28話
(注)この物語には流血、いじめ、殺人等の残酷な描写が含まれます。苦手な方はブラウザバックをお願いします。また犯罪行為を助長する意図はございませんのでご理解いただきますようお願い申しあげます。又、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
そのあと、フードコートで各自好きなのを選び、お昼を食べ終えた頃。この後、どうするかを話し合った結果。結局午後は翔太の強い要望により、四人みんなで回ることになり、最後の観覧車で楔と千里に秋良に告白するように言われた翔太は非常に緊張していた。まぁ、千里も楔もそんなのはどこ吹く風。時たま二人で顔を見合わせてはにやにやと笑いながらこちらを見ていた。一度だけ千里だけがにやにやしていることもあったが。これは翔太本人が後で二人から聞いた話だが、どうやら二人して色々悪だくみが浮かぶらしく、それを面白おかしく話していたらしい。千里だけがにやにや笑っているときは伊織にやってみれば?という提案をいただいていたときらしい。声は荒げずに爆弾トークをかましたらしく、二度と楔に伊織の話をしない、と決めた瞬間だったらしい。その時の千里の顔はげっそりとしつつも苦笑をしていた。
そんなこんなでそれからどのくらい時が経っただろうか。合流してきたときよりも日が傾いてきて、日が暮れてきたときの事。今日はそろそろ帰らなきゃいけないという秋良の発言からから最後のアトラクションに行こうという提案を秋良がしたのもあり、四人は最後に乗ろう、と決めていた観覧車へと向かっていた。翔太は会話には入らずに(入れなかったとも言う)三人の一歩後ろを歩いていた。
「観覧車今から楽しみだよなー!」
「うん、ぼくもねぇ、実はちょっと楽しみなんだぁ!奇遇だねぇ、千里ちゃん」
「おぅ!あ、どうせだしまた二手に分かれようぜ、ほら、朝のメンバーで」
「え?千里、大丈夫なの?」
談笑をしながら3人は話をしながら歩いて行く。千里は楔と二人きりになることについては何でも無い風に話を進めていく。その二手に分かれる、と言うことで、秋良は、大丈夫なのか、と意見をする。千里は少し苦笑をこぼしながら、口を開いた。
「あー、うん。もう大丈夫。平気だよ、秋良。良いから翔太と乗ってきて」
「……?うん、分かった」
秋良は千里の大丈夫。その言葉は信用していないような、しているような微妙返事ではあったが、素直に頷くと、翔太の隣に駆けよった。そして隣に並んで歩き始めると、すぐに笑いながら話しかけてくる。
「楽しみだね、翔太君」
「お、おぅ、そう、だな!俺も……」
秋良の言葉に翔太は頷きつつも正直な話し、話の半分しか理解できていなかった。理解できたのは楽しみとかそうじゃないとかそういったことを聞かれているのだろうという事だけだった。翔太は楽しみだとか楽しみじゃないだとかそれどころじゃなくて、これから告白することを考えると、今にも心臓がはじけ飛びそうだった。正直にいえば、もうすでにはじけ飛んでるんじゃないかと不安に思っているのだが、そんなのは全くもって知らず、秋良は少しだけはしゃいでいた。
順番としては秋良達に先を譲り、千里達は後のに乗る、と言うことで話は纏まる。いよいよ秋良達の順番になると千里は軽く手を振りながら、二人を見送る。因みに観覧車では先に翔太が乗り込んでから秋良が乗り込んでいた。秋良は翔太に手を引かれながら、観覧車に乗り込んでいく。その背中を見送りながら、千里はぽつりと呟いた
「なぁ、楔。成功すると良いな。翔太と秋良」
「そうだね、地雷。俺も翔太には世話になってるし、成功してくれたら良いと思うよ」
そんな二人の会話は静かに風に包まれるのだった。こういうときは、不意に思うときがあるのだ。 “楔の好きな人が自分だったら”なんて考えてしまう。千里の隣に立つ、楔の横がおを見つめていると悲しくなり、目線を観覧車に向ける。そんなことはあり得ないことだと分かっていながらも、その考えを吹き飛ばせずにいるのだった。
その頃、観覧車に乗り込んだ翔太はいつ秋良に告白を切り出そうかと、タイミングを計っていた。ゆっくりと進んでいく観覧車の中だが、それでもしばらくすれば地上に着いてしまう。ふと外に目を向ければ、もうそろそろ頂上で、後はもう折り返しになるだけだ。いつまでもこうしちゃいられないと思い、徐に口を開いた。
「あのさっ、秋良っ……」
「どうしたの?翔太君。そんなに慌てて」
翔太が秋良の名前を呼ぶと、首を若干かしげながら、どうしたのかを尋ねる。しばらく翔太はどう切り出そうかと、悩んでいたが、意を決したかのように秋良の事を見つめ、口を開いた。
「その、大事な話だから聞いて欲しいんだけど……」
「……ここで?」
「うん、出来ることなら今がいいなって……その、誰にも聞かれたくないけど、直接言わないといけないこと、だと思うから……」
「そっか……うん、分かった。いいよ、話してみて」
秋良は翔太の話を聞いて、少し悩んだ後に、“うん、いいよ”そう告げるとほほえんだ。その言葉を聞いて翔太は一度安堵したかのようにほんの少し頬を緩める。そのあとに深呼吸をしてから半分やけくそで叫ぶように自分の思いを叫んだ。
「お、俺さ、ずっと秋良のこと好き……なんだけど、その、それで……付き合って欲しいなぁって思うんだけど……その……」
