!!? 」
メリダさんは自分の足の感覚が復活していく事にビックリしてヒステリックに叫び始める。
ーーー もう少し……
グルグルと復活した骨に筋肉や皮膚が巻きついていきバウムクーヘンのように足の形に形成され終わるとコラットは気を失った。
メリダは二度と新しい足で地面を二度蹴ると頭を抱えた。
「なんて事だい…… ずっと求めて旅していた身体の再生の秘術をこんなところで、こんな子供に…… 」
驚愕と知識の混乱で頭が痛くなるメリダに人の走る靴音と叫び声が聞こえてくる
あまりの騒動にメリダは眉間に皺を寄せた。
ーーー それはコラットを探しに来た領主館の面々の音だとメリダが知るのは倒れる自分の恩人であるコラットを守る為に父との十数分もの激闘があった後だった。
「え? 」
「え? コラットのお父様? 」
「え? 」
「え? 」
実に間抜けな幕引きに激闘をしていた2人だけが爆笑をした。
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――― 切風のアビリティを取得しました。風魔法と統合します。
――― 魔力操作( ウサギ ) を取得しました
その天使さんの声を聞いて目を開ける。
「ああ、目を覚ましたようだよ! 」
メリダさんが声をあげると部屋にいた父と母がこちらに歩いてくる。
目覚めは私の部屋のベッドだった。
ふかふかのベッドに座るように起き上がるのをメリダさんが止める。
「コラット良かったなぁ、偶然にもメリダさんがいてくれて」
父が笑いながら寝ている私の足を布団の上から撫でる。
「ええ、私がマンティスから助けなければコラットさんは今頃…… 」
こう言いながらメリダさんは私にウィンクをする。
「ーーー あー! そう! ありがとうメリダさん! 」
話を合わせてくれたんだ!
聖女様の話をしておいて良かった!
ニッコリとメリダさんに笑うとふと体から光り身体が軽くなる。
「ーーー 回復 。本当に良かった…… エグっぐすん 」
母は目を真っ赤にしている。
泣いていたんだろうなぁ…… ごめんなさい母さん
「ねえ? コラット」
「はい? なんでしょうかメリダさん? 」
「私の弟子にならない? 」
ーーー それは私の一生を左右する勧誘の話だった