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紡ぐ言葉  作者: 葉桜
34/45

31話

(注)この物語には流血、いじめ、殺人等の残酷な描写を含まれます。苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。また、犯罪行為を助長する意図はございませんのでご理解いただけますようお願い申し上げます。また、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実際のものとは関係ありません。

蒼は手当の施された指を見ながら呆れつつも、申し訳なさそうな顔で目の前で少し青い顔をしながら後片付けをしている千里のことを見つめる。

「……まさかそれにしても地雷くんがここまで心配性だとは思いませんでしたよ。普段の君なら“こんなもん、つばでもつけときゃ治るよ”とか言いそうなんですが……。まるで太田くんみたいですね」

「あ……と、えぇ、まぁ。ちょっと色々ありまして。知り合いの怪我には少し神経質になっていまして」

「そうでしたか。それにしても地雷くん。お手伝い、ありがとうございます。君のおかげで

早く片付けが終わりましたよ」


千里は少し困ったように笑いながら消毒液を片付けていると飛山に声をかけられる。その言葉に少し困ったように笑うと、言葉尻を濁し返事を返す。蒼はこれ以上は無理かなぁ、なんて思うと、少しむくれたふりをしながら千里に声を掛ける。

「ほらぁ、だから大げさだって言ったでしょ、千里ちゃん」

「……そうは言っても用心することに越したことはないだろ。飛山先生、礼ならいらないっす。いきなり押しかけてすみません。……そろそろ教室戻ります」

蒼の言葉に千里はジロリと睨むと、いつもよりも少し低い声で不機嫌そうにそう答えると、飛山に向き直り挨拶をし、教室に戻ることを告げると、蒼の手を取ると来た時と同様、ほぼほぼ無理やり、引っ張りながら保健室から出て行く。どのくらい保健室からはなれただろうか。千里が立ち止まったことをいいことに蒼は口を開く。

「ほんと、千里ちゃんは心配性だねぇ。……このくらいじゃ人は死ぬことはないよ」

「……言いたいことはそれだけか?」

「……ごめん、心配かけて。だからほら、泣かないの」

「……泣いてない。俺、怒ってる。蒼怪我しないって言った」

「うん、ごめんね。もうしないから」


千里は蒼の言葉を聞くと、きっと睨みつける。少し怒ったような口調で返す。蒼は千里の顔を見ると少し驚いたように目を見開いてから申し訳なさそうに眉を下げると頭を撫でながら謝罪の言葉を入れる。泣かないの、と言う言葉には泣かない、と言いながら唇を強く噛みしめる。辛そうな声を聞くと蒼は申し訳なさそうに眉を下げるとちさとの頭を撫でる。

「……子供扱いしないで。もういいよ、蒼。次からは気をつけて。それに俺の方こそ、きつく言い過ぎた……ごめん

次からは気をつけて。俺、あんな思いもうやだから……。怖かった。ごめん……」


蒼が頭を撫でると不満げな声でそれを振り払うと千里は蒼から目をそらすと、謝罪の言葉をこぼす。蒼は千里の言葉を聞くと、少し困ったように笑いながら口を開く。


「千里ちゃん。大丈夫僕はどこにもいかないし、君を置いて行ったりしない。だから安心して。それに謝らないでよ。千里ちゃんは何も悪くないでしょ」


言いかけせるように優しくそう告げると、ちさとは定呼応することなく小さく頷いた。理解していないし、否定したかったがこんな時は絶対に引かないのが蒼という男だ。だから抵抗も否定も何もせずに頷くのが一番頭のいい選択だった。ちさとが頷くとその場に静寂が生まれる。


「ほら、そろそろ戻ろ。皆に心配されてると思うから」

「そう、だね。戻ろっか」


何をいえばいいのかわからなくなった千里は無理して笑顔を浮かべると、先に歩き始める。蒼は娘が遠くに行ってしまうようなさみしさを感じながら蒼も千里のあとを追って歩き始める。

家庭科室に戻ろうと、蒼は予想通り沢山の女子に囲まれる。千里は蒼の過激ファンによって押しのけられると、尻餅をつく。そっと立ち上がり、軽く埃を払うと、蒼から離れる。彼女たちの話に興味も無ければ、彼女たちから向けられる悪意のある視線も慣れていた。別に蒼のことは心配ないし特に心配することもない。蒼のことは無視して自分のグループに戻る。

「千里、お帰り。蒼大丈夫?」

「あ……うん。ただいま。大丈夫だいじょうぶ。俺、知り合いの怪我が苦手で。それでついつい過保護になっちまっただけ。わりぃな、余計な心配かけさせて」


千里がグループに戻ってくるなり伊織が声をかけてくる。苦笑しながら伊織の言葉に対し答えを返すと何かをごまかすようにガスコンロの近くにいくと鍋をのぞき込み、翔太に対し、なにやら指導をしていた楔に近づきながら声をかける。

「あ、作業も滞り無く進んでるね。流石楔だよ。お前なら俺の代わりにやってくれるって信じてたよ」


蓋の閉じている鍋を確認をするとあともう少し、と言うところで自分が居なくても平気なことが分かる。そのことに安堵感を覚えながら、自分たちが教室を出たときよりも進めていてくれていたであろう人の方を向きながら親指を立てる。それを見ると楔はむっとしながら口を開く。

「当たり前だよぉ!僕だって千里ちゃんには劣るけど毎日自炊してるからね!」

「え?そうなんだ。まぁ、お前しそうだけどな俺より女子力あるし」

楔の言葉に千里はほんの少し疑問を持ったがあまり深く聞かない。聞かれたくはなさそうだったのと、誰にも言いたくないことだって一つや二つあることは自分が一番知っている。千里自身も話したくないことがあるのもあり、本人が話さない限りはいつも聞かないようにしているのだ。楔は千里の態度を見ると一度驚いたような顔をしてから「僕千里ちゃんと一緒にお皿取りに行ってくるねぇ!」というなり、千里の腕を引っ張て戸棚のほうまで歩いていく。伊織からある程度離れたあたりでおもむろに口を開く。

「……聞かねーん、だ」

「……はぁ?何をだよ」

「俺のこと」

「んだよ、聞いてほしいの?」

「……あんまり。気持ちのいい話じゃないし」

「だろ?俺だって人に聞かれたくないことの一つや二つくらいあるし、話したくねーなら無理には聞かねぇよ」


千里はいきなりの言葉に思わず聞き返してしまったが、楔の言葉に合点がいったのかため息交じりに聞いてほしいのか、知聞けば首を振りながら別に話してもいいけど、あまり気持ちのいい話ではない、という旨を聞かされニッと笑いながら言葉を返し、無理には聞かない。そういえば楔は一度面食らったように少し驚いた顔をしてから顔をふい、と逸らすと小さな声で「ありがとう」という声が聞こえ、くすくすと笑いながらお礼は要らねぇよ、と告げ、皿をもって自分たちの班へと戻るのだった。


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