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4話 図書館へ

プレイヤーをPLと略すべきか、NPCに合わせてPCと略すべきか悩むお年頃です

 向かう途中、彼らから剥ぎ取った――もとい拝借した装備品があることに気が付いた。武器はともかく防具の類は初期装備より確実に上位互換だが……。


(今装備すると足が付く可能性があるからなあ)


 彼らには「兄貴」と呼ばれる存在がいるらしい。見付かったら面倒だ。ポーションの類だけ使わせてもらい、装備品は暫く持っておこう。

 ああ、死体を(フィールド)に捨ててもいいかもしれない。何か言われたら森の中に落ちていたとでも言えばいい。フィールドに出たらそうしよう。


〔これまでの行動経験により<気配希釈>がレベルアップしました〕

〔これまでの行動経験により<隠密>がレベルアップしました〕

〔これまでの行動経験により<識別>がレベルアップしました〕

〔これまでの行動経験により<痛覚耐性>がレベルアップしました〕

〔これまでの行動経験により<言語学>がレベルアップしました〕


 ワー何とかによると、この街は噴水のある広場を中心に東西南北に大通りが延びており、図書館は先ほどいた地点から広場を挟んで逆の方向にあるらしい。そのため大通りを通らざるを得なかったのだが、お陰でスキルレベルが上がった。NPCもPCも多くて嫌になったが、この感じだと誰の記憶にも残っていないだろう。

 <識別>が生物以外のあらゆるものに反応して頭痛が再発したが、すぐに<痛覚耐性>が上がってくれたお陰で助かった。<言語学>は相変わらず何故上がっているのか不思議だ。店の看板にでも反応したのだろうか? ろくに見ていないのだが。


 そんなことを考えながら人の少ない裏路地を進んでいくと図書館が見えてきた。ちなみにここに来るまでにインベントリ内の死体は10人に増えた。ほとんどはチンピラで奇襲で一撃だったが、殺しているところを見られたので子供も2人ほど殺した。見る方が悪いから仕方ない。

 種族レベルやスキルレベルも上がっているがそれはそれ。新しいスキルは覚えていないし称号も増えていないし、図書館へ行くのが優先だ。


 図書館の周りは閑散としていて静かだ。人通りもない。そのまま入館し、司書のいるカウンターの前を通る。


「……あっ、お待ちを、利用者カードはお持ちで―――――


 どうやら気付いてしまったようだ。<気配希釈>も<隠密>もレベルが足りていないのだろう。遮蔽物が無かったことも一因かもしれない。

 こちらを見られていると分かるとすぐに針で刺してしまった。死体の中の誰かが持っていた毒を塗った針だ。<識別>で耐性が無ければ即死すると書いてあった物を塗っておいた。


*********

死体(獣人族)

名前:シ・ショー 所属:月虹

性別:女 享年:27

*********


 司書は声もなくカウンター内に倒れ込んだ。<識別>で情報が入ってくるから死んだのだろう。私に気付く方が悪いから仕方ない。

 司書をインベントリ内に入れ、図書館内を進む。インベントリ内の死体が11個に増えた。そろそろ容量が不安だ。早めに拠点を見付けて処理するなりフィールドに破棄するなりしなければ。

 図書館内に人影は見えなかったが人の気配がする。念のため<変装>スキルで胸を大きくしておいた。フードを被ったままだし、これで女性に見えるはずだ。このアバターも正真正銘女性ではあるのだが。


〔ただいまの戦闘によりスキル<奇襲>がレベルアップしました〕

〔ただいまの戦闘によりスキル<暗殺術>がレベルアップしました〕


 欲しいのは薬学に関する本だった。調薬の方法やレシピが知りたいのだ。道具は初期装備としてインベントリ内に入っていたから、最低限のことはできるだろう。ついでにモンスターについての情報が書かれたものや地図のようなものがあればそれも欲しかった。広すぎる街に比べて簡易的なマップしかないのだ。裏通りを動き回るのには全然縮尺が足りない。

 広い図書館内を歩き回り、目的の本を探しながら背表紙を見ていると、唐突に気が付いた。


(これ、日本語じゃ、ない?)


 今まで日本語として違和感なく読んでいたが、はっと全く違う言語だったことに気が付いた。規約に書いてあったのはこういう言語のことだったのだろう。そこで更に気が付いた。<識別>で入ってきた情報も、全てこの言語だった。あまりにも自然に頭に入ってきていたために、少しぞっとした。数世紀前に流行ったという創作神話が微かに脳裏をよぎった。


(識別と一緒に言語学のレベルが上がってたのはそういうことか……。え、ってことは……)


 自動翻訳なら<言語学>のレベルは上がらないはずだ。<言語学>か、あるかも分からない各言語スキルや翻訳スキルが無ければ、文字が読めないだけではなく<識別>も使えないのでは?


(だとしても、初期スキルで取れるし、規約にも必要性を匂わす表記があるわけだし、さすがに取ってる人はそれなりにいるでしょ)


 そもそも関わるつもりがないから、他の人が取っていようといまいとどうでもいいのだが。とりあえず、念のためと取っておいた過去の自分を褒めることにした。

 冷たいものが背筋を伝うのを感じつつも人の気配を避けて図書館内を探し回る。目的を達せそうなものは全て見つかった。世界地図のようなものはなかったが、この街の地図は見つけた。載っていない道もあるだろうが、そういうのは自分で探せばいい。幸いマップも自分が通った所は詳しく描かれるようだし。


〔これまでの行動経験によりスキル<言語学>がレベルアップしました〕


 きり良くスキルレベルも上がったことだし、本を読み始めよう。とはいえ図書館内で読むのは嫌だ。いつ誰が来るか分かったものじゃない。屋根裏に上がれないだろうか。

 奥まった所ににあった階段を上り二階へ行く。天井が高く、まだ屋根裏へは行けそうにない。二階を一周し反対側の奥に階段を見付けた。何故こうも分かりづらい位置にあるのだろうか。

イア!イア!


種族:人族

種族レベル:4

スキル:

<暗殺術>5<奇襲>4

<気配希釈>5<気配察知>4<隠密>5<変装>1

<識別>3

<薬学>1<言語学>4

<痛覚耐性>3

残SP:6

称号:

《初めてのひとごろし》

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