純愛少年と容赦無き小林
胸と、顎を殴られた。
頭はクラクラ。
胸はキュンキュン。
脳震盪と不整脈である。
コンディションは最悪だ。
しかし、恋する中学生の矜持にかけて、俺は全力で求愛する。
「小林、好きだ!」
そう言いつつ、階段から跳躍。
踊り場の小林に躍り掛かる。
空中で、彼女の視線にとらわれる。
再度、キュンキュン。
トキメキである。
鳩尾に掌底を受ける。
三度、キュンキュン。
不整脈である。
「どぐうッ!」
と、呻きつつ、17号に腹を殴られたピッコロのポーズを披露。
そのまま、メゲずに、ウィンクを放つ。
すかさず、回し蹴りが跳んでくる。
これを、左のコメカミで受ける。
頭がクラクラ。
再度、脳震盪である。
薄れゆく意識の中で、確かな手応えを感じる。
――目つぶしされなかっただけ、昨日よりマシ。
――確実に、俺達の恋は発展している。
――外堀は、少しずつ、埋まっている。
――ああ、小林。
――愛してるぜ……。
コメカミに覚えた爪先の感触を反芻しつつ、
俺は意識を失っていく。