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クールショット!

作者: 鼻唄 積読


「で、あるからしてー」

 真夏日の体育館にて終業式。校長の長い話をよそに、立ったまま器用に寝ている男子生徒。筧十蔵かけいじゅうぞう高校生二年生。平均よりやや身長が低く髪を黒よりの茶髪に染めて、不良と言うわけではないが学業に対して真面目と言うわけでもない俗にいう中途半端系男子。

 しかし全てが中途半端なわけではない。彼は射的においては天才的な才能を持っているがもっとも、この現代では大した使い道もなく持て余しているようだ。


 グースカ寝ている十蔵の後ろに居る小太りの男子生徒、同じクラスの三好伊佐みよしいさは目だけをキョロキョロと動かし先生達のスキを突いてこっそり飴玉を口に頬張る。

「まいうー」

 と小声で言う三好。

 

 全学年の先生達の目を出し抜いてやった事への勝利宣言だろうか。そんな彼もまた非凡な才能があり、視力八・零と広い視野を持つ。が早弁やこうして飴玉を見つからずに食べる事に使っていた。こう言うのを豚に真珠とでもいうのだろうか。

 しかし彼の才能がこの悪事に一役買ってこのまん丸な体を作り出していると言う点においては才能を有効に使っているのかもしれない。


「気温三十七度、湿度五十一%」

 メガネをクイっとやり前に居る三好伊佐に告げる男子生徒。望月六郎もちづきろくろう

 メガネをかけているから頭がいいと思ったら大間違い。学業はからっきしだ。しかし彼もまた妙な才能を持っている。

 正確無比な皮膚感覚、そこから来るほんの少し先の未来の自然現象を言い当てると言う才能。


「暑いのは分かってるよ。言わないで」

 三好が不機嫌そうに小声で六郎に言い放ち、服をパタパタさせている。

「後1分で誰か倒れる確率……七十二%」

 そう告げた数秒後、バタンと音が響いたと思ったら何やら後ろの方が騒がしくなる。どうやら望月六郎の予想が当たったらしく女子生徒が倒れている。


「ぷぷぷ、ろくっち。それくらいの予想なら誰でも出来るよ」

 三好が少し後ろを見て望月六郎にニヤつきながら言った。確かに真夏日の暑い体育館での校長の長話だ。一人くらい倒れる事なんて誰でも予想がつく。

「ふん、言ってみただけだ。だがこれでやっと解放されるぞ」


「ふあああ、え? 終わった?」

 バタンと倒れた音とざわざわと言った騒がしさから筧十蔵は目を覚ました。

「おはよー校長もオロオロしてるからもう終わりだよ」

「あ、えーー、い、以上。礼」

 グダグダな感じで終業式を終え、明日から夏休みが始まる。



 いつものメンツ、筧十蔵、三好伊佐、望月六郎はクーラーの効いた教室に居た。教室に残っているのはもうこの三人だけとなった。

 そんな教室の中でパチンパチンと輪ゴムを飛ばす音が響く。


「うあーーまたジュウちゃんの勝ちかー百発百中じゃん!」

 十蔵が放った輪ゴムを拾い上げ悔しそうに言う三好。

「くっ。計算は合っていたはずが……また十蔵にしてやられたか」

 メガネをクイっとやりこちらも悔しそうにしている六郎。

「ふはは! 俺に撃ち抜けない物はないんだよ! 射的で俺に勝負を挑んだのが運の尽きだぜ!」


 教室の一番後ろの席から教壇の机に置かれた消しゴムを、輪ゴムを飛ばして倒す遊びをしていた三人。

 一番消しゴムを倒せなかった者が学校の自販機でジュースをおごるという勝負もしていたみたいだ。

「んじゃあ? 俺メロンシュワーな。微炭酸の方! あれめっちゃうまい!」

 上機嫌で最下位の三好にジュースを指定する十蔵。


