24話
(注)この物語には流血、いじめ、殺人等の残酷な描写が含まれます。苦手な方はブラウザバックをお願いします。また犯罪行為を助長する意図はございませんのでご理解いただきますようお願い申しあげます。又、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
カフェを出てから、適当にぶらぶらしながら適度に面白そうなアトラクションを楽しむ、ということを何度か繰り返していた。あの二人も何回か見かけたが何やらいい感じだったのもあり、声をかけずに、そのまま放置をしていた。そろそろお昼も間近というところで不意に千里の足はとあるアトラクションの前で止まった。そう、お化け屋敷が楔の目線の先にあったからだ。何故かいつもぎりぎり視界の端に移るぐらいの後ろにいた千里の姿がついに見えなくなった楔は立ち止まると、体ごと振り返るとあきれた様子で口を開く。
「何だよ、地雷。……いきなり立ち止まるなよ、行くぞ」
「……やっぱり行くの?…やめない?絶対後悔するよ」
「……何で?まさかこんなのが怖いの?だっっさ……」
「っ……!んな分けないじゃん。お……お化けなんて怖くねえし!」
楔の言葉を聞いて千里は少し不安そうに楔に本当に入るつもりなのかと問いかけ、入るのはやめないか、という提案を提出した。楔はその千里の提案に首を傾げると、すぐに千里の弱点(ホラーが苦手だということ)を見抜くと、にやにやしながら、こんなのが怖いのか、と問いかけた。
千里は“そんなわけない。”そう言いながら楔から目線をそらす。もちろん怖くないなんて言うのは嘘だし、楔はそれが嘘だと見抜いているだろうと思っているし、そもそも千里自身がこんな風に言われても信用しないため、騙せているとは思っていない。気がつかれてると言うのも察してるし、楔も千里がお化けが怖くないなんて言うことはもちろんのこと、気がついている。だからこそこうしてからかってあそんでいるのだが、こうもわかりやすいのはさすがにどうなのだろう、と同時に思う。仮にも人を守る警察官なのだから、もう少し演技力をつけたらどうなんだ、と思うが他人のことなのであまりとやかく言えないのだが。これでも、有能視されている警視総監らしいのだから、驚きでもあるが、実際問題仕事中に会ったことあるが、その時の千里はまるで切り替えスイッチがあるのかと思うぐらい別人だったのだ。
それはともかく。楔は千里の言葉を聞いて、内心は面白がりながら、表面では何も考えてない風を装いながら口を開く。もちろん後ろに回って肩を押しながら。千里は肩を押されるとあたふたと慌てふためき始める。
「ふーん……。じゃあ良いじゃん。ほら、行くぞ」
「そ、それとこれは話は別だろ?!俺は逝きたくないです。いやですしにたくないです嘘ですほんとうはお化け屋敷怖いですお化け屋敷とかむりです吐く」
「素直でよろしい。……息継ぎぐらいしろよ……」
お化け屋敷が目前に迫ると流石にこれ以上は平気振ってられるほど、肝は据わってないのか、観念したのか、分からないが千里は息継ぎもなく、口を開くと、本当はお化けは怖いと告げる。その勢いに楔は若干引きながらも、「よろしい」と言うと、肩を押す力が弱まるのが分かる。千里は数歩先に歩いてから後ろを振り向く。振り返って楔の顔をよく見るとニヤニヤと笑っていて、からかってい雰囲気が出ていた。この様子だと、どうやら最初から千里の怖くない、という嘘には分かっていたらしい。千里は未だににやにやしている楔のことを軽く背中を叩いてから恥ずかしそうに頬をポリポりと顔をそらしながら口を開く。
「……楔にはなんか俺の弱点とか秘密知られてばっかだなぁ」
「……そんな事ねぇだろ、気のせいだよ」
「そうかなぁ……そんな事ねーと思うけど……。だってお前、俺の秘密色々知ってるじゃん」
「そうだよ」
千里の言葉に楔は若干驚きつつも気のせいだ、と言うと納得していない様子の千里は不服げに声を上げる。楔はそれを聞くと笑い出してしまいそうになるのだがそれをこらえて声を出すと、千里の方をちらりと見やる。楔の言葉に対して納得はしてなさげな千里の顔が目に入る。言うならば不満顔、と言ったところだろうか。とは言ってもあまり表情に変化はないのだが。でも確かによくよく考えようによっては楔は千里の隠し事が苦手なことや、ある程度の苦手なものもそれなりに知っている方だろう。幼馴染み(地獄の番犬ケルベロス)に勝てるのかと聞かれれば、恐らく勝てないとは思うが、それと同じぐらいは知っていると思う。最悪でも五分五分の試合になると思っている。それを口にするのははばかられた。理由なんて特に無いし、あったとしても心当たりがない。
「……ま、ここでこんな言い合いしてても、らちあかないからこの辺でやめておこうか」
「……じゃあ、俺が言ったとおり気のせいって事で」
「はいはい、楔に色々知られてる気がするのは気のせいだよ、俺の」
千里は苦笑しながらこの辺でやめておこう、と言うと肩をすくめた。楔は面白くなさそうにするとあっさりと気のせいだと言うことを認められた事に驚きつつも「あっそ」と返すのだった。
「……ここに居たら邪魔になりそうだし、どこかに移動しよっか」
「あー……そっか。じゃあ、また適当にぶらぶらしよ。どうせ、午後は翔太が合流したいって言うだろうしな」
「……まぁ、翔太だからな。……お昼、どうする?」
千里はあたりを見渡すと困ったように笑いながらここから移動をしないかと提案を入れた。楔は少し悩んだそぶりを見せたあと頷きながら午後は翔太と合流することを予想していて、千里も同じ事を考えていた。
お昼はどうするかと千里が問いかければ、楔は今度は本当に悩み始める。
「うーん……。どうする、かぁ……。もしかしたら翔太たちは食べてるかもだけど、一応あいつらと一緒に食うか」
「あいつらが食ってたらまた別行動すればいいしな」
楔の答えを聞くと、頷きながら同意を示す。もしも食べていても別行動をする、と言う提案を出した。楔もそれには同意を示すと、適当にぶらついてどこか休めそうなところで腰を下ろす事を決めるのだった。