表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

7話 死体処理

ストレス発散(微)

*********

称号《躊躇の無い殺人》

Alliance-Online内で15人殺したプレイヤーに贈られる称号。

人からの被ダメージ《微増》、人への与ダメージ《微増》

*********


 先ほど得た称号の内容だ。相変わらず効果は期待薄だが、塵が積もれば山となる(ちりつも)を期待しよう。


 さて、フィールドに出てきたのはいいが。妙に人が少ない。不人気なエリアなのだろうか。好都合ではあるが、ストレス発散できない(殺せない)のは悲しい。あまりいすぎても殺しきれないのだが。

 角の生えた兎のいる草原を進む。すぐに森だ。モンスターは遊びに適用しない。人でないとストレス発散にならないからだ。襲ってこない限り不必要に殺しはしない。そして本の情報を信じるなら、ここら辺のモンスターは大抵ノンアクティブだ。


「なあ、アンタ……」


 後ろから誰かが話しかけてくる。男の声だ。小さく舌打ちをして、十分気配が近付くのを待ってから振り向きざまにダガーを繰り出す。首に当たったがそれだけでは死ななかった。捩じ込むように力を込め、追撃に手の甲から毒針を刺した。装備していたらしい斧を振ってくる。腹を蹴り後ろに跳んだ。避けきれなかったのか、腕から血が飛ぶエフェクトが走る。今度は大きく舌打ちをして、死体から剥ぎ取った短剣を投げた。毒がまわってきているのだろう、紫色の顔をした男の胸に吸い込まれ、男はポリゴンとなって消えていった。何が起こっているのか分かっていない様子に、訳も分からず殺された怒りを混ぜたような、随分と奇妙な表情で。


〔ただいまの戦闘によりスキル<奇襲>がレベルアップしました〕

〔ただいまの戦闘によりスキル<投擲術>を習得しました〕

〔これまでの行動経験によりスキル<気配察知>がレベルアップしました〕


(ふん…)


 気分が良い。ゲームはやはりこうでなくては。

 無意識に上げていた口角を戻し、腕にポーションをかけた。これも剥ぎ取ったものだ。ついでに投擲した短剣や周りに散らばったアイテムを回収する。男が死んだがために落としたものだ。


 男はプレイヤーだったのだろう。NPCは死んでもポリゴンにはならない。

 この世界(ゲーム)では、人間以外は死んでも屍を残さない。ポリゴンとなり、ランダムで肉なり皮なりのアイテムをドロップする。命が尽きた時に死体を残さずアイテムを落とすプレイヤーを、一部のNPCは人間とみなさないらしい。しかしプレイヤーかNPCかは言動か死体の有無でしか判断できない。マーカーのようなものは存在しないのだ。

 尤も、私には関係のない話だ。NPCもプレイヤーも変わらない。どちらも同じストレス発散の相手なのだから。


(周りに他の人の気配はないね。進もう)


 森に入ると早速モンスターの気配がした。毛で覆われた四足歩行の、犬のような生き物。かつて存在した狼という生物を模したモンスターだ。肉を食らいそれ以外には興味を示さない。都合が良い。

 <気配希釈>と<隠密>がしっかりとかかっているのを確認して、ひっそりと進む。死体を2つ、インベントリから地面に取り出し木の上に身を隠した。


 狼を模したモンスター――ウルブズというらしい――は臭いに気がついたのか、喉を低く鳴らしながら死体に近付いていく。

 周囲に敵影がないのを確認したのだろう。ひとつ吠えてから死体を貪り始めた。刃物や金属以外を全て食い尽くして漸く口を止めた。骨すら残さないとは、食欲旺盛と言うべきか綺麗に食べると言うべきか。


 木から飛び降り、真下にいたウルブズの体を押さえつける。そのままダガーを突き刺し首を断ち切った。刃が欠けそうだ。ウルブズは鳴き声をあげる間もなくポリゴンとなった。あっけない。


〔ただいまの戦闘によりレベルが上がりました〕

〔スキルポイントを2獲得しました〕

〔ただいまの戦闘によりスキル<暗殺術>がレベルアップしました〕

〔これまでの行動経験によりスキル<気配希釈>がレベルアップしました〕

〔これまでの行動経験によりスキル<隠密>がレベルアップしました〕


*********

食料(生鮮品)

ウルブズの肉。

火を通さないと食べられない。

*********


(やっぱりこれじゃストレス発散にならない。ただの狩り)


 舌打ちをしたい気分だった。せめて人型のモンスターなら気分も上がるのに。

 周囲に散らばったアイテムを拾い、容量に多少の余裕ができたインベントリに突っ込む。数回繰り返せば死体の整理もできるだろう。ああ、あの司書とスパイ(仮)の魔族の死体は首だけ残しておこう。どこかに飾れば楽しいことになりそうだ。


 森を進み、<気配察知>を頼りにウルブズを探す。数が多すぎるのはダメだ。迂回して2匹のウルブズが固まっているのを見つけた。今度は死体を3つ出し、再び木の上で待った。すぐに食らいついた。釣りでもしているような気分になる。

 食べ終えた直後、ダガーを下向きに構えたまま1匹の頭の上に飛び降りる。頭に突き刺さり即死したのを見届ける間もなく、こちらに飛び掛かってきたもう1匹の目に毒針を突き刺した。うるさそうだったのでそのまま短剣を口に突っ込む。貫通した。

 今度はポリゴンになるのを見届けて、さっさとアイテムを回収した。アナウンスはなかった。


 繰り返すこと数度、種族レベルが1上がり、いくつかのスキルレベルも上昇して死体の整理が終わった。インベントリも拡張できたらいいのだが。それにもっと強くなれればわざわざ死体ごと回収する必要もなくなるだろう。ストレス発散も捗るはずだ。頑張ろう。


 暫く森で狩りをする予定だったが、あまり楽しくなかったので止めておくことにした。それよりも<薬学>に使えそうなものを採取するのがいいだろう。繰り返せば何かしらスキルを習得できるかもしれない。

 ああ、忘れるところだった。<魔力学>と<魔法学>の実践を行わなければ。そちらはある程度採取ができてからでいいか。

(えっ俺なんで殺されたん・・・)


種族:人族

種族レベル:7

スキル:

<暗殺術>8<奇襲>7<投擲術>2

<気配希釈>6<気配察知>6<隠密>6<視線察知>1<変装>2

<識別>3<解読>1<看破>1

<薬学>1<言語学>6<魔力学>1<魔法学>1

<痛覚耐性>3

残SP:7

称号:

《初めてのひとごろし》

《躊躇の無い殺人》

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