「……うん、翔太君の言いたことは分かるんだ。でもね、僕にはまだそういうことの気持ちが分からないし、考えたこともなかったの。それに、翔太君はただのお友達だと思っていたから……翔太君のことは確かに好きだよ。でも、この気持ちはきっと翔太君の求めてる気持ちじゃ無いと思うんだ。だから……ごめんなさい」
ほとんど叫ぶように告げられた翔太の気持ちを聞いた秋良は驚いたかのように少し目を見開き戸惑ったかのように顔をゆがませてから、少しうつむいてから、申し訳なさそうに口を開く。その答えとしては分からない。翔太のことは好きだが、自分の気持ちが翔太と同じなのか自信が無い、とのことだった。翔太は少し驚いたかのような顔をしてから、手を頭を後ろにしてから困ったようにやり場のない悲しみをこらえるかのように口を開いた。
「あー……うん。そう……。そう、だよな。こんなこといきなり言われても、困るよな、うん……。なんかごめん。忘れて?」
「翔太君は悪くない。だからこの気持ちが翔太くんの求めている者なのかそうじゃないのか分かったらまたお返事させて貰ってもいいかな?」
話し終わると同時、観覧車は地上についた。翔太も秋良もそのことに感謝した。なんとなく気まずかったからだ。二人は無言のまま、観覧車から降りると、待ち合わせに設定していた場所にいつも通りの距離感で座る。しかしその間、会話はなかった。
千里達が観覧車から戻ってくると、四人の足は自然と、遊園地の退場口へと向かっていた。なんとなく告白の結果を聞ける雰囲気でもなかったし、翔太の放ってる気からなんとなくふられたのは分かっていた千里は楔にこっそりと無料メッセージアプリでメッセージを飛ばす。
『翔太のアフターケアするぞ』
すると意外にもすぐに既読がつき、楔からも了解を伝えられると千里はなにもなかったかのように秋良との会話に混ざり、楔も混じるのだった。
駅につくと、秋良は切符を買いに切符売り場に向かう。千里達は定期で帰れる範囲内なので、改札口で秋良と翔太達は最寄り駅がまったく逆方向なのだ。秋良は学校の最寄り駅が、秋良の最寄り駅なのだが、千里たちはそこから二駅ほど離れたところにある桜才駅が三人の最寄りだった。
「じゃぁ、またね。翔太君、千里、縁君また明日学校で会おうね」
「おぅ、じゃあな、秋良」
秋良がまたね、そう言いながら手を振った。千里も小さく笑いながら手を振る。秋良の背中が見えなくなったのを確認してから、千里は一歩先に歩き始めると後ろにいる二人に意地の悪い笑みを浮かべながら声をかける。
「さて、 翔太、楔。チョコ―っとだけ寄り道、しよっか。付き合ってよ。俺お茶飲みたい。おごってやるから」
「よっしゃ、ラッキー。行こうぜ翔太。地雷のおごりだってよ」
「……うん」
翔太が相づちを打ったのを二人は確認してから、駅の近くにあるカフェへと足を向け、歩き始めた。もちろん戦闘には千里が立ちながら。
カフェについても千里も楔もあえて、告白については聞かずに、いつも通り、楔は伊織の話をして、千里がそれに突っ込むといういつも通りの会話が繰り広げられていた。
「なぁ、二人とも」
「ん?」
「どうした、翔太」
翔太は千里たちの様子を見て、一つの疑問をぶつけてきた。千里はそれを聞くなり吹き出すと、少し笑いながら楔と顔を見合わせながら口を開く。
「なんで、告白のこと聞かないの?」
「翔太が話したくなさそうだから。無理には聞きださねぇよ。な、楔」
「そうだよね。翔太のことだし、話したいなら話すと思ったからだよ。わかってるね、地雷」
「ありがとう……、二人とも」
「ベッツにぃー?翔太のためなんかじゃねぇしー。俺が紅茶の見たかっただけですぅ」
「そうそう、ただ地雷がのど乾いて死にそうだっただけだからお前のためじゃねぇよ!……てか地雷また紅茶かよ。飽きねぇの?脳みそ砂糖なの?」
「うっせえよ!因みに俺の飲んでる紅茶は微糖ですぅー。てか紅茶おいしいからいいだろ?!楔には関係ありませんー。そもそもそういう楔こそまたコーヒーかよ、あきねぇ奴だな!」
翔太のお礼を聞いて、千里は少し恥ずかしそうにしながら顔を逸らし、翔太のためではない、そう告げた後に楔に同意を求める。楔もそれに同意を入れながら千里のことをからかい始める。もちろんそのあと喧嘩が始まるのだったが。翔太はそれをみて、ふっと笑う。千里と楔は翔太の顔を見て、ほんの少しだけ安堵の色を見せた。そのあとに少し悲しそうに、それでもしっかりと意思をもった瞳で口を開いた。
「秋良にはさ、断られたんだけど、まだのぞみがないってわけじゃねぇんだ。なんていうのかな、まだ気持ちがわからないからって。だから、次に告白するときは秋良に恋愛的な意味で好きになってもらえるように頑張るよ」
「そっか、がんばれよ。俺翔太の事、応援するからさ」
千里はその言葉を聞いて。改めて翔太は強い、そう感じざるを得なかったのだ。自分にはあんな勇気が無い、と。翔太に告白しろだなんだいいながら自分が出来ていないくせによく言えたもんだな、と千里は思う。その気持ちは隣にいる男縁楔も動揺だった。翔太が覚悟決めたなら、そろそろ自分も覚悟を決め無くては、と思うのだが、どうにもこうにも、中々出来ないのが、縁楔という男だ。




