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紡ぐ言葉  作者: 葉桜
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22話

(注)この物語には流血、いじめ、殺人等の残酷な描写が含まれます。苦手な方はブラウザバックをお願いします。また犯罪行為を助長する意図はございませんのでご理解いただきますようお願い申しあげます。又、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

「おぉ!ひっさびさに遊園地に来たなぁ!小2の誕生日以来だぁ!」

 遊園地に着いて早々千里が懐かしさのあまり、そう感嘆の声を上げながら顔を輝かせると、秋良は不思議そうに首をかしげる。そういえば秋良は、千里の事情を知らない。翔太はとある事情があって知っていたし、楔は仕事中に見られてしまったからなのだが。そのことを忘れていたのもあり、申し訳ない気持ちになる。ちらりと楔と翔太の方を見やれば、二人は気まずそうに顔を顰めていた。それを見るなり、千里は一度困ったように顔を顰めてから悩んだそぶりを見せながら「あー、口を滑らしたなぁ」と秋良には聞こえないように一言小さく言った後に少し秋良から目線を逸らしながら首元に手を置いた後に呟くように口を開く。

「……俺、小3から学校のイベントとか行事参加してないから、こうして娯楽施設に遊びに来るのも久しぶりなんだよねー」


 説明するとなんとも2人は複雑な表情を浮かべ、なんとも言えず、微妙な空気になる。まさかこの言葉でこんな重たい空気になるとは思っていなかった千里は「あー……もう……」と小さく呟いた後に頭をガシガシと掻きむしると翔太の背中を軽く叩き、楔の方に手を回し、ぶら下がるようにするようにしながら、無理矢理気分をあげようとする。

「……なんだよー!秋良、俺のサボり癖なんて今更だろ―?小三ぐらいから学校行事とかがだるくて参加してなかっただけだって。だから気にすんなって!ほら、今日は楽しもうぜ!」


 そう話すと、秋良も部活はあまりサボらないが授業態度等は何故か翔太から聞いているのか、「そうだよねー、まぁ学校行事に出ないのは千里らしいか」という雰囲気になり、千里もほっと息をついた。自分の今までのサボり癖が理由で納得されてしまう原因なのだが、千里としては、あまり気持ちは良くはないだろう。しかし、千里としてもこれ以上、険悪な雰囲気は昔から苦手だったのもあり、一気に流れを変えるためになるべく明るく、続くように口を開く。

「じゃあ、翔太。四人で行くの?二手に分かれるの?俺はどっちでも良いけど」

 千里がへらりと笑いながらそう訪ねたときだった。楔が一瞬にやりと笑うと千里の肩を押しながら、歩き始める。千里は方をそれなりの力で押されているのでいやでも自然と足が進む。最初はどうするか、なんて言っていたが、ふと楔の方に目をやると、一瞬で楔の行動を理解したのか、翔太は一気に顔を朱色に染める。


「せっかくだしぃ、二手に分かれよぉよ!僕はぁ、遊園地久しぶりの千里ちゃん案内したりするからぁ、翔太と秋良ちゃんは、二人でゆっくり遊園地、満喫してなよぉ」

「えっ!?ちょっ、楔?!」


 翔太はその言葉を聞いてあからさまに体を硬直させる。千里の意見はまる無視されたまま肩を押され、歩かされる。楔は千里にそっと耳打ちで「いいからこのまま歩け」と言われ言われるがまま歩いて行く。耳が赤いの刃、きっと外が暑いからだと自分に居いっ貸せて。ふと後ろを振り返れば心配げに翔太のことを見つめる秋良とその行為にさらに顔を赤らめてあからさまな翔太の姿だったが。


 どのくらい彼らから距離を取っただろうか。そろそろいいんじゃないかと思った矢先に、後ろから「ここまで来れば大丈夫かなぁ」という声が聞こえる。肩を押す力も弱まり肩からも手が離れた。その差に一度つんのめってしまうが、ぎりぎり転ばずにすんだ。思い切り文句付けてやろうと思い振り返るとそこには優しい顔で笑っている楔が目に入り言葉に詰まる。その顔はずるい、と千里は思った。何も言えなくなってしまうから。その顔のまま楔は口を開き、千里にお礼を告げた。


「ありがとうね、地雷。俺の嘘に付き合って貰って。しょうが無いからなんか話し一つ聞いてやるよ。あのヘタレの事だから、午後は一緒になると思うけど、一日……それも休日まで……それも伊織ちゃんの前でもないのにあのキャラは流石に疲れるんだよね。伊織ちゃんからの頼みで断れなかったけどさ。……まぁ、ともかく頼みごと一つだけ聞いてやるから、話してみろよ」

「……へぇ?本当に何でも?」

 楔の言葉ににやにやとからかうような笑みを浮かべながら何でも?と、問いかけると、楔は若干不思議そうにしながらも「まぁ、俺ができることなら何でも良いよ」と笑いながら話す。千里は「なんでも、ね……」なんて呟いてからわざとらしくテンションを上げながら口を開く。

「じゃーどうしようかなぁ。何きいてもらおうかな。あ!じゃあね、つ……。いや、来月なんだけどね、大型スーパーに買い物行きたいからそのときに荷物持ちに付き合ってよ」

 千里は少し考え込んだ後におそるおそる口を開こうとして、言いかけた言葉を飲み込む。その言葉の続きを言うのはどうしてもいやだったからだ。気まずくなるのもいやだったし、たとえそれでオーケーされても胸にモヤモヤが残るからだった。だったら胃敦志もの現状をキープして、”ただのお友達”のまま仲良くできる方が良かった。もう、ごまかしはきかなかった。千里の中で楔は友達ではなくなっていたのだから。その後に来月のどこかで買い物に付き合って欲しい、と言うことを告げると、楔は頷きながら口を開く。

「そのくらいでいいなら付き合うよー」


 そこまで話し終えると、どこかの店に入ろうという話になり、喫茶店を探すべく、歩き始めるのだった。

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