「ふっ。なら俺はおしるこを頼む」

「はい!? ろくっち!? このクソ暑い日におしるこ!? 頭大丈夫?」

「ふ、まだ気が付いてないようだな。 この学校のおしるこの旨さを?」

 とメガネ輝かせて言い放つ六郎。


「しばらく夏休みに入り、学校に来れないからな。最後に飲んでおきたいんだ」

「あ、暑いからさ帰りでいいよね? 買ってくるの」

 季節は夏入った所、終業式を終えお昼には家に帰れるのだが日差しが強く、暑い中とても帰る気になれずしばらくクーラーの効いた教室に残って涼んでいる三人。

 ノートをうちわ代わりに扇ぐ三好は二十七度設定の冷房でもまだ暑いようだが、校則でクーラーの温度はこれ以上下げてはいけない事になっている。



 すると突然三好が声を上げた。

「あ! これ後藤君の自転車のカギじゃない? こんなところに落ちてるよ」

 三好がカギを拾い上げ、二人に見えるように掲げる。

「それ知ってる! かつて後藤君が彼女にもらったとか自慢していやがった、不細工なキャラクターのキーホルダーだ! クソ!」

 十蔵がイラつきながら言う。後藤君に彼女が出来た事が気に入らないらしい。


「そのキーホルダー。確かに後藤君の自転車のカギだな。このくそ暑い中徒歩で帰ったのか?」

 怪訝な表情で六郎が言った。


 この私立種子島高等学校の校舎は山の上に建てられていて大抵の生徒達は毎日自転車で長い坂を登っている。後藤君も例外ではない。


「確か後藤君家は全校生徒の中で1位2位を争うくらい遠いんじゃなかったっけ?」

 三好は自転車のカギを掲げながら言った。

 この学校は自転車と電車以外の通学を校則で禁止しているつまり。


「明日から夏休みだ。休みの日にわざわざ自転車を取りに遠い学校に徒歩で来る事は考えられないな」

 メガネをクイっとやり推理を始める六郎。

「確かに俺なら行きたくない! 自転車をあきらめて歩いて帰るのは考えられない。それにぐぎぎ……か、彼女からのプ、プレゼントなら……ゴフッ!」

 十蔵が嫉妬からのダメージを負いながら何とか結論を言おうとする前に六郎が言う。


「まだ学校の中で探してる可能性が高いという事だ」


「そうかもね。じゃあジュウちゃん、後藤君に連絡してあげて!」

 三好が十蔵を見て言う。十蔵は後藤君の連絡先なんて知らないといった風に両手を上げる。

 六郎を頼るように目線を動かす十蔵。


 十蔵が六郎の方を向くとメガネをクイっとやりキメ顔で言った。


「後藤君の連絡先など知らん」


「バカな!? メガネなのに!?」

「メガネへの憧れが過ぎるぞ。知らんものは知らん」

 六郎は自分の制服のワイシャツをつまみパタパタさせながら三好に話しを振った。


「三好。後藤君が諦めて徒歩で帰る前に連絡してやれ」

 話が一周してきた三好が不安げに。

「知らないよ? 僕」


 謎の沈黙後、彼ら3人の頭によぎった事はクラスメイトの連絡先を三人揃って誰も知らないなんてスクールカーストで下の方なのかもしれないという不安だった。


「え? 待って。あれ後藤君じゃない?」

 窓の外を見ながら三好が言う。

「あの特徴的な髪のくせっけ間違いない後藤君だ」

 自転車置き場で自転車にもたれて居る後藤君を見て言う十蔵。今まで走り回って体力を使い果たしたんだろうか? 汗やら土埃やらでボロボロの状態の後藤君。


「てか、白目向いてない!? 生きてるか? あれ!?」

 十蔵が目のいい三好を叩きながら言う。本当に白目を向いて死んでるかもしれないその確認がしたかったようだが、三好はそれには答えず教室の窓を開け後藤君へ呼びかける事を優先した。

