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これってよくある展開ですか?

何度瞬きしても、一向に変わらない景色。

本を読むのが大好きな私には、こうゆう状況に思い当たる節がある。

これは、


「いせ「異世界トリップですか!?」かい」


ぼうっとしすぎていて、私の隣にも人がいたのに気づかなかった。

もちろん、前方の人だかりは嫌でも目に入ってるよ。


「え、あたし異世界に来ちゃった? まじで、うそぉー」


片手分くらいしか離れていない場所にたつ女の子。

あ、これ近所の高校の制服だー、なんて思ってたのも束の間。


「ね、ね、おばさん! ここ日本じゃないよね、異世界だよね」


一人ではしゃいでる女の子に、おばさんって呼ばれちゃいました。


「うわー、皆外人だぁ、色んな髪の色があるねー。 あ!獣人さんもいてる! まじで異世界だー」


うん、まぁ話しかけられたと思ったけど、特に返事は求めてないみたい。

おばさんは訂正したいけど、聞いてくれるかなこの子。


「あの」


女の子がはしゃぐ声に紛れて、弱々しい男性の声がした。


「ようこそおいで下さいました、異世界の方々」


「きゃあ、話したっ」


そりゃ話すでしょ、見た感じ人間だもの。

とは、口に出さず心の中で。

女の子が主に喋っていたからか、私の方はあまり見ず女の子を見ながら話す彼。

隣でずっと喋ってる子がいたから気づけなかったけど、私たちを囲む人たちの中からそっと前に出てきている男性がいた。

ひょろっとしていて背が高そうなのに、猫背でうつ向きがちなせいで、おどおどして見える。


「す、すみませんいきなり。 わたくし、ソリュート国魔術師団副団長のルーナートと申します。 驚かせてしまい、申し訳ありません」


「魔術師団……魔法使いさん!? うわ、すごっ。 初めて見た」


うん、私も初めて見たよ。


「あ、はい、そうですね魔法は使えます。 えっと、それでですね、実は我々が貴女方をこの世界へとお呼びいたしました」


我々、といいながら腕を広げ周囲の人間(および獣人)をアピールする、ルーナートさん。

まあ、気づいたら囲まれてたし、皆杖とか持ってるし、何となくそうかなって気はしてたよ。


「そうなんですかぁ、ルーナートさんたちが私たちを呼んだんですね。 すごいですねっ、魔法使いさんって本当にいるんだー、私の住んでるところには、魔法の使える人っていなかったんで驚きです」


「あ、はい、えっと私たちほどの力を持った魔術師はあまりいませんが、この世界では魔術は存在しています」


わぁお、今さらっと自慢入らなかった? 入ったよね、確実に。

じっと見つめていたら、私の物言いたげな視線に気づいたのか、頬を赤くするルーナートさん。

え、なに乙女ですか?


「コホン、それでですね、その魔術を使い召喚の儀を行いました」


「え、それってもしかして、増えすぎた魔獣をどうにかしたり、聖女様の力で穢れを浄化したりするため!?」


「え、なんで知って」


「きゃー、夢みたい! 本当にこんなことってあるんだねー 小説の主人公になった気分! ね、ね、ルーナートさん、私ってもしかして聖女様だったりするの??」


「あ、え、はい、恐ら」


「きゃー、ウソ、本当に聖女なんだ私っ」


いや、分かるよ、興奮する気持ち。

私だって異世界トリップする小説は読んだことがあるし、特別な力とか冒険とか、わくわくするけど……とりあえず、ルーナートさんに最後まで喋らせてあげて。


「じゃあこれから、穢れを払う旅に出たりするの?」


「そのつもりだったんで」


「私頑張りますねっ!」


いやいや、


「ちゃんと聞いてあげなよ」


「え!?」


あ、つい声だしちゃった。

でも待って、そんなに驚くことですか?

隣の女の子も、ルーナートさんも、その他周りの方たちも、皆が揃って驚いた表情で私のことを見ている。


「おばさん、喋れたんだ」


あ、またおばさんって呼びやがっ、コホン、呼んだな。

てゆうかなによ、


「喋れるよ」


「全然話さないから、喋れないと思ってた」


女の子の言葉に頷く周りの人たち。

喋らないんじゃなくて、喋る隙がなかったんだけどなー。


「うーん、喋れるよ? というより少しだけ喋ってたけど、君の声にかき消されちゃっただけだから。 とりあえずルーナートさん、何か言いかけてるし、話し聞いてあげたら?」


驚きすぎて、テンションの下がった女の子に、アドバイスしてみる。


「あ、うん、そうだね」


素直に聞き入れてくれた。

言いかけた言葉を促すように、ルーナートさんを見つめると、私の視線に気づいたのか話し始めた。


「し、失礼しました。 実は、我々がお呼びしたのはお一人の予定だったのです。 けれど何故か貴女方二人が、この場に現れました」


話せば話すほどに、おどおどしていくルーナートさん。


「そこでですね、申し訳ありませんが、聖女様がどちらなのか調べさせていただきたく、思いまして……」


申し訳なさがひしひしと伝わってくる尻すぼみな話し方に(そうゆうことね)と、これまた小説で見たことのある展開に嫌な予感がした。

だって、こうゆう場合ってかなりの確率で


「あたしが聖女様だと思う!」


若ーい女の子が、聖女様って展開が待ってるよね。


「え……っと、とりあえず、鑑定を……」





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