見られてるなぁzzz……
「なんとか領主館についた! よか…… ……。 」
一息ついたアルドは自分が手を引いて一緒に逃げていたはずのコラットがいない事に気付く
何度も振り返ると自分の不甲斐無さに涙を流し地に両手を着け項垂れると我慢できずに大声で泣きだした。
マンティス系のモンスターは気性荒く幼女一人残した場合は悪い結果しかないだろう。
「コラットが…… コラットが…… うぅぅぅ 」
死んでしまったとは怖くて言えずアルドは地面に倒れ丸まって震えて泣き出してしまった。
まだ幼い子供には何かから逃げながら大切なモノを守ったり意識を分散させて走るなど無理なのだ。
仕方がないのだが…… それでもアルドは安全な場所にたどり着いた途端にコラットの手の温もりを知らずとはいえ投げ出してしまった事を、剣士として生きようとした心を壊してしまった。
「アルドどうしたんだ!? 」
走り帰ると同時に号泣するアルドの声は何か悪い事があったと想像するに十分だった。
駆けつけてきた母に救援を乞いたいのだが、幼いために精神のリカバリーが上手くいかず嗚咽と過呼吸を繰り返しコラットの事をなかなか伝えれず時間が無駄に過ぎた。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
私は何を見ているのだろうか?
世界の魔力素を集め研究をしながら女伊達らに危ない旅を50年、このような異才は見た事が無い。
「SLASYAAAA!! 」
幼女がマンティスを魔法による暴力で追い詰めている……
体格差として幼女は身長1メートルいくかどうかの華奢さ、対するマンティスは野良仕事を行う成人男性のような大きさだ。
ありえない……
私は眼に映る物がとても物珍しく興味・探求心が湧いてしまい凝視を続ける。
「小火! それから小雷! 」
しかも魔法アビリティを二つも使っているのだ
私でさえ魔法を使い魔物を殺したのは10代のはじめの頃……
ーーー シュッ!
マンティスの手の鎌が空を切り幼女に迫る
「くっ! しまっ…… 」
幼女の能力に見惚れてしまい救助を遅らせてしまった!
「 ーーー! 、 なんと!! 」
処刑人が大鎌を振り下ろすようにマンティスの鎌が幼女の命を刈り取る…… と思ったのだが
ザッシュザッシュ!
マンティスの鎌は幼女の肉を斬り裂かずに地面を耕した。
小気味の良い息遣いで幼女はマンティスの連続して迫る鎌を躱していく…… 幼いのに魔法や体術を使いこなしているのか? …… どうなってるのだろう……
この国は軍事に優れているが幼女で新兵以上の力を持つ者の話は噂にも聞いたことがない。
「しかしこれ以上はダメだわね! ちょっと! 」
私が叫ぶ前に幼女はこちらをチラリと見て軽やかなステップで戦闘から離れる。
ーーー 気配察知のスキルと魔力探知のスキルもあるの?
そう驚きながらも手に魔力を込め空間ごとマンティスを立て一文字に手刀を下ろしながら風魔法を放つ
「切り裂け! 切風! 」
斬れ味が冴える風の刃がマンティスの頭から腹までを裂いた。
ビュッビュッと青い血を周りに撒き散らし倒れたマンティスを確認して幼女を見ると切風をしっかり観察しているようだったがそれを終えたのかこちらに可愛らしい瞳を向ける。
ーーー お人形さんみたいに可愛らしいねぇ
改めてみた幼女の見た目はそうだった
「こんにちは、私はメリダ。 お嬢ちゃんの名前を教えてくれるかねぇ? 」
幼女はゆっくりとした所作でお辞儀をする
なるほど被服の仕立てがいいのが分かった。いいとこの子だねこの子は……
堂に行った態度の幼女は可愛らしい声で自己紹介をする。
「私はコラットと言います。どうか今、ここで見た事は内緒にしてくださいませんか? 」
私はどういう事か理解が出来ない事が続いたからか曖昧な笑顔でその願いに無言で頷いた。