「おーーい後藤くーーーん!」

 大声で三好が手を振るがピクリとも動かず全然気が付かない。


「ふっ死んだか」

 メガネを中指でクイっとしながら縁起でもないことを言う六郎に苦笑する十蔵。

「てか、何で後藤君は真っ先に教室を探さないんだ?」

 終業式を終えてからずっと教室にいた3人なわけだが、後藤君が教室に探しに来たことがない。十蔵の疑問に適当に答える六郎。


「暑さで頭がイカレたんだろうな。見ろ。奴の髪型をチリチリのアフロだ」

 六郎の適当なボケには特にツッコまずになるほどと納得する十蔵。それも分かるくらい暑そうな髪型だ。 冬は暖かいが夏は地獄だと話していたのを思い出した十蔵。


「後藤君にカギを渡すにはもう誰かが直接届けるしかなさそうだな」

 十蔵がそう言うと、三好は後藤君の自転車のカギを二人に差し出し言う。

「後藤君に何とかカギを届けてあげたいけど、くっもう体を動かすカロリーがないんだ……ごめんごめんよ後藤君」

 まるまる太っているお腹をポンと叩いて悔しそうに言う三好。すぐさま便乗する六郎は膝を抑え急に苦しみだした。

「ぐぬっ……古傷が今日はやけに痛む……すまない無理だ、長い廊下を歩き階段を降り靴に履き替えぐるりと一周し自転車置き場まで行く事など! この足ではとても!」

 チラチラと十蔵を見ていう六郎。

「俺に行けってか! メガネに指紋をつけやろうか!」

 と十蔵はチョキで六郎に迫り六郎はグーで阻止する。


 そう、自転車置き場までは見かけ以上に距離がある、加えてこの日差しの強さが物語る外の暑さ。ここにいる誰も自転車置き場まで行きたくなかった。

「三好! お前賭けで負けたんだからジュース買うついでに行って来いよ!」

 十蔵は六郎と戦いながら言った。


「全然別方向、真反対じゃん! 後藤君は裏門の自転車置き場で死んでるんだよ? 自販機は僕らが帰る正門側にあるしつまり……」

「カロリー足りないんだろ」

 六郎が引き継いで言ったのを聞いて十蔵はうなだれる。


 何とか後藤君にカギを届けてやりたいという思いが十蔵にはあるのかカギを見つめ考えている様子。何だかんだ言って十蔵は面倒見が良かった。

 連絡先は誰も知らない。大声で呼んでも今の後藤君の耳には届かない。十蔵達がいる二階の教室の真下まで来てくれたらカギを落として渡す事も可能だろうが後藤君はピクリとも動かない。


「ふっ。奴はもう死んだんだ……もうこれは必要ないだろう。見なかった事にしようじゃないか」

 カギを三好から奪いゴミ箱に向かう六郎を三好が必死に止めている。

「ダメだよ! 墓標にするんだから!」

「なぜゴミ箱に向かう!? 悪魔かお前は! 三好も三好で結構酷いな。まだ後藤君は生きているはずだ……たぶん」

 十蔵が二人のやり取りにツッコミを入れていると六郎が言い返す。


「忘れたか! このキーホルダーは彼女に貰ったと言っていた事を……羨ましい。けしからん! 実に邪悪だ」

 後藤君の不細工なキーホルダーを握りしる六郎。

「そうだよ! だからこそ墓標にして二度とこうした浮かれポンチ野郎を出さない為に見せしめてやるのさ!」

 消滅だ、見せしめだと揉めている二人を見つめている十蔵は何か思いついたように立ち上がる。


「ちっ仕方ない。そのカギ貸してみろ!」

 十蔵は揉み合う二人からカギを奪い、教室にあったセロハンテープでカギと不細工なキャラのキーホルダーをぐるぐる巻きにしてキーホルダーとカギを固定した。突然工作を始める十蔵を不思議そうに見つめる六郎と三好。


