6話 躊躇の無い
まだまだ準備段階です
〔これまでの行動経験によりスキル<言語学>がレベルアップしました〕
〔これまでの行動経験によりスキル<変装>がレベルアップしました〕
〔これまでの行動経験によりスキル<魔力学>を習得しました〕
〔これまでの行動経験によりスキル<魔法学>を習得しました〕
〔これまでの行動経験によりスキル<解読>を習得しました〕
〔スキルポイントを2消費しスキル<視線察知>を習得しました〕
〔スキルポイントを3消費しスキル<看破>を習得しました〕
日記を読み終え暗号らしきものを解読し出入り口を発見し、ついでに魔法関係の入門書らしきものをいくつか読み終えた。一旦ログアウトして再度ログインすると、いくつかアナウンスが来ていたことに気が付いた。
<魔法学>に<魔力学>とはまた、他のゲームでは見ないという意味で珍しいが、入門書の内容をかんがえると納得できなくもない。これは師弟間で受け継がれる属性魔法の体系ではなく、魔力と魔法の関係を学問的に考察し魔法の発現に反映させる魔法体系だからだ。ちなみに属性魔法とは、<火魔法>や<水魔法>のように属性で魔法を分類し呪文や魔法陣によって一定の効果を維持する魔法体系のことらしい。
<魔力学>によって魔力の操り方を習い、<魔法学>によって魔力を魔法として発現する方法を身につける。呪文も魔法陣も定型としては存在せず、全て己が規定する。学と名の付く通り、より効率的になるよう自ら学び研鑽することさえできる、中々に自由度の高いスキルのようだ。
自由度が高すぎて普通の<魔力制御>や<火魔法>のようなスキルの方がよっぽど使い勝手がいいだろう。こんなのが初っ端から使いこなせるのは普段から魔法に慣れ親しんでいる者だけだ。それも、呪文を唱えるだけで発現するそれではなく、理論と体系を理解したうえでの魔法に、である。そんな現代人がいてたまるか。
(暫く実験が必要かな)
入門の範囲の理論は一通り理解したつもりなので、次は実践してみるべきだ。魔物か人かどちらにするか……まあ先に遭った方でいいだろう。
ちなみに出入り口は、日記の暗号を解いて死体が持つブレスレットを手に取った瞬間に魔法陣という形で現れた。魔力を流すと起動し1階の司書室へ転移させてくれるようだ。上に立っても何のアナウンスもなかったためどうしたものかと思ったが、日記にヒントが書いてあったので助かった。正直暗号を解かなくてもブレスレットを剥ぎ取れば魔法陣は現れていたんじゃないかと思う。
魔力を流すことは<魔力学>のお陰でできるようになった―――わけではなく、入門書の指示に四苦八苦しながら従い、自力で魔力を体外でも操れるようになったことで<魔力学>を習得できた。
スキルの補助なしに魔力を操るとかいよいよ異世界じみてきたし何なら現実に戻っても魔力を操れるかもしれない。この年で厨二病は痛すぎるので勘弁してほしい。
(薬学書も今はいい…魔術書はまだ難易度が高すぎるし…)
暫くは剥ぎ取ったポーションで事足りるだろう。
司書の死体以外にもブレスレットを持っている者がいたら困るため、出入り口の魔法陣は破壊しておく。破壊の方法は簡単で、起点となっている物を物理的に壊せばいいのだ。今回の場合はやたらと模様の描かれたペンだった。
なお、司書の死体の陣営のことは分からなかった。日記にも途中で取りに行った歴史書にもいっそあからさまなまでに触れられていない。情報秘匿が徹底しているのだろうが、徹底しすぎていてその存在が浮き彫りになっている。第三の陣営が存在することを知らなければ気が付くことはないだろうが。
まあいずれ明らかになるだろうし、ならなくても問題はない。ストレス発散が出来ればそれでいいのだ。
ただまあ、司書の死体を森に捨てるのは今のところ避けた方がいいだろう。使い道があるかもしれない。
(さて、出掛けよっと)
<変装>は時間経過で経験値が溜まるようだから、なるべく使用しておくことにする。レベルが上がったことで変装できる部位数も増えた。胸を盛り背を低くする。どう考えても変装の域ではない。目線は変わらないから幻影の類なのだろう。
SPで習得した<視線察知>と<看破>をパッシブに設定し図書館から出る。ここからなら西門が近い。西側には森が広がっているから死体を破棄するのに丁度いいだろう。
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〔ただいまの戦闘によりレベルが上がりました〕
〔スキルポイントを2獲得しました〕
〔ただいまの戦闘により称号《躊躇の無い殺人》を獲得しました〕
〔ただいまの戦闘によりスキル<暗殺術>がレベルアップしました〕
〔ただいまの戦闘によりスキル<奇襲>がレベルアップしました〕
裏道を駆けていたら、建物のすぐ向こうに<気配察知>に引っかかる気配があった。それは走っているようにこちらに近付いてきており、そのまま姿を現した。
「あはは、ほらこっちこっち!」
「速いよお兄ちゃん、待ってぇ」
「あっ、危ない!」
鬼ごっこをしている子供が3人。年長らしき犬耳の少年の頭に、出合い頭にダガーを食い込ませる。横に掻き裂いて笑顔のまま追いかけてきた男の子の口に突っ込む。下まで一気に断ち切り、保護者らしき女性に接近して口を塞いだ。
「保護者失格ですね」
ふっと嘲笑って、ダガーで心臓を一突きした。当然ストレス発散のための八つ当たりである。まあ私の姿を見たことに変わりはないので残念だが死んでほしい。あぁ、もう死んでいるか。
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死体(獣人族)
名前:キョウ 所属:薄暮
性別:男 享年:9
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死体(獣人族)
名前:ダイ 所属:薄暮
性別:男 享年:7
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死体(獣人族)
名前:ハーハ 所属:薄暮
性別:女 享年:25
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死体をインベントリに突っ込んだら本格的に容量がギリギリになってきた。もう入らないだろう。早めにフィールドに向かおう。
現代人(未来人)
種族:人族
種族レベル:5
スキル:
<暗殺術>6<奇襲>5
<気配希釈>5<気配察知>4<隠密>5<視線察知>1<変装>2
<識別>3<解読>1<看破>1
<薬学>1<言語学>6<魔力学>1<魔法学>1
<痛覚耐性>3
残SP:3
称号:
《初めてのひとごろし》
《躊躇の無い殺人》