25話
(注)この物語には流血、いじめ、殺人等の残酷な描写が含まれます。苦手な方はブラウザバックをお願いします。また犯罪行為を助長する意図はございませんのでご理解いただきますようお願い申しあげます。又、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ほんの少しだけ時を戻そう。楔が千里のことを半分くらい無理矢理連れ去った後の話。
楔の突飛な行動は翔太の思考を完全に停止させるには充分過ぎるものだった。もちろん、顔を赤くさせたまま。
顔を真っ赤にさせて口を開けたまま動けなくなってしまった翔太を暑さで体調悪いと勘違いした秋良の勧めで木陰に入って休むことになっていた。翔太も
思いがけないことの連続で翔太は混乱しながらも、なるべくいつも通りに振舞おうとしながら、しどろもどろになってしまうのは仕方がないことなのだろうが、ここまでわかりやすいのはどうかと思う。これでバレてないというのだから、よほど亜kらは鈍感だという事になるだろう。
「翔太君はほんとうに大丈夫?さっき顔真っ赤だったけど……もしかして風邪引いてたのに無理してたりする?」
「だ、大丈夫……、ちょっと暑くて……。か、風邪は引いてない!それに俺、馬鹿だから風邪とかあんま引いたことないし……」
「そっか、ちょっとでもさらに体調悪くなったら言ってね」
顔を未だに赤くさせている翔太に対して、秋良は本当にただ、心配で休ませたい、という顔をしながら、翔太の手を引いた。木陰に入り、近くにあったベンチに座っていた。俯きながら翔太は呼吸を整え、何とか落ち着かせようと思い、深呼吸をし始めた。秋良は近くの自販機まで走って買いに行ったのか、少しだけ頬を赤くし、呼吸を整えながらながら500mlのペットボトルの水を手に持っていた。
「はい、翔太君お水どうぞ」
「あ、ありがとう……。あ、ごめんな、秋良。えっと、水の代金後で返すな……」
買ってきたばかりの水を翔太に手渡すと翔太は顔を上げた後に、お礼を言いながら秋良からペットボトルを受け取ると、お金を払わせたことに気がつき、後で支払う旨を伝える。その言葉に秋良は一度目をぱちくりとさせた後に、ふんわり笑いながら、「気にしなくて良いのにー」と口を開く。ふんわりとした笑いに翔太は"あぁ、すげぇ可愛いな"なんて、思ったり。受け取ったペットボトルからじんわりと冷たさが広がって少しづつ体が冷やされていくのと同時に、緊張も少しづつ解れていくのが分かった。
「お、俺もう大丈夫だから、どこか秋良の好きなとこ行こうぜ……?俺、付き合うよ」
「ほんとう?じゃあね、やっぱコーヒーカップとか、ジェットコースターとか、どうしようかなぁ、うーん……悩むなぁ」
翔太が秋良の好きなところに付き合うよ。その言葉を聞くと秋良は嬉しそうに顔を輝かせた。その後に秋良は少し笑いながらあれも行きたい、これも行きたい、と楽しそうに口を開く。翔太はその様子を見て可愛い、と思いながらほんの少しほほえむ。そんなことを思われている、なんて、つゆ知らず、秋良はおずおずと少し恥ずかしげにしながら行きたい場所を口にした。
「じゃあね、この年になって行ってみたいって言うのもちょっと恥ずかしいし、僕の柄じゃないのはわかってるけどね、メリーゴーランド。実は小さいときから少しあこがれてたんだー。でも、恥ずかしくてずっといえなくってさ……、翔太君が誘ってくれて良かったよ。ありがとう」
そんな風に言われてしまえば、翔太はノーといえなくなってしまい、「おぅ、じゃあ行くか」と少し素っ気なくなりながら、軽く手を引いた。秋良の歩くスピードに合わせながら。そんなふうにあるいていると、不意に秋良から質問を投げられた。
「そういえば、縁君って千里のこと好きなの?」
「は?楔が?……いやいや……ないない!絶対無い!あいつに限って千里だけは絶対にあり得ねえよ!だって千里だぜ?!」
秋良から投げられた質問を聞いて一度考え込む。たしかにあの行動はおかしかったが、ある意味では自分と秋良をふたりきりにしてやろうとか言う悪意のあるアレで、軽く否定をした後に、やぱり考えられなかったのかもう一度否定の言葉を力強く述べる。千里からすればかなり失礼なことだし、千里のことを大切に思っているとある男が聞いたらおそらく翔太は天に召されるハメになるだろう。しかもほとんど胸を張った状態で。因みに千里がこの話を聞いていれば、何も言えなくなってしまう。ある意味事実でもあり千里自身もこれは仕方のないことだとわかりきっていることのだから。
「そこまで言う……?!千里は普通に可愛いと思うけどなー。んー……じゃあ、やっぱり、縁君は伊織さんなの?」
「ま、まぁ……な」
おい楔。ばれているぞ。内心そう思いながら少し声が裏返りながらも返答を返す。あまり、ほかの男の人の名前は出して欲しくない。そう思ってはいてもさすがはヘタレ翔太ちゃんの異名を持つ翔太だ。言えずにその言葉は飲み込んだ。そもそも、彼氏でもないのに、おかしな話だ、と思ったのもあった。秋良は翔太の質問に対する回答に納得はしていないにせよほんの少し合点がいったかのように頷きながら、口を開いた
「だからこの間、伊織さんの話をしたらすごい食いついてきたんだねー」
「は?あいつに伊織の話したの?お前すげぇ勇者だなぁ……」
「え?でも結構いつも通りの縁君だったよ?」
「あー……そっか。……だよなぁあいつが裏知らない奴にあそこまで熱弁しねぇか……」
「……どうかした?」
「何でもねぇ!独り言!」
翔太からすればにわかには信じ難い話だ。伊織の名前が少しでも引っかかれば、1日どころか2日以上話しそうだ。しかしよくよく考えれば、裏表の激しい楔のことだ。裏を知らない人に伊織の話を吹っかけられてもそう簡単に裏を出すとは思えない。そう思うと、千里は本当にこいつの裏をどうやって知ったのかが気になるところだが、千里の事だ。"元から何かしらを察していて、目を光らせていた"か、"何かしらの理由があってたまたま知ってしまった"。そのどちらかだ。可能性あるのは、後者。そんなふうに考え事をしていると、不意に秋良から声をかけられ、せっかく落ち着いてきた心拍数は一気に上昇した。
「……翔太君?」
「どっ……どうしたの?秋良」
「うん、なんか考え事としてたみたいだから、どうしたのかなって」
「んー、流石楔だなぁって思ってさ」
「え?なんで?」
「いやっ、こっちの話しなんだけどさ」
翔太の楔はすごい、と言う発言に秋良は首をかしげた。もちろん、楔が褒められている、と言うことに対してだ。秋良からしたら今の会話からは楔が褒められるようなつながりが見えないのだから当たり前なのだが。
「……そっか……」
この頃は翔太はまだ、気がついていなかった秋良の、彼女の気持ちに。それほどまでに自分のことで精一杯だったのだ。自分の気持ちで精一杯になってしまっていた。