「見せしめだね!」

「違うわ! このカギを輪ゴムで飛ばすんだよ!」

 完成したカギを見せながら言う十蔵の発言に納得したように六郎が言う。


「なるほどカギを後藤君付近に飛ばしてやろうって事だな。だがなぜ? セロハンで巻く必要があるんだ?」

「キーホルダーがぶらぶらして飛ばせないだろ? てか付近じゃない!」


後藤君が見える窓へ歩き出す十蔵に黙ってついていく六郎と三好。

「しっかり届けるさ。後藤君のワイシャツの胸ポケットにな!」

 窓から後藤君を指さして言った。


 十蔵は手をグーパーグーパして準備に入る。

「さすがの俺でもこの距離と胸ポケット狙いじゃ、ちと厳しい。手伝ってくれ!」

 幸か不幸かここは二階の教室。後藤君のワイシャツの胸ポケットへは見下ろす形。狙いやすい位置どりだった。


 十蔵は輪ゴムを3輪、重ね後藤君の自転車のカギをくくり親指にかけた。パチンコの要領でセットし構える。一番カギを飛ばすのに飛距離が出るであろう発射装置だ。


「フッ。いいだろう。面白そうだ」

 指をペロっとして風を読む六郎。集中すれば風速はもちろん、風のタイミングや重力の揺らぎまで分かると豪語する男。十蔵はもちろん三好も最初はしばらく疑っていたが、今もう六郎の能力を信じている。

 メガネクイっとやり六郎が言う。

「西からの風。風速2m 気温35度、湿度55%」


 手を丸めて望遠鏡のような形を作りそこから覗く三好。視力八・零の目で後藤君を捉えた。

「本当に胸ポケット狙うの? 胸ポケットは1センチくらいしか空いてないよ?」

 窓から身を乗り出す十蔵からは、後藤君の胸ポケットがどれくらい開いているかなんて全く見えていない。


「他に狙う場所なくね? ズボンのポケットは角度的に無理だろ? アフロにカギを突っ込むにしてもたぶん貫通しそうだし」

 と言う十蔵はふと三好の方へ目をやると、どこからか取り出したポテチの袋を持ちポリポリと食べ出している三好。

「カロリー補給源しっかりあるじゃねぇか!これでカロリーがもうないとか抜かしやがって!」

 十蔵がポンポンと三好のまん丸なお腹を叩き、リズムを奏でていると六郎が言う。


「胸ポケットを狙うのは賛成だが、流石に直撃は危険だ。後藤君に止めさしてしまう可能性があるぞ?」

 窓際に向き直した十蔵は狙撃ルートを考えている様子で、自転車置き場の柱にもたれ死んでいる後藤君を見つめていた。


「モグモグ……ならワンクッション入れるのは? あの手前の赤い自転車のベルに当ててそのままふわりと胸ポケットへ! みたいな」

 無茶ぶりもいい所な提案をする三好。しかし三好の案をあっさり受け入れる十蔵。


「おーけーそれで行こう」


「距離約40mだよ」

 片手で望遠鏡を作り片目で覗きながら言う三好。

「風速風向き変化なし、10秒後3秒間無風なるぞ」

 人差し指を立て、窓から出し六郎が言う。


「オーケー。ターゲット後藤君の胸ポケット」


 集中して六郎の合図を待つ十蔵の雰囲気はまるで静かに燃えるロウソクのように凛と張りつめていた。

 集中して構える十蔵の目には回りの色と余計な雑音が消え、後藤君と手前の赤い自転車のベルの色のみが見えていた。まるで手を伸ばせば触れられるようなとても近くに狙いを感じるそんな不思議な感覚の中無風になると言う六郎の合図を待つ。


「……ゼロ。今だ」


「忘れ物だぜ後藤君!」


 力を込めた指をパッと離し、勢いよく放たれたカギは回転し少し右にカーブしながら後藤君の手前の自転車に向かう。自転車置き場の柱にもたれ、白目を向いて動かないでいる後藤君にカギが近づく。

