はじめまして、久しぶり。
たぶんこれは 一回目のはじめましてじゃなくて 数十回目のはじめまして なんだろう。君にとっても 僕にとっても きっと。
僕に 前世の記憶は無いから 確かなことは判らないし 語れもしないけれど 君の声をどこかで 聞いたことがある気がするんだ。
──はじめまして。
そうやって僕に語りかける君の声を 僕は知っている気がするんだ。
君の行動は少し突飛で 皆の心を読んだみたいに先回りする。僕が必要だと思った素材を あらかじめ持っていたりするし。
僕と一緒に町の外に出たときだって 僕はいつ敵に襲われるかヒヤヒヤしているのに 君はどこに敵がいるか知っていたかのように 手早く倒していく。
そんな不思議で 包み隠さず言えば ちょっとおかしい子。僕でさえ知らなかった近道とか 知っているし。
なのに僕は 君に どうしようもなく 惹かれるんだ。まだ教えていない誕生日に 教えていない大好物をくれたから?誰も持っていないような 強い武器の作り方を 知っていたから?
……ううん。きっとそのどれも違う。
僕は僕にも解らない心の中で 君に何故か惹かれているんだ。
ああ でも 君は僕をどうとも思っていない のかもしれないな。
僕は君が戻ってくるなら 何回だってはじめましてを言うし 何十回だって僕の名前を教えるし 何百回だって君のことを守るだろう。
だけど君はそうじゃない。きっと。僕に前世の記憶は無い。だから本当は何も言えない。でも 僕には解るんだ。
君が飽きてしまったら 僕は 二度と 君に会えない。
……ああ。また世界の崩れる音がする。
また次も 君に会えますように。
──はじめから。
『はじめからを選択すると 今までのセーブデータは消えてしまいます。それでもよろしいですか?』
──はい。
『ただいまデータを消去しています。本体の電源を切らずにお待ちください』
『データの消去が完了しました』
たぶんこれは 一回目のはじめましてじゃなくて 数十回目のはじめまして なんだろう。君にとっても 僕にとっても きっと。
僕に 前世の記憶は無いから 確かなことは判らないし 語れもしないけれど 君の声をどこかで 聞いたことがある気がするんだ。
──はじめまして。
そうやって僕に語りかける君の声を 僕は知っている気がするんだ。