 放たれたカギは後藤君の手前に置かれたまだ帰っていない生徒の赤い自転車のベルにかすり小さくチン! と音を鳴らしやさしく勢い殺しふわっと舞い上がった。


 舞い上がったカギはほぼ垂直に後藤君のワイシャツの胸ポケットに収まった。


「ふぇ!!」

 後藤君が変な声を上げてビクンとなり目を覚ます様子から十蔵は確かに感じた手ごたえを感じていたが、内心ドキドキしながら、三好の報告を待つ十蔵。


「……凄い! バッチリだよ! 吸い込まれるみたいに胸ポケットに収まったよ!」


「よっしゃああ!」


 三好の言葉にガッツポーズする十蔵。狙った所を撃ち抜く快感を全身で表している。

「フハハハ! 俺に撃ち抜けない物はないんだよ!」

 と輪ゴムを指でクルクル回しながらどや顔で決める十蔵に。


「俺「僕達のおかげでしょ!」な!」


 と二人同時に言われくるくる回す輪ゴム止める十蔵。


「あ、ありがとうございます……流石だな俺らって」

 そう呟きながら、三好からポテチを一枚取って食べる十蔵は後藤君が自分の体をペタペタ触り確かめているらしい動きが見えた。

 やがて胸ポケットにセロハンテープでぐるぐる巻きにされたカギを発見し困惑しながらも喜び泣いている様子の後藤君。


 すると十蔵達に気が付き手を振っている後藤君。十蔵達がカギを届けた事は知る由もないだろう。

「モグモグ、いやー良かったね。これで後藤君はお家に帰れるよ」

 また別のスティック状のお菓子を開け、食べながら手を振り返す三好。すると誰かの足音が教室に近づいて来た。入ってきたのは彼ら三人の担任の先生、土井垣だった。


 すぐさまお菓子の袋を後ろに隠す三好に苦笑する十蔵と六郎。

「こら! いつまで残っているんだ! 早く帰りなさい」


「「「へーーい」」」


 覇気のない返事をし、鞄を担ぎ快適な教室を渋々出ようとする三人に担任の先生がさらに言う。

「あーそうだ! お前らは明日も学校に来いよ? 楽しい楽しい補習だ」

 その一言に青ざめる三人。


「う、おええええええ!」

「先生! 十蔵君が吐きました!」

「ありえん! コイツらはともかく俺の計算は完璧のはずだ!」


 頭を抱える担任の先生

「テストの点数……お前ら三人組、めまいがするほど悪かったぞ!」

 十蔵はユラユラと立ち上がり、そしてまた両膝をつき先生を見上げる。

「そこを何とか! 僕たちに夏休みをください! せめて俺だけでも!! コイツらを差し出すのでどうか!」

 綺麗な土下座もとい土下寝をする十蔵を冷たく見下ろす担任の土井垣先生。

「お前らに夏休みは……ない!!」


 三人は最悪の気分でまだ日が高く暑い日差しの下に繰り出した。

「あちーー焦げる調理されるーー太陽に……自然においしく調理されるーー食べないでー」

「あ、暑いな……む? まずい! 暑くてメガネ溶けて来た……いや汗か……」

「ア、アハハ! ウヒウヒウヒ……」


 三好と六郎が暑さと夏休みの喪失におかしな事を言い出し、十蔵は精神が完全に崩壊してしまったように笑いが止まらない。ボロボロな状態で歩いている三人は何とか自転車置き場に着き明日も学校かと思うと、ろくに教科書も入っていない空っぽな鞄さえ重くて自転車の籠まで持ち上げられないようだ。


「はあーモテないし、いい事してもこの仕打ち……」

「言うな」

「ゴホゴホ! あれ? クリームパンが浮いてるよ……みんな! 食べ放題だよ! やったー!」

 三好はもうダメかもしれないなと言った表情で見つめる二人は、溜息と同時にそれぞれ自分達の自転車に手を伸ばしす。


「帰るか……」

 三人はダラダラと自転車を漕いで家路についた。

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